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2022年6月

塾生レポート

「若者の政治離れ」に関して~参院選候補予定者のもとでの研修を通じて~
中山真珠/卒塾生

 

 「政治に無関心でいられても、無関係ではいられない」
 このような言葉があるが、依然として日本の有権者、特に若年層の政治への関心は非常に低い。しかしながら、すべての年代が住みよい社会を実現するためには、それぞれの声がバランスよく政治に反映される必要があり、それには若者の政治離れという課題と向き合わなければいけない。本レポートでは、現状の課題について分析したのち、若者の政治参画を促していくための方法に関する考えを述べていきたい。


1. はじめに

 近年、若者の政治に対する関心の低さが問題視されている。平成30(2018)年度に内閣府が実施した「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」[1]によると、「今の自国の政治にどのくらい関心がありますか」という質問に対し、「非常に関心がある」又は「どちらかといえば関心がある」と回答した者の割合は平成25年度の調査時よりも6.6ポイント低い43.5%であった。この割合は、同調査での諸外国の若者の割合と比べて低く、実際の投票行動を見ても、10代、20代の投票率は40%前後とやはり低い数値に留まっている。
 かくいう私も、現在政治の道を目指している立場でありながら、恥ずかしいことに政治への関心というものはつい最近までほとんどなかったといっても過言ではない。私は現在27歳であるが、政治に関心を持ち始めたのは22歳、大学3年生の頃だ。たまたま身近に子どもの貧困という社会課題に向き合うきっかけがあり、そこで政治への無知がいかに危ういことかを初めて自分事として自覚しただけであり、政治に関してはまだまだ勉強しなければいけないことばかりだ。しかし、そんな実体験を持つ私だからこそ、ほんの小さな関心のきっかけ一つで、その後の行動は変わり、行動を起こす若者が増えれば社会は大きく変わると信じている。
 そこで研修最後の一年である今年度は、参議院選における新人候補者のもとでのインターンおよび、政策シンクタンク「構想日本」でのインターンという二つの研修を主軸に、かねてより私が掲げている「やさしい(=優しい/易しい)政治」の実現において最も重要な目標の一つである若者の政治参画について考えることにした。
 今回のレポートでは、現在行っている参院選候補予定者の下での研修のなかで見えた若者の政治的関心についての考えをまとめていきたい。


2. 「若者の政治離れ」を考える

 前述した通り、若年層の政治的関心が低いというのは事実である。しかしながら、こうした事象に対し若者に責任を追及するのは少し違うだろう。若者が政治に関心を持つことができないのは、社会全体の風潮として政治に対してマイナスのイメージが強いことが大きく起因しており、このことに向き合っていかない限り、若者はおろか国民の政治離れを食い止めることはできない。
 三船(2012)によると、1990年代後半以降、日本における政治不信が急速に拡大している[2]。その背景にはその時々の汚職事件といった時代効果や、家庭を支える責任の強さといった年齢効果など複合的要因が関わっているが、こうした効果に変動はあるもの、一定の水準で政治体制不信への深化が続いており、個々の政権に対してではなく、そもそもの政治体制に対するかなりの程度の政治不信が日本社会の底流に存在し続けるという。
 若者の政治参加を促すために、教育やメディアとの連携など様々な取り組みが行われているが、この政治不信の払拭こそ、難易度が高くても放っておいてはいけない課題ではないだろうか。
 また、選挙という切り口から考えたときに浮かび上がる仮説として、政治活動や選挙運動をよく思っていない人が多数派であり、その影響が政治そのものへのマイナスイメージにつながっているのではないかという考えが挙げられる。
 筆者はこれまでインターンとして、地方選挙に一度、国政選挙には今回を含めて三度の計4回の選挙に関わった経験がある。選挙において必ず候補者が行う街頭演説。そのたびにいつも感じるのは、候補者と有権者の間にある温度差である。
 有権者は政治活動や選挙運動についてどう思っているのか。この点を無視した活動を展開すれば、当然有権者との距離は縮まらないばかりかかえって遠ざけてしまいかねない。通行人の表情を見ていると、街頭演説を行う候補者に対し、「うるさい」「邪魔」と感じている様子がうかがえる。実際に、候補者や一般のボランティアを含む運動員が、道行く有権者に怒鳴られたり、政策ビラを渡そうとした手をはたかれることも少なくない。
 有権者は通行の妨げである街頭演説に不快感を覚え、耳を傾けなくなる。そうすると候補者は、なんとか耳を傾けてもらおうとスピーカーの音量を上げる。「どうせ誰も聞いていない」と割り切り、演説の内容も名前の連呼ばかりになる。それがさらなる選挙のマイナスイメージにつながるという悪循環になっているように思えてならない。まるで童話の「北風と太陽」のようだ。この悪循環には、他にも問題点がある。それは、せっかく政治に関心を持ち、選挙に関わってみようとするボランティアの人が罵声を浴びるなどで参加意欲を失ったり、街頭演説を聞いてみようとする有権者が足を止めてみたものの名前の連呼ばかりで呆れるといったシナリオが想定される。型通りの選挙を続けていることが、若者を中心とする有権者の政治的関心低下につながっているという点をより多くの候補者が意識すべきではないだろうか。
 私が現在、インターンとして関わっている30代男性の新人候補者は、特に若年層を意識した情報発信の方法としてソーシャルメディアに力を入れている。候補者の人柄を知り、身近に感じてもらうためにあえて飾らないカジュアルさを前面に出しており、方法もブログやSNSに限らず、生の声を聞いてもらうためにポッドキャストを導入したり、支持者やボランティアの方とのコミュニケーションツールとしてLINE公式アカウントを活用するなど、日々、試行錯誤を繰り返している。最近では、オンライン上の意見交換会やYouTube等での動画配信を行う政治家もかなり増えてきている。こうした既成にとらわれない自由で意欲的な発信活動こそ新しい時代に適応した選挙の在り方であり、若者を巻き込むきっかけになる。


