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1998年7月

塾生レポート

あびこ、海の日に4年ぶりの活躍のチャンスを奪われるの巻
我孫子洋昌/卒塾生

 
 あびこの研修先の、HOKTACクラスター事業部は、以前にも増して抱える案件が増加の一途をたどり、あびこ自身もかなり忙しくなってきたのだが、今月の報告では、札幌に久しぶりに住む住民として感じたことをつづることにしたい。

 久しぶりに札幌を拠点に活動することになって、早くも4か月目が過ぎた。7月を迎えるにあたって、かなり前から楽しみにしていたことがあったのだが、非常に残念なことにあびこが楽しむことはできなかった。それは、毎年夏休み直前の日曜日に開催されている「連合町内会親睦ソフトボール大会」だった。中学生以上が参加でき、ホームランを打ったり、上位入賞すると、酒屋から賞品が出て、町内会の人たちとも年に1度じっくり話ができる、あびこがここ数年では、唯一参加してきた町内会の行事なのだ。

 約16の「町内会チーム」(最近はマンションもできたので、マンションでチームを結成していた頃もあった)が、トーナメント方式で戦い、あびこの住む町内会は、戸数が少ないので人数集めこそ苦労するのだが、ひとたび集まると、そこそこ勝ち進み、準優勝を勝ち取ったことも数回あった。あびこは、中学生の頃からレギュラーとして毎年のようにホームランを打ち、自分で言うのも変なのだが、我が町内のキープレーヤーとしての地位を固めつつあった。一昨年などは、実家から「(ソフトボール大会があるのだけど)いつになったら帰省するのか会長(当時)に聞かれたのだが」という電話もかかってきたほどだった。

 そういうわけで、今年久しぶりに実家に戻って活動することになって、この大会を待ち望んでいたのだが、直前になって、「うちの町内会は出場を辞退したらしい」ということを耳にした。「まさか」と耳を疑ったが、どうやら昨年度も人数不足のために出場を辞退していて、今年の町内会長も、ほんの2,3人に出るのかどうか聞いたところあまり乗り気ではないという感触を得たために、出場を辞退したとのことだった。ふとした機会に、会長を見かけたが、たしかに高齢の方で、住民が家に戻ってくるような時間帯(夜間)に、一軒ずつ歩き回って、出場を依頼するのは厳しいだろうという感じがした。

 そういえば、町内会や、マンションの自治会という類の活動に関しては、実家に戻ってもたまに回覧版がくる程度で、あまり気にも留めていないのが実状だ。しかも、休日に実施されることが多い掃除や、運動会、ハイキング、カルタ大会などは、どちらかというと家にいる時間の長い人で、そういう活動に興味がある人や、義務として参加している町内会の役員が顔を出しているといった状況にある。実際には、役員の職に就くのも、順番が回ってきて仕方なく…というのが、どこにでもある話なのではないだろうか。

 さらに、今年から「海の日」が休日となって、運悪く連休となり、その週末を目当てに家族旅行に出かける世帯も多かったのが災いした。役員の側としても連休くらいは休みたいのが人の情だろうし、せっかくの家族団らんのひとときを雨が降れば中止になってしまうような行事のために空けておけというのは気が進まないのだろう。その気持ちもよく理解できる。事実、今年の大会は、先述した16町内会によるトーナメントではなく、出場辞退した町内会が多かったため、8チームによるトーナメントだったそうだ。そうなると、ソフトボール大会以外の各種イベントにも、どれくらいの働き盛りの人間が参加しているのか疑問を持たざるをえない。町内会費を納めていても、それがどのように使われているのか、役員にでもならなければ、まるで知る由はないのが実態だろう。

 選挙に出る、出ない、知っている人が出ている、そうでない、投票に行く、行かない…というように選挙というものを通じて、住民の参加が低いだの無関心だのという議論は、よく耳にする。しかし、身近なコミュニティを運営する団体、組織(こういう場合、PTAだとか、大学の自治会も同類だろう)を構成するメンバーが、まるっきり受動的に、しかも仕方なく順番が回ってきたからその役を引き受けたりしている実態はなんだか、しっくりこない。

 うまく表現できないのだが、「カネさえ払っておけば、誰かがやってくれるのだろう」という意識が特に最近強いような感じがする。その一方で、前もって通知されている時には無視しておきながら、自分の生活に直接関わってくると文句をいう人間が増えているのも実状だ。あびこが通っていた小学校の周囲は畑に囲まれていたのだが、今ではマンションが立ち並んでいる。年に一度の運動会の時に、スピーカーから流れてくる音楽に苦情を言う人がいるために、最近では、音量を絞って運動会を開催しているということだ。

 小学校が建つ前から住んでいる住人は文句を言わないのに、後から移り住んできた住人が、小学校の近くに引っ越してくる時点でわかりきっていたようなことにも文句を言うのにはびっくりした。同様に、仕事でお世話になっている人がこぼしていたのだが、この夏休みに実施されているラジオ体操の行われている公園のそばの住人が苦情を言ってきたとのことだ。しかも、そのやり方が何ともいえない。直接町内会の役員と交渉するのではなく、なんとラジカセが設置されるベンチの上に「ラジオ体操の音がうるさくて眠れないので、止めてほしい。」と張り紙があったのだそうだ。

 コミュニティ意識というか、これからの時代は、ネットワークというか人のつながりがますます重要になっていくと思うあびこの方が間違っているのだろうか。逆に、こんなにみんなが無関心で興味の無い分野にこそ、あびこの活躍できそうな場があるのではないかと、今年数少ない、地元での活躍のチャンスを奪われて、短い北の夏の盛りを過ごしている。

1998年7月 執筆
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