論考

Thesis

日本のベンチャー企業振興を何が妨げているか ―起業家精神を育む社会変革の必要性―

日本で、本格的なベンチャー企業振興策が実施されはじめてから20年が経とうとしている。起業支援の枠組みが着実に整備されるなか、日本には、より本質的な問題が横たわっていることが改めて浮き彫りになっている。ベンチャー企業振興のために、高度経済成長期以降の現代ニッポンの社会システムを変革することを提言する。

1. 国家の発展、繁栄におけるベンチャー企業の大切さ

 日本は、明治維新以降、太平洋戦争による壊滅的な被害をも克服し、およそ100年で世界に冠たる産業群を有する経済大国となった。この経済発展を背景に、国内の労働市場には豊富な就業機会が提供され、また旺盛な企業活動による税収は国民の負担を抑えた形での手厚い社会保障制度の構築を実現するなど、国民生活もまた世界有数の発展を果たした。

 しかし、日本の経済力は90年代をピークに低下傾向にある。右肩上がりの経済成長を前提に構築された社会保障制度は低成長の今日の日本経済では支えきれず、毎年膨大な赤字を垂れ流しており、赤字国債による肩代わりという形で負担は将来世代に先送りされている。急激な少子高齢化によって、すでに労働人口だけでなく総人口までが減少し始めた日本において、様々な社会制度を維持するためには、女性の社会参画を促すだけではなく、労働者一人あたりの生産性を高めることがますます重要になってくる。

 経済の生産性を高めていくために、今先進各国で取り組まれているのが、いかに起業を促進するか、という政策課題である。筆者は2015年から2016年にかけてワシントンDCに1年間滞在し米連邦議会でフェローとして議会業務に従事し米国政治家の活動を間近で学ぶ機会を得た。その際に強く印象に残っているのが、起業家精神や起業活動を指すアントレプレナーシップ(Entrepreneurship) と言う言葉が、民主党や共和党の違いを超えて、あらゆる政治家が経済政策を語る際には必ずといっていいほど触れられるキーワードとなっていたことだ。

 先進国の経済にとっての起業振興の重要性は、主に以下の三点から説明することが出来る。

第一に、新たに起業した企業の雇用創出効果が大きいことが挙げられる。『中小企業白書2011年版』1によれば、「2006年から2009年までの期間の新規開業事業所は全事業所の8.5%に過ぎないが、この新規事業所によって生み出された雇用は、全雇用創出の37.6%に達している」とされており、その雇用創出効果の高さがうかがえる。起業大国として知られるアメリカでも、同様の指摘がなされている。メリーランド大学カレッジパーク校の研究者が中心となって1976年から2005年の間のデータを使用して行われた研究2によれば、雇用の増加に寄与しているのは、大企業でも中小企業でもなく、規模に関わらず「若い企業」であることが明らかになっている。ほぼ全ての雇用の純増分と、総雇用創出の20%がその年に設立された企業によってもたらされているという。

 第二に、新規起業された企業、特にベンチャー企業と呼ばれる企業がイノベーションの源泉になり、経済・社会に新たな価値をもたらす役割を担っている点が挙げられる。ハーバード・ビジネススクールのクリステンセン教授は「「破壊的イノベーション」は、イノベーションによって失うものが大きい巨大企業からは生まれにくく、失うものがほとんどない新規参入企業や新興企業から多くが生まれている」とその著書『イノベーションのジレンマ』の中で明らかにしている。

 第三に、生産性の高い新興企業が参入することによって、経済全体の生産性が向上するという、新陳代謝の効果が挙げられる。これは、通常新規に参入する企業は、既存企業が持っていない・行っていないようなビジネスモデルや商品を持って参入することから期待される効果である。

 このように、新しい職業や雇用を創出するのみならず、我が国産業のイノベーションを促進し、日本経済全体の成長と活性化を図る上では、新しい技術やアイデアをもってビジネスに挑戦する新企業の創出・成長が非常に重要である。

2. 起業振興の主眼は「ベンチャー企業」の創出

 前述のメリーランド大学カレッジパーク校の研究成果では雇用創出ほどではないが、若い企業の市場からの退出、雇用の喪失も大規模に生じていることが指摘されていた。若い企業は廃業する確率も高く雇用も失われるケースが多い。起業促進によって、より良い雇用を多く創出したいのなら、創業間もない時期の不安定な経営状況を乗り越え、さらなる成長を目指す若い企業の存在に注目し、応援をしていくべきだ。飽くなき成長を目指し、イノベーションをもたらす若い企業こそが、条件の良い雇用の創出に寄与する。まさに「ベンチャー企業」と呼ばれるこのような企業を増やすことが、起業振興の主眼である。

