Thesis
先月の月例レポートにおいてイージス艦派遣に関して、ややネガティブなことを書いたが、それはあくまでも、日本の防衛力の低下を招いている恐れがあることを指摘しただけであって、イージス艦派遣に反対するものではない。今回の派遣を教訓にし、新たな自衛隊のあり方を考えればよいだけである。日米同盟が日本にとって、またアジア地域の安定にとって、重要な役割を果たしている以上、良好な日米関係を構築する必要性があるのは、間違いない。
テロ特措法に基づいて米軍支援のために、海上自衛隊のイージス艦「きりしま」が、神奈川県横須賀市の海自・横須賀基地を出港し、桟橋から自衛官の家族や親戚らが手を振って見送った。その際、基地の周辺では、市民団体が出港に反対するシュプレヒコールを繰り返した。いつもの光景と言ってしまえば、元も子もないが同じ日本人が、危険を冒して日本のため、世界のために、その職責を果たさんとする時にあまりにも無粋な行為ではないかと思わざるを得ない。また、見送りに出ている家族などの思いを配慮すれば尚更のことである。
一方、共にテロと戦う米軍の反応は、どうであったかと言うと、インド洋に向け出港したイージス艦「きりしま」に対し、米海軍横須賀基地のイージス艦が「ご武運をお祈りします」という横断幕を掲げて見送った。海上自衛隊基地とは対岸にある米海軍基地に停泊中のイージス艦「カーティス・ウィルバー」の船首部分に、星条旗と旭日(きょくじつ)旗が掲げられ、その横に、少したどたどしい筆遣いで「ご武運をお祈りします」と日本語で書かれた幅5メートルほどの幕があり、米艦の乗組員は整列して見送ったということである。今回の派遣で補給艦「ときわ」など2隻が横須賀基地を出港した際は、こうした横断幕はなかったそうだ。この行為に対して、米海軍側は「きりしまとはイージス艦同士の姉妹艦なのでやった。米艦同士ではよくやるが、日本語の応援幕は珍しい」と説明した。また、自衛隊側は「深い意味はなく、日米協力のエールと思う」と受けとめていると説明した。共に戦うものとして気持ちが、このような行動を取らせたように思える。この話しを耳にした際、思い出したエピソードがある。それは、米国同時多発テロが起きてしばらくしてから世界中を駆け巡った一つのメールである。これは、インド洋上で警戒任務について航海中の米駆逐艦ウインストン・チャーチル乗艦の、乗組員が故郷の両親に宛て出したものとされている。このメールの真偽は定かではないが、とても印象深かったのでここで紹介したいと思う(和訳、溜池通信より引用)。
『父さんへ僕らはまだ海にいます。残りの寄港予定地はすべてキャンセルされました。テロ攻撃以来の日々を、僕らは海上に線引きされた想定海域を行ったり来たりし、見張りに立ち、そして最善を尽くそうとしています。船の中にある記事や写真は、もう見飽きてうんざりするほどです。これだけ孤立していると、故国で何が起こっているかを僕らがすべて理解できているとは思えません。だが、その結果を僕らはここで痛感しています。ここにも共にテロと戦う気概が見えてくる。イージス艦派遣に対してアジア諸国が警戒するのではないか、との論調があったが、例えば、フィリピンのオプレ外相は、東南アジアでのテロとの戦いについて「日本のさらなる支援を望む」と語り、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国に対する日本の安全保障面での協力を期待する考えを示している。また、外相は、インド洋へのイージス艦派遣など、テロとの戦いに対する日本の役割の重要性を指摘し、「日本の慎重な姿勢は改められるべき時期だ」と述べた。更に、外相は、他のASEAN加盟国にも同様の声があると述べている。アジア諸国の感情に配慮をすべきだと主張する立場の人たちが、懸念している太平洋戦争期に日本軍がフィリピンや周辺諸国を占領・統治した経緯に関しても外相は「軍国主義の復活につながるという懸念は持っていない」と語っている。そろそろ日本は、過去「悪しき軍国主義であった日本」というトラウマから脱却すべき時期に来ているのではないだろうか。
2時間前、僕らはドイツ海軍の駆逐艦リッツェンから表敬の呼びかけを受け、左舷並走を許可するよう求められました。大洋の真っ只中にいるのですから、これは奇妙なことです。でも船長は許可を出し、僕らは甲板に立って迎える準備をしました。
彼らが近づくにつれて、指令塔の士官が双眼鏡を手にして、「リッツェンはドイツの国旗ではなく、星条旗を掲げている」と告げました。先方の船が横に並ぶと、米国の国旗が半旗の位置にたなびき、甲板上の全乗組員が一種軍装の状態で、静粛に直立不動でいるのが見えてきました。彼らが船腹に示したプラカードには、「我等は諸君とともにあり」と読めました。
船はさらに近づいて数分にわたって並走し、登舷礼が行われました。甲板の上には、涙をたたえぬ目はひとつとしてありませんでした。それは僕のこれまでの人生の中で、もっとも強烈な瞬間でした。ドイツ海軍は乗組員たちに信じられないことをさせ、それはテロ事件以来の日々における頂点ともいうべき出来事でした。わずか半世紀前には、考えられないことだったでしょう。リッツェンが去った後、年内で退役を予定していた甲板長がやってきて僕に言いました。「俺は海軍に残るよ」
いつ家に帰れるかが分かったら、また手紙を書きます。でも今のところはこれだけです。草々』
Thesis
Tomohiro Yamamoto
第21期
やまもと・ともひろ
(前)衆議院議員/南関東ブロック比例(神奈川4区)/自民党
Mission
外交、安保政策