松下政経塾 The Matsushita Institute of
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2001年11月

塾生レポート

子どもたちの輝く目
山本満理子/卒塾生

 
 11月7日から18日まで東京・渋谷にあるNHK放送センター他において、NHK教育フェア2001が行われた。先月の月例報告にも書いたが、NHK教育フェアは昨年から始まった今年2度目の試みである。期間中には、教育番組の国際コンクールや番組の集中編成、記念コンサート、『未来への教室』の公開収録、デジタル教材の展示、教育番組の出演者によるトークショーなど、教育を核としたさまざまなイベントが行われ、昨年よりも会期が1日少なかったにもかかわらず、46,000人を超える来場者があった。なかでも非常に人気があったのが『おかあさんといっしょ』の「ぐーチョコランタン」や、『いないいないばあっ!』『つくってあそぼ』などのキャラクターショーである。他にも『どーもくん』や『おじゃる丸』『忍たま乱太郎』『セサミストリート』などさまざまなキャラクターが出演したが、『ぐーチョコランタン』人気は圧倒的で、問い合わせの電話も殺到。『いないいないばあっ!』『つくってあそぼ』との夢の競演が実現された日には来場者が1日12,000人を超え、外部のファンのHPに「豪華なラインナップだった」と書き込みされたほどである。改めて、NHKの幼児向け番組の影響力を知った。

 さて、私自身が今回の教育フェアのなかで最も注目していたのは、私の大好きな番組『未来への教室』の公開収録『未来への教室スペシャル』であった。これはNHKホールを教室に、番組に出演なさったスーパーティーチャーに日本の子どもたちに向かって授業をしてもらおうというもので、中国の恐竜学者ドン・チミン博士や、かつてサメに半身を食いちぎられながらも奇跡的に助かったオーストラリアのサメ保護活動家ロドニー・フォックス氏、第2次世界大戦の際にナチスの弾圧にあったイスラエルのチェリスト、ミーシャ・マイスキー氏、アメリカの光の芸術家 ジェームス・タレル氏、以上の4名のスーパーティーチャーが出演、それぞれの活動を通して、子どもたちに夢と希望を伝えた。私にとって最も印象的だったのがミーシャ・マイスキー氏のチェロの音色であった。『浜辺の歌』を演奏してくださったのだが、彼の壮絶な人生のすべてがあらわれているようで、心の底から涙が溢れてきた。あの演奏を聞いたほとんどの大人たちは、あれが一番よかったと口をそろえていった。しかし興味深いことに、子供たちの反応は違った。子どもたちに人気があったのは恐竜とサメについての授業であった。全長15メートルもある未知の生物や、人間の身体がすっぽり入ってしまうくらい巨大なサメの口に自然の脅威を感じたようだった。わかりやすさから言っても当然の反応なのかもしれない。しかし私は、日本の子どもたちの感性がなおざりにされている気がした。テレビで放映されている『未来への教室』は海外のスーパーティーチャーが、海外の子どもたち向けに授業をしているのだが、とにかく授業を受けるときの子供たちの目がきらきらと輝いているのである。私がこの番組を好きな理由は、その子供たちの輝く目にある。これこそが教育なのだと感じさせてくれる目である。先日、この『未来への教室』をはじめられたプロデューサーの河邑氏にお話を伺うことができた。「番組の収録で世界中の子どもたちと触れ合うたびに、日本の子供たちのことを考えるんです。」とおっしゃっていた。いくら放送で、そういう部分だけを流しているとはいえ、例えば同じようなコンセプトで日本版として作られている『課外授業ようこそ先輩』のなかでもそんな目は見たことがない。世界の超一流の知性に触れ、それを全身で受け止め、夢と希望を描く子供たちの姿―――、見ていてうれしくなってしまうのは私だけではないだろう。この姿をどうにか今の日本の教育のなかで、いや、教育のなかでというより子どもたちを取り巻く環境の中で、実現できないだろうか。

 そのためにはまず大人である。河邑氏は「日本の子供たちの目が輝いていなくても、それは子供たちのせいではない。日本の社会全体がそうさせているのである。だからこそこの番組は、素敵な大人がたくさんいるんだよ、という励ましの番組なんです。」とおっしゃっていた。「おとなってすごい!」「人生って素敵!」単純に子どもたちにそう思わせるだけの生き方を大人がしなければならない。幸いにも「師範塾」など、意識の高い先生方を中心とした先生方のための塾ができたり、親による、親のための組織がたくさん作られている。この流れを大きなものにしていかなければならない。その仕組みを今後の活動のなかで作り上げていきたい。

2001年11月 執筆
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