 本稿の考察の前提は、ベンチャー企業振興の施策は、既に政府が長年にわたって行っているが、それがうまく機能していない、ということだ。米国の先進事例を詳細に研究しそれを導入したり、あるいはそもそも日本の過去の政策を参考に形成された米国のベンチャー集積地(米国でシリコンバレーに次ぐベンチャー集積の成功例として注目されるテキサス州のオースティン市は、1980年代の日本が実施したテクノポリス(高度技術集積都市)計画が一つの土台となっている)がありながら、何故日本ではベンチャー企業振興が成功しないのだろうか。

3. 日本の起業環境の現状

 過去十数年間、起業家教育の拡大、インキュベータの整備、ベンチャー企業向け人材市場の成長、最低資本金規制の撤廃、ベンチャーキャピタルの成長、新興株式市場の開設等、我が国においてもベンチャー企業を取り巻く制度的・社会的支援の枠組みが急速に整備され(表1参照)、我が国のベンチャー企業の創出・成長環境は、この間、飛躍的に向上してきた。

表1 1999年以降に導入された主な起業支援策

 このように、日本はこれまでも、ベンチャー支援の制度を国が率先して作り、様々な法整備などが進んでおり、制度や仕組み面の整備で諸外国に大きく後れをとっているという状態ではないと考えられる。

 しかしながら、米国等、ベンチャー企業が国家の経済成長やイノベーションに大きな役割を果たしている国と比較すると、ベンチャーの活性化はまだまだ道半ばである。図1は、日本の開業率と廃業率のデータを時系列で示したものだが、廃業率が6%台で推移する中、開業率は様々な起業促進策が実施された2000年代以降も、廃業率以下の水準となっている。また、統計の取り方が異なる為単純比較は難しいが、図2のとおり、米国や英国に比べて日本の開業率は低いのが現状である。

図1 日本の開・廃業率の推移

(出所)『中小企業白書(2014年度版)』に掲載のデータを使用して筆者が作成

図2 開業率の国際比較

 なぜ様々な取り組みにも関わらず、日本の起業数は変化しないのか。これを考えるうえで、考えさせられる話がある。ベンチャー企業を振興する上で、大学のもつ先端技術をビジネス化することは極めて重要な方策の一つであり、日本政府も公的資金の投入を通じて、大学のベンチャーファンドを支援し、大学発ベンチャーの育成に期待・注力している。しかし、大学でのインキュベーション業務に詳しい方に話しを伺うと、カネは十分に用意されているのに、カネを付ける先、つまり起業家が少なく十分な投資が出来ない、という事例が多いことが分かる。

 このような話や、すでに述べたように日本で多くの起業振興に向けた環境整備が行われていることから推察できるが、日本で起業が増えない根本的な原因は、支援策や資金の欠乏ではないと、筆者は考えている。起業の意志の無い人が、「税制が優遇されているから」あるいは「様々な支援制度があるから」起業しよう、という考え方になるかと言えば、それは違うと感じる。

 例えば、米国は先進国の中では極めて良好な起業活動率を誇っているが、その米国の最新の調査結果からは、起業を増やす施策を考える上で有用な、そして意外な事実を読み取れる。その一つが、起業段階でベンチャー・キャピタル(VC)やビジネス・インキュベーター(BI)を利用する起業家が少ないというデータだ。高い成長率を誇るベンチャー企業479社を対象に行った調査では、VCを利用している企業は7%に過ぎなかったという3。また、BIを利用した企業とそうでない企業の間に有意なパフォーマンスの差異が見られないことを指摘する声もある4

 もちろん、VCやBIを利用して大きな便益を受けた企業は存在するし、様々なタイプのものが存在する中で、一括りにその役割を語ることはできないだろう。私がこのような研究成果から読みとったことは、経営支援の存在や金融支援の存在が、起業を増やす上で助けになり得ても必須事項ではなく、必須なのは人々の起業への機運を高めるといういわゆる「起業家精神」(英語でアントレプレナーシップと呼ばれるもの)を醸成する取組や、あるいはそれも含めて日本に存在するベンチャー企業の活動を阻む社会のシステムを変革していくことだ。

