松下政経塾 The Matsushita Institute of
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1998年10月

塾生レポート

横浜の放課後児童問題
平島廣志/卒塾生

 
 先日、16期の草間吉夫塾生の紹介で同塾生と広尾にある厚生省の外郭団体・日本子ども家庭総合研究所の山本真実研究員を訪れた。
 前回も保育サービス、特に「保育バウチャー構想」の基本的な制度と概念について話を聞いたことがあるが、今回は「学童保育」についてお話をうかがうことができた。

 学童保育、正式には「放課後児童健全育成事業」とは、放課後、親が働いているなどの理由で「保育に欠ける」小学校低学年の児童を預かる保育サービスである。 近年共働き家庭が増えてくる中で、見直され始めたサービスで、昨年の児童福祉法改正で正式に法的な位置づけがなされている。
 全国に公営、私立などあわせて大小5000の学童保育施設がある。
 現在首都圏では小学校入学前は保育所などの延長保育サービスを使って残業などができ、女性も働くことができるが、小学校に入ったとたん放課後子どもの面倒を見てくれるところがなく、やむなく仕事を断念するケースが増えている。
 横浜は特に共働きの家庭比率が高い地域でもあり、学童保育(もしくは放課後児童サービス)の需要が急速に高まっている。
 横浜市はこのような需要に応えるべくここ数年来、各小学校ごとに教育委員会が「はまっ子ふれあいスクール」という空き教室をつかった登録制で無料のサービスを整備しはじめている。
 が、従来の学童保育施設も併存しており、これが有料であるため父兄の間で同様のサービスに対する不公平感が高まっている。
 このような問題を解決すべく市議会自民党はこの学童保育事業と教育委員会の「はまっ子ふれあいスクール」の事業一本化を条例化すべく打ち出している。
 これに対して学童保育施設の業界団体とでもいうべき「横浜学童保育事業連絡協議会」は正式に抗議の声をあげた。
 学童保育は福祉であり、はまっ子ふれあいスクールは教育の延長上であって本来の学童保育機能を備えてないというのが言い分である。 たしかにふれあいスクールは夕方6時までしかやっていなかったり、夏休み中は開設していなかったりと官僚的な対応がめだつ。
 しかしこのような問題は非常にテクニカルな話であって同協議会が対する理由は、学童保育業界の利益擁護に他ならない。
 事実上、多くの父母はふれあいスクールは学童保育施設であると誤解しているケースが多く、この点から見ても二つの事業を一本化することに反対する理由は極めて乏しいと考えられる。

 福祉も成長するにしたがって利権化する。学童保育というきわめて福祉的な精神の発露から出発したこの業界が、今では需要の拡大に従って業界団体の利益擁護にしがみつこうとする。
 学童保育業界の目に映っているのは、ユーザーであるところの共働き家庭か、それとも自分たちの懐具合なのだろうか。

1998年10月 執筆
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