3. 若者と政治の距離を近づけるために

 「若者の政治離れ」の原因について、上記のような課題分析を行った。それでは、具体的にどのような方法で若者と政治をより近づけることができるだろうか。若者の政治参画を促進するためには、大きく3つの要素が必要だ。
 一つ目の要素は、政治を身近に感じるためのコネクションである。若者は政治に関心がないという表現は、厳密には正しくない。正確には政治が身近に感じられない、自分とのかかわりを感じにくいのではないだろうか。私は、高校時代に1年間アメリカに留学をしたことがあるが、当時強く感じたのは、日本には身近に政治に関わるきっかけが極端に少ないのではないかということである。私が渡米した2012年は、ちょうど大統領選が行われていた。クラスメイトが頻繁に大統領選について話していたり、ホストマザーが勤めていた大学ではスナックを片手に研究室に学生が集まり、まるでお祭りやイベントのように開票速報を見るという日本の高校生である私にとっては異様な光景を目の当たりにした。日本では、クラスメイトと選挙はおろか、政治など一度も話題にしたことはなかったし、真剣に開票速報を見たのは、社会科の先生に「歴史的な選挙になるかもしれないから見ておきなさい」と言われた2009年の政権交代選挙ぐらいだ。つまり、日本の有権者、特に若年層には政治とのつながりを感じられるコネクションが少ない。そのためには前述のようなSNSを用いた候補者の情報発信活動のほか、ワンページで複数の政党の政策を比較することができるサイト、グラフィックを用いたわかりやすい情報ツールなどが有効だ。
 二つ目に必要な要素は、意思決定における成功体験である。若者の低投票率の背景には「選挙に行ったところでどうせ変わらない」という諦めや閉塞感、無力感があると言われており、投票行動や社会運動で世の中が変化するという実感を持つためには、小さい頃から身近な社会の意思決定に関わる経験を通じて、徐々に政治リテラシーや社会参画意識を育んでいくことが重要である。昨今の主権者教育においては、生徒会選挙などを通じて意思決定のプロセスを学ぶというような取り組みが行われている。これは、政治参加だけに限らず日本の若者に特徴的な自尊心の低さに対するアプローチとしての効果も期待できる。物事が自分たちの知らないところで決まっていくという置き去りの状態をなくし、彼ら自身の意見が意思決定に反映されるという経験を積むことによって、自分たちの存在意義、すなわち自尊心も高めていくことができるのではないだろうか。
 また、イシューに特化したロビイング活動なども結果が視覚化でき、効果を実感しやすい方法の一つだ。環境問題でも、若者の権利でもなんでもよいが、自分自身が関心を持っている分野に関して、議論をしたり、署名を集めるなどして法的な整備を求めるといったアクションも一つの成功体験となるだろう。
 三つ目に、政治を自分事化するための原体験が必要だ。これがもっとも難しく個人の経験に大きく左右されるため、教育などで一律的にできることではないが、「政治に無関心でいられても、無関係ではいられない」という言葉のとおり、政治がいかに自分たちの暮らしと密接であるかを理解するためのきっかけ=原体験さえあれば、自然と政治への関心は高まっていく。
 この三つ目の自分事化については、7月開始のシンクタンク構想日本での研修にてより詳しく学んでいく。次回のレポートでは、この自分事化という考え方に迫ってみたい。



[1]平成30年11月及び12月に日本を含めた7か国の満13歳から満29歳までの男女を対象に実施したインターネット調査。
https://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/ishiki/h30/pdf-index.html
[2]政治不信の拡大:研究:Chuo Online : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
https://yab.yomiuri.co.jp/adv/chuo/research/20121122.html
2022年6月 執筆
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