4. 根本的な阻害要因である起業家精神の低迷

 事実、起業率の低迷に呼応するように、日本の起業家精神が低いことを表す調査データが存在する。OECDによる起業活動に関する調査レポートであるEntrepreneurship at a Glance 2013と、起業活動の国際比較や国家経済に及ぼす影響を調べるためにほぼ毎年実施されている国際的な調査プロジェクトであるグローバル・アントレプレナーシップ・モニター(The Global Entrepreneurship Monitor、以下GEMという)によって公表されている調査結果(本稿では日本のデータが掲載されている最新のGEMの調査結果であるThe Global Entrepreneurship Monitor 2014を使用)からは日本の起業家精神が低迷していることが示唆される。なお、比較対象の国としてはG7とし、データが存在しない場合を除いて、G7各国のデータを掲載している。

 以下、図3から図6として紹介するデータからは、日本において起業は、1) リスクが高く失敗すると取り返しがつかない、2)関連分野の教育をうけておらず、自分にはできないもの、というイメージを持たれていることが浮き彫りになっている。結果として、図7が示す通りG7で最低レベルの起業活動率につながっていることが考えられる。また、日本の起業家精神を語る際に特に目を向けるべきは図8のデータである。このデータから日本では失敗をすることに対して厳しい社会的な雰囲気があることが分かる(これは、わざわざデータを示して証明する必要はないと思う程、今日の日本社会の誰もが知っている雰囲気だと思う)。ベンチャーに実際に関わる人達の間では「過去に失敗の経験がある起業家の方が成功する」というのは常識に近い認識なのだが、日本の社会にはそれを許さない雰囲気が存在しており、経験を積んだ起業家が再挑戦することを妨げることはもちろん、そもそも起業に対するリスク認識を大きく高めている原因となっていると推察できる。

図3 起業は良いキャリアの選択だと思う、と答えた割合(%)

(出所) GEM The Global Entrepreneurship Monitor 2014のデータを使用して筆者が作成
 

図4 起業して失敗するのが怖い、と答えた割合(%)

(出所) GEM The Global Entrepreneurship Monitor 2014のデータを使用して筆者が作成
 

図5 自分には起業して経営する能力がある、と答えた割合(%)

(出所) GEM The Global Entrepreneurship Monitor 2014のデータを使用して筆者が作成
 

図6 学校教育は、事業を営むのに必要なスキル・ノウハウを提供したか(%)

(出所) GEM Entrepreneurship at a Glance 2013のデータを使用して筆者が作成
 

図7 起業活動率の国際比較(%)
(18歳から64歳までの人口のうち、創業期の起業活動に従事している割合)

(出所) GEM The Global Entrepreneurship Monitor 2014のデータを使用して筆者が作成
 

図8 失敗した起業家は、再挑戦の機会を得るべきか(%)

(出所) GEM Entrepreneurship at a Glance 2013のデータを使用して筆者が作成

5. 戦後日本の経済社会システムを変革して、より活力ある日本経済を

 日本でベンチャー企業振興を真に果たそうとするなら、上記のデータで示されているような起業に対するネガティブなイメージを払拭する必要がある。起業に対する見方が社会全体でネガティブである以上、いくら環境整備を行っても肝心の起業家が出現しないことに加えて、既存の企業がベンチャー企業との取引を避ける、あるいはベンチャー企業が外部から優秀な人材を雇用することが難しくなるなど、ベンチャー企業振興における大きな阻害要因になる。

 では、起業家精神を高めるために、我々は何をすればよいのだろうか。その際、「起業をしよう」といったキャンペーンを張ったり、あるいは既に取り組まれているような起業家教育を教育現場で拡充したりすることも考えられるが、それによって起業活動を高めることには限界があることを認識する必要がある。周知のとおり日本には、特に戦前や戦後間もない頃に活躍した実に多くの起業家がいて、これまでの日本の発展の原動力となってきた。このことからも、高度成長期を経て現代日本の起業活動が低調になっているからといって、日本人の「精神」や「文化」といったものが起業活動に適していないというわけでは全くないことは明らかだ。起業環境の整備や様々な支援策をもってしても、起業を行うことをあまりに非合理的な選択としてしまうような、現代日本の経済社会システムを変革しない限り、起業活動の活性化、ベンチャー企業の振興は果たせない。

