松下政経塾 The Matsushita Institute of
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1998年9月

塾生レポート

あびこ、なんだかんだ言っても、まだまだ『北海道』が見えていないねぇ…の巻
我孫子洋昌/卒塾生

 
1.はじめに

 9月の月例報告では、あちこちに怒りまくっていたあびこだったが、最後に「怒りついでに、あびこのひとりごと(たわごと)」の中で、中央と地方の視点の違い等についても文句をつけていた。

 "…東京にいる人々の目を覚ますには、どれくらいのショックが必要なのだろう?"

 こう書いて、すっきりした気持ちだったが、実に幼稚なものの見方をしているのだということに後で気づくことになった。常々、あびこは「道民」の立場からものを考え、発言していたとばかり思っていた(塾生のプロフィールでも、「北海道を云々」などと、のん気な顔をして言っている)のだが、HOKTACクラスター事業部に持ち込まれる各地域からの案件に対する接し方も、ついつい気がつかないうちに、というか生まれてからずっとそのままだったのかもしれないが、「札幌市民」として接していたことに気がついた。

 *別に、「札幌市民」であること自体に何も否定的な意味があるのではないことだけは、言うまでもないがはっきりしています。念のため。

2.気がつく前のあびこ

 以前から、「道民」であることを自負していたあびこは、大学在学中や、政経塾に来てからも、東京に対する意識(コンプレックスかもしれない)から、上記のようなコメントをしていた。実際、札幌に活動拠点を置き、日々の暮らしの中で接する新聞等の報道でも、東京発の記事が多くて、少々うんざりすることも、しばしばあった。

 以下に引用するのは、「気がつく前」に、在京のマスコミに勤める友人とのメールのやりとりなのだが、あびこのものの考え方が、いかに単純というか、片寄っているというか、説得力が無いなぁ…というのが良くわかると思われるので載せることにする。

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(あびこ)  それにしても、いつも思うのが、北海道が大雪ならあれほど全国ニュースの時間を割くのかなぁってこと。やっぱり東京が大雨にならなきゃ、ニュースバリューはないのかなぁ?地味に道内の特急も部分運休しているし、国道や道道も通行止めになっているところがいくつもあるけどなぁ。
(友人)  東京で大雨や大雪になると、東京内外に出入りする交通網がほとんどすべてダメージを受けるから、そして被害を受ける人数が膨大だから、だからニュースとしては大きいのかなと思います。
 私も今年の1月の大雪の日、小田急線がストップしたため夜8時に会社を出て、家に着いたの夜中の1時半だったこともありました。(電車が完全にとまり、電車ホテルに泊まった人も大勢いたみたいでした)
 でもこの時のTVニュースをみて、佐賀支局にいる同期(福岡出身)が「東京の人って、雪だけであんなに喜んで大騒ぎするんだね」といってきたのには全身脱力しました。喜んでじゃない! 困ってるんだ!
(あびこ)  今、長銀の事が問題になってるみたいだけど、やっぱり札幌にいると、拓銀がつぶれてひどい状況なのだから、本州も都市銀行が一つ二つ破綻して、北海道の苦しみをみんなで味わえばいいのにって思ってるよ。サカイヤ長官も、「拓銀の破綻で学んだ」なんてこといってるけど、伝わってこないね。
(友人)  拓銀など金融機関の破たん、私も仕事に大いに関係があるだけど、毎日みているとついつい「またか」という反応をしてしまいがちです。山一のときも本当に驚きましたが、破たんしてもそれが市場にどういう影響をもたらしたかというような記事しか読んでいないので、当事者や渦中にいる人たちの反応や、周囲の状況などなかなかつかめません。でも私にとっては、それが一番知りたいことでもあるし、まして記事としても重要だ!と思う

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 報道機関が、ニュースバリューのあるものとして取り上げるかどうかは、どれだけ多くの人間の興味や感心を引き付けるのかということ、つまりどれだけ売れるのかということなのだろう。このように、メディアの抱えている根っこが見えていなかったのに、東京発信の情報ばかりで、面白くない!なんて言っていた自分がそこにいた。

 そこに対して、腹を立てたりしていたあびこも、ある意味では、マスメディアに影響されて発言していたといえるのだろう…と今なら言えるのだが。

3.なぜ気がついたのか?

