Thesis
1. はじめに
これまでも月例報告でお伝えした通り,1998年4月から財団法人北海道地域技術振興センター(HOKTAC)クラスター事業部にて研修を行ってきたのだが,政経塾の行事や他の活動の関係で、2月末をもって、今年度のクラスター事業部での活動をいったん終えることにした。
道内の様々な産業の様子や生産現場を見たり聞いたりすることで、道庁をはじめとした行政の姿勢と向き合うことで、また、起業家教育や海外調査に関わることで、いろいろと考え、感じることがあった。それらを拙い文章で書き綴ってきたつもりだが、今回の月例報告では、この1年のクラスター事業部での研修を振り返りながら、次年度の研修の中で、あびこに課せられていることについて考えてみたい。
2. クラスター事業部の仕事全般を振り返る
2月末に、今年度を振り返るイベントが2つあった。「産業クラスターシンポジウム」と、「北の起業家ファーム」参加者発表会だ。日程の都合がつかず、どちらも同じ日に開催となり、クラスター事業部は大忙しだったのだが、どちらも有意義なものだった。
シンポジウムでは、98年度にビジネスプラン推進モデル事業に採択された5つのプロジェクトについての発表と、産学協働にまつわる問題について論じ合うパネルディスカッションがあった。
プロジェクト発表は、そこに参加している企業の方が、プロジェクトがどのようにして生まれ、どういう組み合わせ(企業群および研究者のチーム構成)になっているのか、セールスポイントはどこにあって、どういう戦略で開発していくのかということについて熱心に発表された。それぞれ、ユニークな組み合わせで、しかも、北海道がこれから優位に立つことの可能な「産業クラスター」の芽として期待できるプロジェクトが、この1年で立ち上がっていることが確認できた。
パネルディスカッションでは、プロジェクトを進めるにあたって、様々な問題点もあるが、一つ一つ粘り強く課題を解決することを通して、クラスター事業部にもノウハウが残り、今後の産学協働プロジェクトを進めていくことができるようになるのではないだろうか。といったことが話し合われていたようだ。
「話し合われていたようだ」と書いたのには訳がある。別にあびこがサボっていたのではなく、この時間はすでに会場を後にして、「北の起業家ファーム」参加者発表会の準備に取り掛かっていなければならなかったのだ。
「北の起業家ファーム」発表会では、応募当初「起業への思い」が大半を占めていた参加者が、この研修を通して得られた知識をもとに、また彼らが独自に研究・調査したものを取り入れることにより、ビジネスプランそのものが向上し、発表会自体も充実したものになった。
発表会には、道内での起業関係者も出席し、彼らの知己からの意見や、長い間参加者を見守っていた講師からの言葉も示唆に富んだものとなり、参加者自身も得るものが大きかったと思われる。発表会を含め、この研修では、あびこ自身も得るものが非常に大きかった。日程の調整、参加者の状況把握、講師のアレンジなど、今までは他の人がこういう苦労をしてよういしたものに、参加する側だったのだが、まったく反対側で動くことで感じることもあった。端的なものを一つ述べると、「締め切りまでに書類を出す、あるいは連絡すること」は、ついつい遅れがちになってしまうあびこは、それまでそれほど重要なものとは考えていなかった。しかし、この発表会を開催するにあたって、参加者から事前にビジネスプランを提出してもらうということになっていたので、それが届くまで心配するやら気を揉むやら…という感覚は、実際に「もの」を受け取る立場になって初めて理解できた。
この「北の起業家ファーム」の参加者が、今後どのように活動するかどうか、また、どれくらいクラスター事業部がサポートできるかが、この事業が成功だったのかそうでなかったのかが判断されることになるのだろう。その意味では、今年度はまずまずだったと感想を持つこともできるが、「終わりは始まり」ということなので、この2月から本当の「ファーム」がスタートしたことになったのではないだろうか。
3.来年度への課題
99年度は、引き続きHOKTACクラスター事業部で研修を行うことになった。98年度にあびこが感じたり、考えたことを今後の活動(卒塾後)につなげるためにも、もっと「クラスター創造事業」を深めたいと考えている。いろいろと悩んだのも事実だし、考えを巡らし、相談に応じてもらった結果、こういう結論になった。
幸い、クラスター事業部の皆さんも、あびこが引き続き一緒に仕事をすることを歓迎してくれている。初年度の立ち上げにかかわったスタッフの一人として、1年の流れをつかんだつもりだが、いかんせん、動きが早いので、1年のキャリアがあったとしても「だから安心」ということはない。クラスター事業部にとっても、かなり厳しい1年になるのだろう。
あびこがよく口に出す「北海道にこだわる」ということについて考えてみたい。…こだわるからには、北海道への思い、それらが客観的に裏打ちされる数値(データ)、どういう未来予想図を描いているのかを持ち合わせて、いつでも、どういう相手にも伝わるように準備できた状態にしていかなければならないだろう。
そのためには、もっとあびこの「感度」を高めていきたい。積極的に現場に出かけ、もしくは現場で考え、感じることで、問題点や課題をつかみ、対策を打ち出せるようになりたい。98年度にも増して、もっと活動の幅を広げなければならないと考えている。そして、活動して感じることに加え、しっかりとした数値によってそれらをサポートできるように心がけていきたい。
Thesis
Hiromasa Abiko
第18期
あびこ・ひろまさ
北海道下川町議/無所属
Mission
地域振興