松下政経塾 The Matsushita Institute of
Government and Management

日本語英語


塾報 一覧へ戻る
Alumni
1999年9月

塾報

政治家の言葉
小野晋也/卒塾生     甲斐信好/卒塾生

 政治家の言葉から重みや迫力が失われたと言われて久しい。何がそうさせるのか。言葉の本質は魂・願いであり形式ではないと語る小野晋也塾員(衆議院議員、松下政経塾第1期生)。その体験を聞いた。

 
 今年7月9日、衆議院の青少年問題に関する特別委員会で自由民主党を代表して質問に立ちました。若者が自らの志と努力によって人生を切り拓くのでなく、周りの環境や運命で人生が決まるとする依存的な生き方が、様々な問題の原点にあるのではないかという指摘をし、関連していくつかの質問をしました。最後に、青少年の精神状態がいつもイライラしたり直ぐにカッとなったりヤル気を起こさせない原因には、栄養学上の問題もあるのではないかと、次の様に語りました。

 「最近非常に気になってき始めているのが、青少年の健全育成の中における栄養学的な立場の問題でございます。よく健全な精神は健全な肉体に宿るというようなことが言われまして、肉体が弱ければ、病弱であれば、やはり精神のほうも惰弱になってしまうというようなことが指摘されるわけでございますけれども、ちょうど昨日女子栄養大学の学長を務めておられます香川芳子先生にお見えを頂いてお話をお伺いさせて頂きましたところ、子供達がとる栄養と、子供達の精神状態、そして人生姿勢、これは非常に強いリンクがあるというようなお話を頂戴致しました」(速記録のまま)。

 この発言に対して、ある委員から議事録削除を求められました。「健全な精神は健全な肉体に宿る」という一文が駄目だというのです。「体の不自由な人達は全部精神がおかしいのではないかということになる」として「精神障害者の皆様に大変失礼な発言」だと言われるのです。私の発言は、「栄養学的に好ましくない食事を通して肉体が弱くなり、青少年の精神状態や人生姿勢に問題を起こしかねないという指摘がある。だから青少年の健全な成長のために、もっと栄養面について研究を進め、また教育においてもこの問題をもっと重視して行こうではないか」、と語っているものです。差別的意味などまったくありません。より良く生きようと語りかける言葉が、人を傷つけるものだと否定されるというのは心外であり、私の政治家としての良識に基づいて、議事録からの削除をお断りしました。
 今回の経験は、政治家の言葉について深く考える機会となりました。「この言葉はある人達の心を傷つける可能性があるから使うことを禁止する」という考え方は、「刃物はある人達にとっては他の人を傷つける凶器になるから、一切使うのを止めるべきだ」と言っていることによく似ています。刃物は危ないからこそ、危険性を減じるように注意して使うべきであって、そこに人間としての見識と責任感が存在するのでしょう。言葉も、人を傷つけない様に注意して使うべきものであって、ただ単にある言葉を使用禁止にすべきだというものではないと思うのです。
 政治家の発言に重みや迫力が無くなって久しいとよく指摘されます。政治家の言葉は、人の心や社会を変革する武器であり、その刃物はやはり鋭利でなくてはなりません。危ないからその刃を丸くして切れない様にしようというのでは、本末転倒だと思われてならないのです。言葉の本質は魂であり願いであり、決してその表出される形式ではないということを改めて考えてゆかねばならないと思います。

1999年9月 執筆
  1. HOME >
  2. 卒塾生一覧 >
  3. 小野晋也 >
  4. 政治家の言葉
ページの先頭へ