論考

Thesis

ときめきタイム

4月より、今まで何度もお伝えしてきた「ことばの教育プログラム」の授業が始まった。授業の名前は「ときめきタイム」――。「トークがきっとめきめき上手になるように」という願いを込めてつけられた名前である。総合学習の時間を使うという当初の予定よりは変更となり、国語の授業時間に国語教科書の教材を使って行っているのであるが、週1回という限られた時間の中で出来ることは私たちの予想以上に少なく、思ったようなことが出来ないでいるのが現状である。以下、4月に各学年どのようなことに取り組んだかを簡単に説明したい。

4月「読む」音声・音読

1年 母音の発音・発声
  使用教材:「あいうえおのうた」「あひるのあくび」オリジナル教材
  重点:唇の形、舌の位置、口の開き方を意識して発音、声を出すトレーニング
2年 はっきりした声・読むときの姿勢
  使用教材:「かえるのあまがさ」「まど」「あひるのあくび」オリジナル教材
  重点:発音・発声練習、呼吸法、気持ちを込めて読む
3年 声の大きさ・言う速さ
  使用教材:「すいせんのラッパ」「あひるのあくび」オリジナル教材
  重点:発音・発声練習、早口言葉、気持ちを込めて読む
4年 区切るところ・大事なことば
  使用教材:「とっときのとっかえっこ」「あひるのあくび」オリジナル教材
  重点:発音・発声練習、早口言葉、リズム、まとまりで読む練習
5年 声の調子・音の高低
  使用教材:「父さんの宿敵」「あひるのあくび」オリジナル教材
  重点:発音・発声練習、早口言葉、リズム・強弱・高低・間を工夫した読み方
6年 強調することば
  使用教材:オリジナル教材〔ニュース原稿〕
  重点:発音・発声練習、早口言葉、ニュース読みを通して伝え方を学ぶ

※使用教材について補足説明・・・「」付の使用教材は国語教科書に載っている教材であり、発音やリズムなどが音読に適したものを教材として採用した。またオリジナル教材としては、アナウンサーも発音・発声練習に使用する「あえいうえおあお かけきくけこかこ させしすせそさそ・・・わえいうえおわお」といった、母音子音の練習用教材や「生麦生米生卵」などの早口言葉などを使用した。

 低学年の子どもたちは比較的最初から授業にのめりこみ、特に1年生などは口を大きく開けて、大きな声で、体全体を使って元気に言葉を発していた。逆に高学年、特に6年生の女の子などは1回目の授業は恥ずかしがって口をあけようともしなかったが、2回目からはゲームやクラス対抗形式を取り入れたところ、慣れてきたこともあったが、楽しんで授業に参加していた。

 なかでも一番子どもたちがおもしろがって練習したのが「られりりるるれれろらろ らりるれろ りるれろら るれろらり れろらりる ろらりるれ」という、ラ行を使った教材である。これは顔の筋肉をフルに活用し、舌をまわして言わなければはっきり発音することができない。特に早く言おうとすればするほどである。これをパートナーであるフリーアナウンサー岩崎裕美氏が子どもたちに一息で6回言って聞かせると、子どもたちは「すごい!!!」といって喜んで練習した。「夏休みまでに3回言えるようになったら、職員室まで挑戦に来てね」と言ったところ、6年生の数人がもうすでに「言えるようになったから聞いて!」と得意げに言いに来てくれた。日本語は世界中の言語の中で一番顔の筋肉を使わずに話せる言語らしく、そのため表情が乏しくなるということだが、このラ行の教材は顔の筋肉をすべて使わなければならないこともあって、子どもたちは本当に楽しそうな表情をして練習している。

 以下、1ヶ月行ってきた中で感じた問題点を列挙する。
<週休2日制>

  • 先生たちがとにかく忙しい。雑務に追われ、先の見通しが読めないため、長期計画も立てられないし、なかなか連携が取れにくい。これは、今年4月から導入された週休2日制によって、今まで土曜日の午後を使って出来ていた仕事を、平日のうちにこなさなくてはならなくなったことが原因の1つと考えられる。
  • 上で述べたことにも関連することだが、行事が、特に新年度の始まった4月には毎日のように入り、授業時間が計算どおりには取れない。
<国語の教科書>

  • 何を目的としているのか分からない。声に出して読むこと?ならばもっと子どもたちが声に出して読んで楽しいもの(リズムやテンポなど)を選ぶべき。内容把握?ならば音読を重視しないべき。そのあたりがはっきり分からない教材が多い。
  • 1ヶ月に2単元こなさなくてはならないように計画されているが、上でも述べたように、とても授業時間が足りない。
  • 新しい試みとして「伝えよう!自分のこと<自己紹介>」「ニュース番組を作ろう」など、私たちの頃には国語として考えられなかったようなおもしろい試みがなされている。どんな職業に就くにしても必要なコミュニケーション能力の開発のためには、自分のことや調べたことを人前で、聞いている人たちに分かりやすく話を構成して発表するという訓練はとても大切なことである。しかし、何しろ先生方は、ニュース番組の作り方など知らないし、教員養成課程で経験していない内容なので、どう指導すればいいのかとまどっているのが現状である。その自信のなさは親にまで伝わってしまっているほどである。また指導要領では、ニュース番組を作る過程で放送局に取材に行くといったことを指導しているが、とてもではないがそんな時間はない。
<教師>

  • 素人目に見ても問題ありの先生が思ったよりいらっしゃる。指導力だけならまだしも、人間的に、教師として適しているとはとても思えない(例えば、子どもに愛情を注げないなど)教師もいるようだ。岡山県の数字であるが、子どもに対する指導力が不足し問題となっている公立校教員は全体の0.7%にあたる88人だという。「一人の児童にかかわり過ぎ、クラス全体を指導できない」「不真面目な生徒にはほとんどかかわろうとしない」「生徒の思いや気持ちを理解する意欲に欠ける」といった内容であるが、あくまでもこれは内部申告の形で調査された数値なので、実情はもっと多いように思う。
<週休2日制>

  • 先生たちがとにかく忙しい。雑務に追われ、先の見通しが読めないため、長期計画も立てられないし、なかなか連携が取れにくい。これは、今年4月から導入された週休2日制によって、今まで土曜日の午後を使って出来ていた仕事を、平日のうちにこなさなくてはならなくなったことが原因の1つと考えられる。
  • 上で述べたことにも関連することだが、行事が、特に新年度の始まった4月には毎日のように入り、授業時間が計算どおりには取れない。
 とにかく感じるのは、文部科学省が予算や学習内容を画一的に分配する配給型の教育行政を行うことの限界である。次号以降ではそのあたりの問題について詳しく述べていきたい。

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山本満理子の論考

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Mariko Yamamoto

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第21期

山本 満理子

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