論考

Thesis

沖縄観光の圏域別開発案

「沖縄の自立」のための観光産業の開発、をテーマの一つとしているが、その青写真を今月は提示したいと思う。

 私は、沖縄の観光開発にとって重要な点は「観光地域と居住地域が乖離しない」ことだと考えている。これからの観光産業の傾向として、名所・名勝1点の見物観光よりも、その地域にある文化―特に食、街並みなど―といった、"生活様式"、ライフスタイルが、観光の魅力になってくる。

 これまではどちらかというと、開発における「ハード」と「ソフト」の中でも、「ソフト」のほうに注目してきたが、今回は「ハード」――つまり建物や自然環境における物理的な開発、という点から考えたい。

沖縄観光の持つ特性

  今一度、沖縄観光の特徴や優位性を確認すると、
(1) 島嶼地域が持つ自然環境
(2) 琉球王国時代を背景とした歴史や文化が挙げられる。 一方問題点は以下の通りだ。
 (A)観光客が集積する地区がない。
 (B)長期滞在できるオプションが少ない。
 (C)地域の文化を"経験"できる機会が限られている。

各市町村の考えている観光業の方向

 県内にある市町村の総合計画や観光振興計画、これまでに行ったインタビューなどを見ると、

  • 現在は「史跡」「行事・祭り」の活用が多い。

  • 離島では「海洋」「動植物」といった離島特有の自然を活用している地域が見られる。

  • 景観面では、「史跡」の活用が多い一方で、「街並み」「伝統工芸」「芸術文化」「郷土芸能」が低い。
 といったことが指摘できる。「史跡」とは、世界遺産に登録されている首里城とグスク群のことである。
 また、今後活用したい資源として、

  • 「海洋」「森林」「動植物」といった自然を活かした分野と、「行事・祭り」「郷土芸能」「芸術文化」の文化分野の活用を図ろうとしていることが目立つ。糸満市が挙げた『糸満ふれあい漁港漁村整備計画』やダイビング、エコツーリズムなど体験型の活用を図りたいとする市町村が多い。また、亜熱帯の自然を活かした「森林」や、「農林漁業」での農業体験学習を取り入れた観光を行いたいとする市町村が見られる。

  • 現在はあまり活用が見られない「街並み」を活用したいと考える市町村は少ない。
 先述した、"生活様式"を魅力とする観光を提供するには、歴史的遺産や自然環境などに頼りすぎの傾向である。歴史や文化などは、そこにあるだけではただの古いものであり、それが現在にどう受け継がれているのか、実際の生活にどう影響しているのか、という今との関わりがなくては、魅力がない。すでにある「史跡」「自然環境」を背景に、私たちの「今の街並み」「今の食」「今の生活文化」を創っていく必要があるのだ。

地域別の開発方向

 世界の10大ニュース
(1)沖縄観光の目指す方向、(2)県民の居住環境、(3)活用する資源、を柱に考えた、圏域ごとの開発方向は以下の通りだ。

 日本の10大ニュース
(1)小泉内閣発足 (2)国内初の狂牛病 (3)失業率5%台 (4)池田小児童殺傷 (5)愛子さま誕生 (6)えひめ丸事故 (7)テロ特措法成立 (8)イチロー大活躍 (9)外務省不祥事 (10)ハンセン病勝訴

<沖縄本島> 沖縄本島は地理的には通常、北部・中部・南部の3つに区分されるが、私は南部から那覇市を分けたほうがよいと考える。中心都市である那覇と、那覇以南では施設の集積や居住環境など、一つにくくって考えるのは互いの特性を相殺することと非効率だからである。

  • 北部:中西部の海岸からリゾートホテルが点在する。しかし車でなければ移動できず、利用者はホテルに缶詰、地元からみると租界地の存在である。この点在型を解消するように、宿泊施設の増設や関連店舗を集積させる。

  • 中部:那覇市から続く第2の都市圏で、北谷町のアメリカン・ビレッジを中心とした開発で一つのエリアを形成している。ただし宿泊施設は皆無の状態で、滞在型観光には向かない。人工ビーチがいくつかあるために、ハワイのワイキキのような集客地域としての方向性も可能だったと思うが、すでに周辺が居住地域となっており、観光地としての開発は難しい。

  • 那覇:都市型観光地として、交通や宿泊施設、中心市街地を拠点とした「沖縄の入口」としての開発を行う。

  • 南部:沖縄戦の戦跡を中心とした「平和学習」の場とする。そのほか、農業体験や漁港を利用した学習など、「学びと体験のエリア」とする。
<宮古>  宮古島は、島を一周するような環状に道路がつくられており、道沿いに観光施設が点在している。その環状の内部は、改良整備が進められている農地が多く、島全体での観光開発の方向ではない。ダイビングやマリンスポーツを中心とした、スポーツ・アイランドとすることがふさわしい方向であると考えられる。

<八重山地域> マングローブをはじめ、自然が多い。エコツーリズムや自然とのふれあいを通した環境学習的な利用が向いているのではないか。また石垣島と西表島を中心に、周辺の小さい島への日帰り観光のオプションも可能である。

 大企業による大規模施設誘致を優先することは集積地での決められた区域のみにとどめ、全体としては小・中規模施設による産業集積を図るという方向が沖縄には適しているように考えられる。この意味で、各市町村が目指している個別の方向は決して間違ってはおらず、これらをひっくるめて「沖縄」としてアピールする観光開発が必要である。

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喜友名智子の論考

Thesis

Tomoko Kiyuna

喜友名智子

第20期

喜友名 智子

きゆな・ともこ

沖縄県議会議員(那覇市・南部離島)/立憲民主党

Mission

沖縄の自立・自治に関する研究

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