論考

Thesis

自治体倒産の時代

恥ずかしながら、岡崎洋知事が9月14日の緊急記者会見に臨むまで、神奈川県財政がそこまでひどい状況にあるということを知らなかった。県政に志しを立てていながら、候補者としてあまりに不勉強であったと反省している。
 今年度神奈川県は640億円の赤字を計上、来年度にはその赤字額が2200億円に達すると予想される事態になっている。破綻の瀬戸際にあるのは何も長銀だけではない、現在、神奈川、大阪、東京など大都市圏の自治体が次々と財政危機に陥りつつある。

 通常、自治体は将来にわたる徴税権を担保しているので完全に消滅するということはない、しかしそれにかわって一般の企業の会社更生法適用にあたるのが、自治省直轄の「財政再建団体」という制度である。財政危機が続き、今後神奈川がこの財政再建団体に転落した場合、起債も制限されるし、県としての福祉や住民サービスなど単独事業はできなくなる。この財政再建団体に転落した都道府県は1960年度に和歌山県と青森県があるだけで、40年近く、この適用を受けた自治体は皆無なのである。

 神奈川県は長洲一二前知事時代の放漫財政の影響と今回の不況のダブルパンチを同時に受けたため他の自治体よりも深手を負っている。特に県債の乱発は借金漬けの財政構造を生みだし、92年から今年度末までに積み上がった県債残高は2兆円の大台にのる勢いである。

 問題はどうやって立て直すかである。
 まず第一に保有する県有資産を売却する道が考えられる。
 現在、神奈川県には様々な県が出資する第三セクターが存在する。合計40カ所、総出資額にして540億円もの規模になっている。たとえば松下政経塾から近い、湘南国際村など赤字が続く三セクには事欠かない状況である。また横浜・川崎と政令指定都市を二つも抱えていることで、システム上の負担を負っている。たとえば両都市の教員と警察官の人件費を負担せねばならず、構造的に人件費が増大するようになっている。さらに教職員の給与は全国でもトップクラスで半分の教員が年収800万円を越え、退職金は3000万円台である。

 財政再建のためには人件費の抑制は絶対避けては通れないと言える。また今回の不況の直撃を受けて法人二税の税収が大きく落ち込んだことが直接の危機につながっていることを考えれば、国と地方との税源委譲問題も重要なポイントである。今後、財政再建団体に転落するかどうかはひとえに景気の回復と死にものぐるいの行政改革にかかっている。

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平島廣志の論考

Thesis

Koji Hirashima

松下政経塾 本館

第15期

平島 廣志

ひらしま・こうじ

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