Thesis
私は4月より実践課程へと進み地元横浜を拠点として、地域型福祉(高齢者・子育て支援の集いの場)と就労支援をテーマに研修に取り組んできました。今回はNPO法人が運営する多世代交流サロンでの活動を通して得た学びを報告します。制度の狭間のニーズを互いに発見し、ともに支えあう地域福祉の在り方を考えました。
私は4月より実践課程へと進み地元横浜を拠点として、地域型福祉(高齢者・子育て支援の集いの場)と就労支援をテーマに研修に取り組んできた。その中で地域型福祉に関して学ぶべく、NPO法人が運営する多世代交流サロンでボランティア研修を行ってきた。ここでは空き家を活用することで、高齢者から子育て世代までを包括する支援を行っている。具体的には、高齢者にむけては介護予防事業の実施と孤立防止に向けた「通いの場[1]」として、子育て世代にとっては0歳から3歳の未就学児とその保護者やプレママ(初めての妊娠中でもうすぐママになる女性)が気軽に集い遊べる場所「親と子のつどいの広場[2]」として、地
域に根付いている。私は主に、高齢者向け事業でボランティア実習を行っている。
高齢者向け事業では、介護予防の一環として健康体操や健康麻雀などを行うとともに、食事会も催し、気軽に高齢者が通える場づくりをしている。こうした催しの開催や、庭の管理も含めて運営を行うのがボランティアスタッフである。当事業所は、長年地域活動で活躍してきたベテランのスタッフが中心となって支えられている。お互いが顔が見える関係となっていることで単なる介護予防の事業所ではなく、日々のコミュニケーションを通して地域のつながりを感じることのできる空間を作り出しているのである。また、支える側のボランティアもまた地域での役割を感じつつ「活きがい(生きがい×誰かのために自分の出来ることを活かす)」をもって活動している。身近な困りごとをお互いで共有しあい、時には支え、時には支えられる関係を紡いでいるといえる。そして同じ建物で子育て支援を行っていることも重要である。保護者同士の様々な情報共有の場となるだけではなく、世代の異なる地域の先輩から知恵を学び、また地域のつながりを持つことができる。そして、こうした活動が子育て世代の地域活動デビューのきっかけともなりうるのである。
近年、情報通信機能やSNSの発達によって、困りごとの解決方法を「検索」に求めるこ
とも増えているだろう。しかしながら、実際の生活に根付いた知恵や身近な人との支えあいを行っていくには、どうしても人々が集うリアルな場が必要ではないだろうか。自治体の施策の対象からこぼれ落ちている困りごとを発見し、共に支えあうことで地域を作って
きた、その歴史と実践を私は日々学んでいる。
(活動拠点の庭で畑仕事中の筆者、撮影はボランティアスタッフ)
横浜市の地域福祉には草の根コミュニティの伝統がある。特に、地域の女性が中心
となり、自らの子育てや介護を通して感じた困りごとを、おたがいの助け合いで支えあってきた[3]。しかしながら、共働きの増加やライフスタイルの変化にともない担い手の高齢化と不足が大きな課題となっている。また、こうした集いの場は全国的にも地域の課題を地域で解決するという地縁コミュニティに基づいている場合がある。私はそうした中で、コミュニティを次世代につないでいくためにも、「子育て」「働くことに不安を持つ若者の就労」といった様々なテーマに関心がある世代や、若年層が緩くつながれるような仕組みやコミュニティの在り方が重要であると考える。新しく地域に転居してきた人や、普段は仕事などで忙しい世帯も、何かしらのテーマで自由に参加でき、またそうした活動が多様に芽生えていることが地域参加へ担い手をいざなうこととなるのではないか。そして、こうした活動の多様性はひいては地域福祉の充実と、制度の狭間を補いあうサービスの柔軟さを生んでいくであろう。
他方、自治体はこれらの活動を活かせるプラットフォームとして、日ごろから事業者と顔が見える関係となり、情報交換、相互連携をしていくことが求められている。もちろん、そのためには事業評価を前提としつつも金銭面でもその持続性を適切にサポートできるような体制を整えていくことが重要である。こうした継続的な関係ができることで、これまでは自治体行政の制度の狭間にあって見落とされがちだった困りごとが少しずつ明らかになり、行政の対象となっていく契機にもなるのではないだろうか。「公助」を「共助」に転化するだけではなく、継続的に支援団体との連携を図ることが自治体には求められるとともに、「共助」の現場で見えた課題を「公助」へと還元できるような関係性が一つの理想形であると考える。
注
Thesis
Hajime Sohno
第41期
そうの・はじめ
Mission
ユニバーサルな社会保障制度の探究