松下政経塾 The Matsushita Institute of
Goverment and Management

日本語英語


塾生レポート 一覧へ戻る
2001年4月

塾生レポート

これからの住民参加のかたち
喜友名智子/卒塾生

 

防府市まちづくりフォーラム

 去った4月28日、あたらしいまちづくり組織が誕生した。山口県防府市を活動場所とする、「防府まちづくりフォーラム」の設立会が開催されたのである。設立主旨を配布資料から抜粋する。
 『防府市内には、すでに様々なまちづくりグループやボランティアサークル等があり、様々な形で防府市の活性化に取り組んでおられます。しかし、せっかくの活動もパワーが十分に発揮できていないのが現状ではないかと思います。また、何らかの形でまちづくりに参加・協力してみたいけど、情報やきっかけが掴めない、という市民の皆さんも大勢おられます。防府を愛し、良くしたいと願う全ての人々の主体的な参画・連携・交流による、市民による市民のためのまちづくりを「総合的・効果的に推進するための組織」が、「防府まちづくりフォーラム」です。』
 自主研究や調査活動などを通した"住む人からみたまちづくりの提案"、人材育成などの"交流の場"、イベント企画や会報など"アイデアの発信"を活動の柱とし、市民主体のまちづくりをしていくことを目的としている。1~2年内でNPO法人化をめざし、5年内の自主運営化、長期的に社会的認知や評価をえたいという展望だ。 設立会に集まった人も、商店街の関係者、行政関係者、主婦などさまざまだ。これまでにはなかった、新しい層がまちづくりに参加していることが、私には新鮮に映った。設立会も、挨拶ばかりの堅苦しいものばかりでなく、ゲームやテーマごとに集まって自由に話をする時間があるなど、和気あいあいとしたものだった。
 このフォーラム設立の前には、約2ヶ月間、5回にわたって「防府21世紀フォーラム」というワークショップ形式の会が行われていた。まち歩きをして発見や提案をする、テーマごとのグループ討議をするといったことを通して、まちづくりプロジェクトの企画書をつくるという成果を残した。せっかく、まちづくりという同じテーマに関心のある人が集まったのだから、このまま解散するのはもったいない、今後も活動を継続していこうということで、フォーラム設立に至った。

「コンセンサス・コミュニティ」と「テーマ型社会」

 NTTデータシステム科学研究所(RISS)では、「コンセンサス・コミュニティ」という概念に関する調査・研究を行い、出版物の発行やシンポジウムなどを開催している。
 ここでの主要なアクターは「自ら社会の維持と変革に参画する意識をもち、問題解決に向けた議論に参加する」個人、「基本方針や具体的なプランに関する情報をわかりやすく提供する」行政・企業である。これらが社会にある問題を解決するために互いの知識・考え方を共有し、複数の選択肢を考え、議論を重ねて社会的な意思決定に高める。このような機能が働く自立型社会(コミュニティ)を「コンセンサス・コミュニティ」としている。彼らが1998年に行った調査によると、自発性が高く、次の世代の社会をよりよくしたいという意識をもっている人は、日本人の27%であり、このグループの人々がコンセンサス・コミュニティを推進する主体となる。
 アソシエイトの年に行ったオランダ共同研究においても、インタビューした先々でよく耳にした言葉は「talking, talking, talking」「consensus」であったことを思い出す。行政・企業・住民が、よい社会をつくるために互いに議論を重ね、方向性を見出していく。「日本はコンセンサス社会である」ということを、ネガティブな意味でしか聞いたことのなかった私にとっては、「前向きなコンセンサス社会もあるのだ」と新しい発見をしたのである。RISSで提唱している「コンセンサス・コミュニティ」に非常に近い形がオランダでは実践されている。

 もう一つ、これからの社会づくりを考えるうえで興味深い考えを紹介したい。
 「参加のデザイン研究所」を設立し、市民参加の理念や理論を提唱している活動で知られる世古一穂氏のいう「テーマ型社会」である。氏は現在の日本の状況を、従来あった地縁的なコミュニティが崩壊し、個人がバラバラになっているルールなき放任状態であるという。個人の自由と自発を基盤としたコミュニティという新しい枠組みを構築しようとする場合、これからは従来型の地縁型ではなく、「テーマ型社会」をつくる必要があるというのだ。同じ県や市町村に住んでいるから何かをやりましょうではなく、こういう問題を解決したいから集まりましょう、という状況である。「コミュニティを再構築していく論理というのは、個々人の自発に基づく、テーマ型コミュニティづくり」が必要なのである。

「コンセンサス・コミュニティ」「参加のデザイン」など呼び方はさまざまであるが、これらの言葉が表しているものは同じものである。地域にすむ生活者が、自分の地域にどうかかわっていくことができるかというシステムづくりだ。これからの社会づくりとは、住民・生活者の意見をいかにして形にしていくかという方法が非常に重要になってくる。

2001年4月 執筆
  1. HOME >
  2. 卒塾生一覧 >
  3. 喜友名智子 >
  4. これからの住民参加のかたち
ページの先頭へ