 このような問題意識に基づけば、日本のベンチャー企業振興を行う上では、大企業(あるいは公務員)への就職や終身雇用を過信しすぎている現在の日本人のキャリア感の現実に即した変化を促すこと、そして日本市場に海外の才能・多様性を誘致して、日本経済に活力とレベルの高い競争を生み出すことなどが、より重要な取り組み分野になるのではないかと筆者は考えている。

6. 働き方改革の実現

 現代日本の経済社会システムを形作り、そして「起業」という選択肢を非合理的なものにしてしまっている一つの根本的な原因が「日本型雇用慣行」である。「働く」ということは経済社会の中心にあり、社会通念、教育制度、そして社会全体もそれに基づいて形作られていると言える。日本の雇用慣行は「メンバーシップ型」と呼ばれる。メンバーシップ型雇用慣行の下では、社員は職務を限定せずに採用され、職場でのOJTなどを通じて業務を学んでいき、配転で経験を積んでいく。企業が社員の雇用を守る代わりに、社員には企業に対して強力な人事権を認め、配置転換や転勤に従うことが求められる。このような企業と社員の関係、社員のキャリアパスを前提としているため、企業に対する忠誠心を植え付け、その企業の特性に応じた技能を身に着けさせる上で都合が良いように、採用形態は新卒一括採用が中心になり、中途採用は重視されない。このような雇用慣行の下では、新卒採用時にその企業に入社し「メンバーシップ」を得ること、そして勤続年数を積み重ねメンバーシップを維持していくことが重要であった。

 メンバーシップを一度得て、自ら手放さない限り、給料もポストもほぼ横並びで上がって行くので、業績が順調で安定している大企業のメンバーシップは極めて貴重であり、逆に、メンバーシップを放棄することは極めてリスクが高くなる。このような雇用慣行下で、しかも大企業の業績が良い時代が長く続いた日本で、大企業志向の形成は合理的な選択の結果であったといえる。優秀な人材が大企業を離れることに極めて大きなリスクを生じさせるメンバーシップ型雇用慣行は、起業家精神を高める上では、全く逆効果になる社会制度だ。メンバーシップを手に入れられなかったり、失ったりすることに対する機会損失が極めて大きいのであれば、会社を辞めて起業しようと考える人や、あるいは大企業を離れてベンチャー企業で働くことを選択する人が少なくなることは想像に難くない。

 欧米では、「ジョブ型」と呼ばれる雇用慣行が一般的となっており、社員は入社時から職務(Job)が契約上で明示されており、自らに求められる成果も明確になっている。担当する職務がなくなれば職を失う一方で、その職務で経験を積めば、同様のジョブ型の雇用体系を持った経済社会であれば転職を行うことは「メンバーシップ型」よりも柔軟に行える。また、ジョブ型は職務が限定されていることで、メンバーシップ型雇用のように、仕事が早ければ他の仕事を回される、他の人の仕事が終わるまで帰れない、といった非効率性の悪循環を止め、低い日本のホワイトカラーの生産性を向上させることに繋がる。現在の「総合職正社員」のように、無限定で転勤を受け入れ、幹部候補として多数の部門で経験を積む形の社員が一部残っても、ほとんどが職務によって雇用されることになれば、正規・非正規という分類は意味をなさなくなり、職務・成果に基づいて同一の報酬を受け取るという公正な労働環境も構築できる。

 メンバーシップ型の雇用体系が高い生産性につながる製造現場などは引き続き存在するが、特にホワイトカラー系の職務において日本でも「ジョブ型」雇用の導入を促しこれを浸透させることで、大企業に勤める人材が起業に挑戦し易くなるのに加えて、ベンチャー企業で働くことのリスクが大幅に低減され、ベンチャー企業で不足する高度人材を確保する上でも有益だ。このメンバーシップ型の雇用慣行は戦後の高度経済背長期までに構築され、当然今の大企業の経営者や管理職はほとんどがそのシステムの中で経験を積み・昇進を重ねてきた現代日本の「成功者」と言える。そういった人たちにとって、現状のシステムからの自律的な移行を期待するのが難しい可能性もあり、政府主導での取り組みが求められる。

7. 日本をオープンなイノベーションとビジネスの場に

 米国では、移民のほうが、米国で生まれた市民よりも起業活動が2倍活発であるといわれており5、移民のもたらす経済効果の1つとして認識されている。これは、シリコンバレーなどの世界トップクラスのベンチャー集積地がアメリカにいくつも存在し、その場所が世界中から起業を志向する優秀な人材を集めていることがその背景として存在すると考えられる。そのため、筆者は日本でやみくもに移民を受け入れるのではなく、高度人材、起業を目指すような人材の受け入れを盛んにするべき、との考えだ。そのような外国人人材が増えれば、イノベーション、ベンチャー振興にとって直接的な振興策になるだけではなく、日本人に対してもよい刺激を与えるだろう。

