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2001年10月

塾生レポート

「日本賞」が私に与えてくれたもの
山本満理子/卒塾生

 
「ワクワクを、スクスク。」 これは、私が今、スタッフとして研修している「NHK教育フェア2001」のキャッチフレーズである。この「NHK教育フェア2001」は11月7日(水)から11月18日(日)まで、渋谷にあるNHK放送センターをメイン会場に行われる今年が2回目のイベントである。以下の3つがこのフェアのポイントである。

1.教育番組国際コンクール「日本賞」11月7日(水)~14日(水)

 日本賞は、NHKが主催する教育番組の国際コンクールで、今年で28回目を迎える。21世紀最初となる今年の「日本賞」では、従来の番組コンクールに加え、番組とCD-ROMやDVD、ウェブサイトとの連動による総合的教育効果を評価する「マルチメディアコンペティション」を初めて実施する。

2.公開イベント「NHK教育フェア2001ふれあい広場」11月16日(金)~18日(日)

 NHKの正面玄関ロビーや広場を一般公開。人気キャラクターや教育番組出演者と家族で楽しめるイベントや、なつかしのこども番組、NHKが未来に向けて提供する教育コンテンツ、そして、国内や世界のマルチメディアコンテンツ等を展示する。また、こども達が番組作りを学ぶイベント「NHK放送体験クラブ」(11/13~18)も公開で実施する。

3.教育を考える番組を「集中編成」11月12日(月)~18日(日)

 NHKスペシャルや長時間討論など、教育を正面から考える特集番組や、教育というテーマに取り組む定時番組を、総合テレビと教育テレビで集中的に放送する。また、「日本賞授賞式・記念コンサート」、世界の知性がこどもたちへ語りかける「未来への教室スペシャル2001」、国際シンポジウム「教育の世紀・メディアは何ができるか」を公開収録。

 はずかしながら、私はこの教育フェアに関わるまで、「日本賞」の存在を知らなかった。この「日本賞」とは、1964年、NHKが開局40周年を記念して、各国の教育番組の向上、そして国際間の理解と協力に役立つことを願って設立された国際コンクールで36年の歴史を持つ。1965年開催された第1回日本賞コンクールには、世界各地から185本が参加、28回目となる今年は、参加国数50カ国、参加機関数111団体からのエントリーがあった。また今年は、従来の番組コンクールに加えて、マルチメディア時代の要請に応え、「マルチメディアコンペティション」も実施、「ウェブ部門」に16作品、「パッケージ部門」に7作品の応募があった。

 今までにどのような番組が受賞してきたかを少し紹介したい。

 たとえば1967年、第3回日本賞を受賞したのは、チリ・カトリック大学テレビ局の「テレビ婦人学級~婦人と職業~」という番組である。これは、チリにおける女性の社会進出の現状と問題点を、フィルムドキュメンタリーとドラマで描いた番組である。第1部では様様な女性の職場と保育園、幼稚園などの育児施設が紹介され、第2部では女性の職場進出を妨げる家庭の無理解や封建的な因習をめぐる問題が、夫婦と子どものドラマで描かれている。

 また、従来の教育番組のイメージを打ち破るような新しい試みを盛り込んだ番組も登場し、教育界にインパクトを与えてきた。今では日本でもすっかりおなじみの「セサミストリート」。これは1971年、第7回日本賞を受賞した。この番組は若いスタッフを中心に、徹底的にマーケティングを行い、作り上げられているという。

 1970年代から1980年代にかけては、科学と技術の振興を目指す、世界各国から理数科番組の参加が目立つ。わかりにくい原理や、目に見えない法則をどう映像化していくのか、こういった課題に取り組んだ番組が受賞している。1983年、第14回日本賞を受賞したNHK「数の世界~円周の長さ~」は、実際に体を動かして円の直径と円周の関係を知り、またアニメーション画面で、円周率3.14をわかりやすく導き出している。1985年、第15回日本賞を受賞した、BBC「動物の生理~飛ぶ鳥のメカニズム~」は、鳥のインプリンティング(刷り込み)を利用して鳥の体内に心拍や呼吸、体温を発信する装置を取り付け、走る車の後を追わせ、飛ぶ様子を高速度撮影でカメラにおさめるというユニークな方法で、飛ぶ鳥のメカニズムを解明している。

 ほかにも非行・いじめ・人権といった社会的テーマに真正面から取り組んだ番組、最新技術を駆使した番組など、世界中の素晴らしい作品の数々が受賞してきた。

 その中で、私が一番注目したのは、1965年、第1回日本賞を受賞したフィンランド放送協会の「自然のカレンダー~むかしむかし~」である。「エコロジーを芸術性豊かにあらわした教育番組」として第1階のグランプリに輝いたのであるが、この番組にはナレーションも音楽もなく、フィンランドの豊かな自然のなかで生きる動物の生態を、そこに遊ぶ子どもたちの四季とともに描かれている。

 世界中が経済至上主義に向かって進んでいる時代に、しっかりと地に足をつけ、このような教育番組を制作していたフィンランド――。フィンランドは今年、とうとうアメリカを抜き、経済競争力世界第1位となった。今後成長する可能性の一番高いくにという評価も得ている。目先のことだけでなく、本当に長い、そして大きな視点で、自国の行く末をみつめて歩んできた結果と言えよう。

 この数年、日本は混迷の時代を抜け出せずにいる。こんな時代だからこそ、本当に長く、そして大きな視点で、この国の行く末を考え、未来を担う子どもたちにどういう教育を注げばいいのか、答えをあせらず、しっかりと考えていくべきである。日本賞の過去の受賞番組を見て、私は希望と勇気をもらったような気がする。

2001年10月 執筆
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