Thesis
このたび、松下政経塾第35期生(岡田吉弘、木村誠一郎、山本将)の3名は基礎課程2年目に実施した共同研究の成果をレポートに纏めました。共同研究とは松下政経塾の同期生が共同で実施する取り組みで、バックグラウンドや価値観の異なる塾生が一つのテーマを設定し、調査、ヒアリング、有識者との議論などを通じて、目指すべき社会像やそこに至るための方策を導き出します。
第35期生は自分たちがシニア世代となる2050年頃を想定し、その時の働き方はどうあるべきかを考え、「生涯青春社会」を将来社会ビジョンとして提案しました。今後、各塾生は個別の活動に入りますが、いかなる場面においても「生涯青春社会」に向かう意識を持ち、活動を続けていきます。
https://player.vimeo.com/video/208627789
共同研究報告 要約VTR「はたらくことにより生涯青春へ」(7分31秒)
● 松下幸之助塾主は老いに身体的な老いと心的な老いがあると述べ、心には老いが無いと述べた。とりわけ、サミュエル・ウルマンの詩をヒントにして作った“青春とは心の若さである”という言葉は晩年の座右の銘であった。
● 働くことについて社会を眺めてみると、シニア期においても稼ぎに出続けざるを得ない状況がある。国家財政を理由に年金支給年齢が引き上げられ、国民は生活費を得るために稼ぎ続けざるを得ない。人が働くことは本来、国家、国民の両方にとって嬉しいものであることが必要である。
● シニア世代の就労において、雇用側、働く側双方にメリットがある状況となっていない。定年後、シニア期就労の待遇は大きく変化するため、働き続けるモチベーションを奪っている場合がある。
● 私たち20代、30代が60代となる2050年頃には更なる長寿命化が予想され、リタイアという概念も無くなっている可能性がある。そもそも働くとはどのような行為であるか、長寿命化時代に合わせた形で再考する必要がある。同時に、それをイメージできるビジョンも必要である。
● シニア世代においてどのように働いていくのかというマインドセットが、シニア期に至る前には不足している可能性がある。現役時代、若手時代から、シニア期を見越した準備が必要であると考える。
1. 将来社会ビジョン:生涯青春社会
将来社会のビジョンとして「生涯青春社会」を提案する。生涯青春社会とは「はたらく」ことによって青春が得られる社会である。そこではあらゆる人の心が若く、信念を持ち、希望に溢れ、勇気を持ち、日々新たな活動が行われる。人は関係性の中で役割を持ち、「はたらく」ことでその役割を果たす。そして、役割を果たそうとするところに青春を感じると考える。
2. 生涯青春社会におけるシニア世代の「はたらく」かたち
生涯青春社会において、私たちは「はたらく」 ことが重要であると考える。「はたらく」は一般的に想像される働くこととは異なり、自ら見出した役割を主体的に取り組むこととであることから、平仮名で表現した。そして、「はたらく」には次の3つの形態があると考える。
[はたらく1] 稼ぐ(生活費を稼ぐ)
生活費を稼ぐ手段として「はたらく」事は今後も重要であり、シニア期においても一つの目的となる。
[はたらく2] 傍を楽にする(人の役に立つ)
「はたらく」事には生活費を稼ぐだけではなく、本人の生き甲斐や健康、人とのつながり、所属することによる居場所の確保などの価値も含有されると考える。この価値を稼ぐための「はたらく」から切り離し、個人が属するコミュニティ(サークルや地域など)で得られるようにする。
[はたらく3] 稼ぎながら、傍を楽にする
生活費を稼ぐ手段としての「はたらく」と、人の役に立つ「はたらく」とを一体で提供する企業や団体を数多く生み出し、社会全体で稼ぎながら、傍を楽にすることが出来る状態の実現を促す。
生涯青春社会において想定される「はたらく」を具体化するため、私たちは以下6つのアイデアを提案する。
(アイデア1)定年後の賃金減額に伴う労働意欲低下の払拭*1
就労年金を新たに創設し、年金を企業や団体経由で支給する。
(アイデア2)被介護者・要介護予備軍の方への就労意欲増進*2
高年齢期において同世代の人たちがイキイキ働いていることを認識される仕組みを作る。
(アイデア3)「生涯青春」を実現する文化の醸成*2
生涯青春の日などを創設するなど、生涯青春文化を醸成する。
(アイデア4)現役時代からのキャリア把握とキャリア設計支援*2
キャリアの棚卸し、また、プロボノ、社会活動支援、パラレルキャリアなどを推奨する。
(アイデア5)「はたらく」ことへの多様な報酬を提示*3
賃金に変わる報酬として、居場所や健康、心のゆとりなどについての基準を設ける。
(アイデア6)シニア世代の積極的活用を促す制度の確立*3
フレキシブル労働の推奨、SMBA(シニアMBA)の導入などにより働きやすい環境を制度により実現する。
*1,*2,*3:提言骨子の「はたらく1、2、3」に対応
共同研究報告レポート 本文(PDF版)
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