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2021年2月

塾生レポート

オンラインフォーラム「福島から緊急提言!まちづくりのためのコミュニティ施設経営」を振り返って
馬場雄基/卒塾生

政経塾初の動画収録配信型フォーラム。新型コロナウイルスの感染拡大だけではなく、福島県沖地震の影響により、予定していた内容を変更してつくりあげました。何とか無事に形にすることができたのも、パネリスト・実行委員・関係者の皆さまのお力のおかげです。この場を借りて厚く御礼を申し上げます。誠にありがとうございました。

 

 2021年2月20日(土)14:00、申込者230名に収録した動画を掲載したホームページのURLをメールにて送りました。それは、1年以上前に会場(研修先:アオウゼ[1])を予約した際に想定していた内容とは、全く異なる形でした。

1、変更に次ぐ変更

 当初は、会場参加者200名に直接伝えるスタイルで計画をしました。しかし、昨年から日本でも猛威を振るい始めた新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、会場参加者数を定員の半分100名に限定し、一部をオンラインにして進めていくこととしました。パネリストや実行委員の協力もあり着々と整ってきていたところ、2020年12月になっても感染状況が落ち着かず、政経塾から会場参加は完全に見送るようにと通達があり、急遽パネリストと会場から中継する形へと変更しました。リアルの場で伝えたい気持ちもありましたが、オンラインだからできることの知恵を出し合い、一つの番組をつくろうと一致団結して準備にあたり、1月末に台本の大筋が完成しました。
 2021年2月13日(土)、深夜に福島県沖で震度6強の地震が発生しました。人的被害こそなかったものの、研修先のアオウゼ含めて福島県内は大きな被害がでました。フォーラムまで残り1週間。終わらない復旧作業に、次々と準備しなくてはならない被害報告、さらには気象庁が1週間は余震への警戒を怠らないようにと伝えている中で、「今、自分は何をすべきなのか」悩みました。パネリストや実行委員の中でも大変な状況になっている方はいました。一方で、「当日は会場に行くよ」と力強く答えてくださる方も多くいました。14日(月)夜、実行委員の一人に、フォーラムについてどうすべきか答えがでないことを打ち明けると「あなたの決断をみんなが応援する。思うようにやって。」と伝えてくれました。目の前が開けた感覚になり、「今は、全員が最も大切にしたい人と現場の近くにいてほしい」と腹をくくることができました。それと同時に、コロナ禍になってオンラインの可能性を探ってきたからこそ、「今だから福島から伝えられることがある」と強く信じました。改めて、与えられた状況で最善の方法を考え、パネリストにそれぞれの現場からオンラインで参加いただく方式へと修正、また参加方法も生中継から動画収録の配信へと変更し、見たい人が好きな時に、好きな場所で、好きな人とご視聴いただけるよう環境を整えることにしました。変更に次ぐ変更で、関係者は混乱したに違いありません。復旧作業と同時進行で行わなくてはならず、時間も余裕もありません。実行委員総出で取り掛かり、パネリストや実行委員への説明も、私ではない方にお願いをしなくてはならない状況でした。それでも地震が起きてからも途絶えることのない申し込みと、次々と届く応援メッセージに背中を押されながら、フォーラムの台本の修正やパネルディスカッションの準備など、当日の朝まで作業は続きました。20日(土)午前9時30分、収録開始。地震の後、全員で顔を合わせたのは初めてでした。リハーサルも行わずに一発撮り。終えたのは13時。急ピッチで配信体制を整え、14時に申し込んでくださった230名へメールをお送りし、動画を公開しました。

2、福島県内屈指のパネリスト

 私が、コミュニティ施設経営に携わる中で最も課題であると感じたことは、目的として同じ世界を共有できる施設がたくさんある中で、置かれている立場からそれぞれがその場の取り組みで終わってしまっていたことです。台風19号、新型コロナウイルスなど有事に関する情報も施設ごとに差があり、それぞれが独自に対応していました。この状態では、仮に自分の現場とするコミュニティ施設に変化をもたらすことができたとしても、そこだけの取り組みで終わってしまい、まち全体へ波及することは難しい状況です。だからこそ、すでに数々の実績をお持ちで、産官学それぞれの立場のコミュニティ施設経営者のお知恵をお借りして、立場を越えて一つの方向性を共に導き出し、共に実践していく機会をつくる必要があると考えました。お願いしたパネリストの皆さまは、その都度変更する内容も快く引き受けてくださり、感謝の言葉もありません。
 第二部のパネリストによるプレゼンテーションでは、矢吹稔氏(元吉井田学習センター館長)は公設公営[2]の立場から、「多様な担い手とつながる結び機能こそ公民館にあり、それが住民にとって安全・安心の地域づくりとなる」と、地域防災キャンプや避難所経営、帰宅困難区域の避難者との交流事業、高校生とのコラボ企画などの事例を紹介いただきました。
 三部香奈氏(co-ba koriyama代表)は民設民営[3]の立場から、「立場や組織を越えてこそ共創こそイノベーションであり、実践事例を築く伴走者となる」と、スペシャリスト女子会や福島VRプロジェクトの事例を紹介いただきました。 青砥和希氏(コミュニティカフェEMANON室長)も民設民営の立場から、「学生のやってみたいを応援し、親・先生以外の大人と出会い、交流を通して居場所を築く」と高校生を通して地域づくりを行う事例を紹介いただきました。
 福島市高校生フェスティバル実行員のお二人からは、「コロナ禍という有事にイベントを実施できたのは、仲間や学校だけではなく、共催してくれた会場(アオウゼ)職員やその他関係した大人の協力があったから」(山川蒼奈さん)、「あらゆることに柔軟に対応できる施設が、学生にとって使いやすい場所となる」(佐久間裕貴さん)と、学生の立場から教えていただきました。