 シリコンバレーが世界中の才能を集めて成功している中、日本が日本人だけの力でそれを成し遂げようとするのは不可能と言って良い。外国人人材が持つ多様なアイデア、高度な技能、本国とのネットワークなどを活用できる環境を整えて初めてグローバルな競争の必要条件が整う。研究開発などのイノベーション活動でも国際的な協力が益々重要になる時代、海外とのグローバルな協業を深化させるためにも、海外人材の力が必要だと筆者は考えている。そして、こういった政策分野も国家レベルでの政治の取り組みが必須となる。

 筆者は、少年時代、家計的にも苦しい母子家庭で育ちながらも、大学まで教育を受け衣食住にも困ることなく過ごせたことから、日本の豊かさを築いた先人に対して人並みならぬ感謝と尊敬の念を抱いている。そして、同時にその経済が長きに渡って活力を失っていることに非常な危機感を抱き、日本経済の軌道を修正し、豊かな社会を維持したいとの志を持って松下政経塾に入塾した。それから4年近くがたつが、不幸にも、日本を取り経済・財政的な危機は、ますます深まっている。ベンチャー企業を振興することのみならず、日本経済の生産性を上げ、国際的な競争力を回復するためにも、日本の経済の根幹にある様々な時代にそぐわない慣習や仕組みを、グローバル経済の恩恵を十分に生かせる形に更新していかなければならない。

 日本経済に活力を取り戻し、グローバル社会で輝く日本を実現することで、日本に住む人が誰でも自らの生き方を自由に決め、生き生きとした人生を送れる社会を実現したい。新しい産業を興し、イノベーション活動に重要な役割を果たすベンチャー企業の振興は日本経済再興の重要なピースであり、またその実現の可否が、日本経済のバージョンアップが正しい方向に向けて歩んでいるか否かを測るバロメーターになる。

 2017年3月に私は松下政経塾を卒塾し、ベンチャー企業振興を象徴的な政策として、日本経済のバージョンアップに取り組む為政者としての歩みを始める所存である。豊かな日本を実現するために、必要な改革から目をそらさずに、真摯に政策を提示・説明し、実行する政治家を目指すことを誓い、本稿の結びとする。

【注】

注1: 中小企業庁『中小企業白書2011』、193頁 

注2:John Haltiwanger, Ron S. Jarmin, and Javier Miranda, “WHO CREATES JOBS? SMALL VERSUS LARGE VERSUS YOUNG,” MIT Press Journals – The Review of Economics and Statistics, VOL. XCV: 347-361. 2013

注3:Alex Krause, “Expelling 4 Myths of High-Growth Companies,” Kauffman Foundation, August 24, 2015: online

注4:Emily Fetsch, “Are Incubators Beneficial to Emerging Businesses?” Kauffman Foundation,

March 2, 2015: online

注5:Jason Wiens and Chris Jackson,  “The Importance of Young Firms for Economic Growth,”Kauffman Foundation, September 15, 2015: online

 

【参考文献】

岡田悟(2013)「我が国における起業活動の現状と政策対応―国際比較の観点から―」、『国立国会図書館調査及び立法考査局レファレンス』平成25年1月号、29~51ページ

クレイトン・クリステンセン『イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』 翔泳社、2001年

中小企業庁『中小企業白書 2011年版』 2015年3月23日アクセス

富山和彦『なぜローカル経済から日本は甦るのか GとLの経済成長戦略』PHP研究所、2014年

星岳雄、アニル・カシャップ『何が日本の経済成長を止めたのか―再生への処方箋』日本経済新聞出版社、2013年

八代 尚宏『日本的雇用慣行を打ち破れ』日本経済新聞出版社、2015年

GEM Global Entrepreneurship Monitor 2014 Global Report 2015

OECD Entrepreneurship at a Glance 2013 2013

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斎藤勇士アレックスの論考

Thesis

Alex Yushi Saito

斎藤勇士アレックス

第34期

斎藤 勇士アレックス

さいとうゆうし・あれっくす

衆議院議員/滋賀1区/日本維新の会

Mission

賃上げ、生産性の改善、ベンチャー振興、子育て支援

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