① 興部町・ノースプレインファームにて
 9月13日から15日にかけて、あびこは興部町(おこっぺちょう)にある、ノースプレインファームに3日間滞在した。そこは、政経塾の先輩もかつて、農業実習に滞在したことがあるところで、「政経塾生です」と自己紹介すると、割とすんなり「あっそう」という感じで迎えられた。

 3日間の滞在中、牛舎の掃除等を手伝ったり、牧草地を見せてもらったり、乳製品を食べさせてもらいながら、久々に広い空と静かな時間の中でいろいろと考えてみた。興部町に滞在中も、「こういう町のことって、札幌で普通に暮らしていると、わからないんだろうなぁ」という気持ちになった。

 この3日間で、いろいろ考えたことや、そもそも自分が何を志しているのかなどについても、思いを巡らせることができたのは、非常に有意義だった。あびこの中では具体的に煮詰まってはいないものの、これからどうするのかということを、じっくり考えるいい時間になった。

② 札幌に戻ってきた後で
 さて、そんなふうにいい気持ちになって、札幌に戻ってみると、再びクラスター事務局での仕事が待っていた。それはそれで、わかっていたことだったのだが、外が、ものすごい大雨になっていた。ニュースを見ると、興部の辺りが大雨に見舞われていて、あびこが帰ってきた国道が、雨で通行止めになっていたり、町の水道管が壊れたために断水になっている世帯が続出したのことだった。
 しかし、その後はどうなったかというと、心配したものの、あまりニュースでは取り上げられてないようだった。新聞の記事を見ても、あまり大きく報道されていない。たしかに、先ほどの報道関係の友人のコメントにもあるように、被害を受ける人数がどれくらい多いのかが、ニュースバリューを決める大きな要素になるのだとしたら、あまり大したニュースではないのかもしれない。

③ あびこ、「日本における東京の存在 = 北海道における札幌の存在」に今更ながら気がつく
 メディアが発信する情報は、道内の場合、どうしても札幌発ということになっているため、札幌にいる人々には、道内の地方の町や村が、どういう状態になっているかがなかなか伝わりにくいのだ。
 はたして、そんなあびこが「北海道」全体をどうこうしたいという資格があるのだろうか?とふと思った。仮に政治家になって、選挙に出るとしても、選挙区だけを見ていればいいのかというと、そうではないだろう。とはいうものの実際に、選挙で当選するまでは選挙区にしか目が行かないのかもしれないが、公約などでは地方議会レベルでも国政に踏み込んだ内容のものを掲げるものもいるから、それくらいに大局を見渡した議論が必要なのではないだろうか。

 やはり、あびこは北海道のことを知ったかぶりになっていたのではないだろうかと気づいた。札幌にいて、北海道を単体として捉える情報にはアクセスが可能なのだが、やはり、「顔が見える」くらいの各地の情報は、そこに行かないとなかなかわかりにくいものだと思った。しかし、これらをたばねていかないことには、「北海道」を正しく認識することにならないのではないだろうか。

4.気がついたあびこはどうするのか?

 たしかに、クラスター事業部の仕事は、各地域との連絡をとりながら進めることが多い。しかも、実際に現地に出かけて行き、それぞれの土地で危機感を持って取り組んでいる人々に出会い、話を聞くことであびこも刺激を受けることが多い。しかし、あくまでも拠点は札幌にあるので、あびこが出かけていく、もしくは来てもらうことで、話を聞くことになる。自分の中に、地方から北海道を眺める視座が育っていないと、いつまでも、自分の言葉にならないのではないだろうかという危惧がある。

 できるだけ、地域の情報を貪欲に吸収しながらも、客観的な視点も持ちつつ、バランスを大事にしながらも、地域で活動する人たちの顔を思い浮かべながら、情報を取り入れて、活動したい。あびこひとりですべてを把握し、すべてに対応していくには限界があるので、そこで、ネットワークの重要性が大事になるのだろう。様々なチャンネルから、広く情報を取り入れ、しかも自分のビジョンも示しながら進んでいきたいと思う。

 「あびこ版 21世紀北海道プラン」の構築に向けて、しっかりとした軸を持たねばならないと感じた。「…ねばならない」「…すべき」という言い方では、いつまで経っても、だれもしないが、その上に、「あびこが」と付くことによって、主語がはっきりする。そうだ、自分がするんだ。

 あびこは広い視野を持ちつつ、札幌でただ情報を待っているのではなく、各地域に実際に行ってこそ、自分の言葉で表現することのできる何かをつかんでくるんだろうと思った。どこから具体的に手をつけるのかは、まだまだ模索している段階だが、とにかく今は動きつづけることで、いろいろと気づくことがあるのだという感覚が芽生えている。

 そんなふうにして、9月が過ぎた。

1998年9月 執筆
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