(図1)第三部パネルディスカッションの様子

3、パネルディスカッション

 第三部のパネルディスカッションでは、福島県沖地震による被害状況を各現場から伝えていただきました。過去に学習センター(公民館)で避難所設営をしてきた矢吹氏が「有事対応ができるコミュニティ施設は、日ごろから他の機関と連携している」と述べられ、実際に地区の小学校と連携して運営してきた事例を紹介いただきました。
 コミュニティ施設といえども、公設公営・公設民営[4]・民設民営のように様々な立場があり、それぞれの課題を下図のように整理しました。


(図2)各コミュニティ施設の特徴 筆者作成

 また、230名の申込者からいただいた事前アンケートの結果(図3参照)をもとに、コミュニティ施設の課題を捉えていくことにしました。学生の表現の場としての期待値が最下位となったことについて、学生のお二人は「そもそもコミュニティ施設にこうした機能があることが認知されていない」「今年度一緒に行ったイベントを通してコミュニティ施設をはじめて知った」など、自分自身の体験談から数字は納得できる一方で、「学生の表現の場としての利用は大切」と期待を述べました。全員で、コミュニティ施設の役割は地域をつくるハブ拠点ではないかと確認し合うことができました。


(図3)コミュニティ施設に期待すること フォーラム申込者への事前アンケート

 続いて、財政難を迎える中で、コミュニティ施設に求められる経営について考え、意見を出し合いました。
 三部氏「公と民が、それぞれの立場の長所と短所を知り、お互いを補い合う」
 青砥氏「古いストックを活用し合うことで生み出すこともできる」
 矢吹氏「地域のニーズに合わせた体制に、常に変化をしていく」
 一方、学生のお二人からは「きちんと経営が成り立つのか疑問が残る。コミュニティ施設の事業に興味があるものの難しそう。」と感想を頂きました。利用する方が意見を伝えてくれることが最も身近な経営参画であり、老若男女・個性分け隔てなく一緒にコミュニティ施設を作っていこうとまとまりました。


(図4)福島市公共施設の地区年度別整備状況

4、今後について

 産官学の垣根を超えて集ったパネルディスカッションにて、やはり立場こそ違っていても目的は「まちづくり」という点で同じ方向性を向くことができました。同じ目的を持つコミュニティ施設がこれからを共創することができれば、お互いの悩みを希望に変え、一歩でも二歩でも先に前に進むことができると確信を持ちました。
 今回のフォーラムが新型コロナウイルスや地震の影響を受けて何度も予定を変更したように、今後もいつ有事となるかわかりません。加えて、私たちは財政難や地域の疲弊という大きな課題と向き合っていかなくてはなりません。今、私たちは岐路に立たされているのです。人の力によって力強いまちづくりを実現するために、今後も継続的に関係する皆さまと協力して実践していきたいと思っております。
 ご視聴いただきました皆さま、パネリストの皆さま、共催・後援・協力を賜りましたご関係者の皆さま、また開催にあたり様々な形でご支援くださった皆さまに対し、心より御礼を申し上げます。今回のフォーラムは、私にとってどんな大きな変化があったとしても想いをもって取り組めば必ず道は拓けてくる、みんなと一緒に取り組めば一人では到達し得ない場所までたどり着くことができる、と気付かされた挑戦となりました。

 ここでの経験を糧に、卒塾後も故郷福島のために尽くして参ります。そして一人でも多くの方と想いを共有して、共に歩みを進めていきたいと思っております。今後ともご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。

視聴動画はこちらから https://yuki-baba.jp/kinkyuteigen/

脚注

1.アオウゼ…福島市のコミュニティ施設。2010年に設立され、2019年から指定管理制度が導入。筆者は2019年4月から事業統括コーディネーターとして、現場密着型の研修を行ってきた。
2.公設公営…国や地方公共団体が施設を設置し、その施設運営も国や地方公共団体が行うこと。
3.民設民営…民間の企業・団体が施設を設置し、その施設運営も民間の企業・団体が行うこと。
4.公設民営…国や地方公共団体が施設を設置し、その施設運営を民間の企業・団体に代行させたりすること。

2021年2月 執筆
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