松下政経塾 The Matsushita Institute of
Goverment and Management

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2001年8月

塾生レポート

豊かな経験と豊かな言葉
山本満理子/卒塾生

 

「三つ子の魂百まで」

 皆さんにとって自分の原点と思えるときは、いつ、何歳くらいのときだろうか。私にとって今進めている研修活動の原点は入塾願書を書いた時である。何かにつまづいた時、どうするべきか悩んだ時、必ず私は2年前の夏に立ち戻り、願書を何度も何度も読み直し、政経塾での自分の活動の原点をしっかりと見つめ直す。しかし、願書を書いたときに私にとって、その原点は子どもの頃、それも物心のつかない頃だった。真剣に願書を書こうと向き合った時、私は最初何も書くことができなかった。そこで私は自分の生まれた時(正確には生まれた時の記憶などないが)までさかのぼって、自分が何を好きだったか、どんなことを楽しいと感じてきたのか、何に一生懸命取り組んだのかなど、徹底的に自分というものと、自分の人生を見つめ直した。そして「心の教育」というテーマに至ったのである。そのとき私は子どもの頃の体験が大人になってからも以下に大きく影響するかということを痛感した。中学生の頃だったか、『人生に必要な知恵はすべて幼稚園の砂場で学んだ』という本を読んだことがある。中学生の私にとっては少し背伸びをした本だったため、内容はすっかり忘れてしまったが、題名は強烈なインパクトがあったため今でも覚えている。その時は、これからたくさんのことを学び、大人になっていくのに、まさかそんなわけはないだろうと思っていた。しかし、今こうしてそれなりの歳になって、確かにその通りだと思う。そして同じような体験談をつい先日も、50歳をすぎた方から聞いた。「内容はとても恥ずかしくて言えない」ということで教えてもらえなかったが、とにかく幼稚園の時の体験が今の自分を形作っていると痛感したというのだ。まさに「三つ子の魂百まで」である。

言葉で表現する

 大江健三郎氏の『「自分の木」の下で』という本を読んだ。「なぜ子どもは学校に行かなくてはいけないのか」が、子どもにもわかりやすいように、自分の体験をふまえて書かれている本だが、そこでもいかに自分の子供時代に考えたことや感じたことが、今の自分の基礎をなしているかが語られていた。戦争体験、家族のこと、森の中での生活、読書のこと、森の中での生活、読書のことなど、その一つ一つがどのような形で今の大江氏に影響を与えているかを、丁寧に説明してあった。またこの本の中で大江氏は「考えるというのは、つまり言葉で考えることなんだ」と言っている。
また、ある新聞記事に「教えるということは、子どもたちが知らないことを教えるのではなく、子どもたちが既にもう知っているが、言葉にできずにいること、それを言葉を教えることで、外に引き出してやることだ」と書かれていた。私もまったく同感である。自分の中にあるモヤモヤしたもの、これをずばり言葉で言い表せたときの感動は誰もが経験したことがあるはずだ。
 たくさんの経験をし、それを自分の言葉で語る。そのことが感性豊かな子どもを育てる。そしてそれは子どもだけではない。大人も同じだ。京都で一緒に仕事させていただいているコミュニケーション・トレーナの岩崎裕美さんは、職場や家庭で疲れきって言葉を失ってしまった女性たちに、自分の感動した経験をいろんな言葉で語ってもらい、自分を表現してもらうというトレーニングをしている。いろんなことを経験させる、そしてそのことを自分の言葉で表現させる。単純なことかもしれない。しかしそれを繰り返すうちに女性たちは表情から変わってくるという。そんな単純に思えることが、人間にとってはとても大切なのである。

言葉で表現する

 大江健三郎氏の『「自分の木」の下で』という本を読んだ。「なぜ子どもは学校に行かなくてはいけないのか」が、子どもにもわかりやすいように、自分の体験をふまえて書かれている本だが、そこでもいかに自分の子供時代に考えたことや感じたことが、今の自分の基礎をなしているかが語られていた。戦争体験、家族のこと、森の中での生活、読書のこと、森の中での生活、読書のことなど、その一つ一つがどのような形で今の大江氏に影響を与えているかを、丁寧に説明してあった。またこの本の中で大江氏は「考えるというのは、つまり言葉で考えることなんだ」と言っている。
 また、ある新聞記事に「教えるということは、子どもたちが知らないことを教えるのではなく、子どもたちが既にもう知っているが、言葉にできずにいること、それを言葉を教えることで、外に引き出してやることだ」と書かれていた。私もまったく同感である。自分の中にあるモヤモヤしたもの、これをずばり言葉で言い表せたときの感動は誰もが経験したことがあるはずだ。
 たくさんの経験をし、それを自分の言葉で語る。そのことが感性豊かな子どもを育てる。そしてそれは子どもだけではない。大人も同じだ。京都で一緒に仕事させていただいているコミュニケーション・トレーナの岩崎裕美さんは、職場や家庭で疲れきって言葉を失ってしまった女性たちに、自分の感動した経験をいろんな言葉で語ってもらい、自分を表現してもらうというトレーニングをしている。いろんなことを経験させる、そしてそのことを自分の言葉で表現させる。単純なことかもしれない。しかしそれを繰り返すうちに女性たちは表情から変わってくるという。そんな単純に思えることが、人間にとってはとても大切なのである。

「よい言葉」を使おう

 今 『千と千尋の神隠し』という宮崎映画が大ヒットしている。いつも大人から子どもまで大人気の宮崎映画であるが、ビデオを買って毎日繰り返し観ていると言った観客に対して、監督である宮崎駿氏は「私は何度も観てもらうために映画を作っているのではない。子どもにとってはたった一度の経験が心の中にしっかりと植え付けられ、それが大人になったとき、何かの拍子にひょこっと現れることがある。そういう経験を子どもにたくさんしてもらうために、私は映画を作っている。」と話した。
 昨今、子どもたちの言葉遣いの悪さがいろんな場面で問題になっているが、子どもたちだって「よい言葉」を使いたいと思っている。でもそれを使う術を知らないし、ましてよい言葉すら知らないのである。あるアンケートで子どもたちが「よい言葉」と思うものをあげているのを見たが、残念ながら大変乏しいものだった。大人たちが、それぞれの得意分野で、子どもたちが心震えるような出会いを提供し、それをいろんな言葉で表現させてみて、ピッタリの言葉を引き出していく。そうして言葉の豊かさを伝えていかなければ、子どもたちはますます言葉を失っていってしまうのではなかろうか。

2001年8月 執筆
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