松下政経塾 The Matsushita Institute of
Government and Management

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1998年12月

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「地方分権の政治小説」が出版される
甲斐信好/卒塾生     田辺信宏/卒塾生

『新駿河市200X年』という政治小説が出版された。小説の舞台となっている地元の新聞には伊藤元重東大教授の「素晴らしい。あっという間に読んでしまった」という絶賛の声が掲載された(静岡新聞10月18日朝刊「論壇」)。著者の田辺信宏塾員(静岡県議 松下政経塾第6期生)に執筆の背景を聞いた。

 
――
なぜ小説を書こうと思い立ったのですか?
 物語は今から10年後、静岡・清水市そして周辺の自治体が合併してできた「新駿河市」が舞台です。小説にしたのは自由な発想で既存の枠組みをとりはらって考えてみたかったのと、広く一般の方にも読んで欲しいからです。最初は提言集も考えたのですが、それではなかなか広く読まれない。静岡・清水合併に取り組むなかで、この問題を議論する仲間と地域で接する人との温度差を感じていました。「合併してどんなまちになるの」と市民それぞれの立場で論議に参加してもらえればと思います。

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今後の都市のあり方や、住民参加、政治家の駆け引きや恋まで(笑)楽しんで読みましたが、全編を通じて「地方分権とは何だろうという」メッセージを感じました。
 日本の課題です。舞台は静岡・清水合併ですが、国と自治体の関係を問い直すつもりで書きました。キーワードは「自己責任」、つまり自分のまちは自分でつくる、ということです。

――
そこで本書には2つの新しいプランが出てくるのですね。
 そうです。一つが第3セクターでもPHI(民間主導の社会資本整備)でもない新駿河方式による新交通システム。もう一つが自治体の判断で起債を行い、しかも地方債の引き受け銀行の範囲を都市銀行、外資系銀行まで広げる静岡駅地下空間の整備問題です。あえて最もドラスティックな提言を出しました。伝えたかったことは、どうしたら自分たちの力でまちを変えて行けるかです。でも、政策を書こうとするとストーリーの面白さにつながらない(笑)。そのあたりに苦労しました。

――
本書ではリアルな政治の世界も描かれてますね。
 政治家生活苦節7年の実感です(笑)。政治家は、世の中を平和に治めて安寧をもたらすという「仏の顔」と、策謀や計略を用いて人と争い権力を得るという「鬼の顔」の2つを持っています。それがメディアを通じると、面白おかしく報道され、ただの「サル山のボス争い」になってしまう。政治家として自らの信じる価値を実現しようと、時に手を結び、時に対峙して悪戦苦闘する政治のダイナミクスを描きたいと思いました。

――
そこで「小善は大悪なり、大善は非情に似たり」という言葉を紹介していますね。
 私はどんな訴えでも聞くことにしています。しかし実際にやれることとやれないこと、やってはいけないことがある。人情の部分では忍びないけれどやらねばならぬこともある。その中で悩んで来ました。結局、政治家一人一人の自己責任ですね。

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その他、政治の世界でのきらっと光る言葉がたくさんありますね。
 最年少議員は耳年増になります(笑)。いつも小さなメモを持って、先輩の印象的な言葉を書き取っています。

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英国の民間援助団体OXFAMが登場したり、実際に奥様が登場人物と同じ放送記者だったことなど松下政経塾卒業生としての田辺さんの歴史もちりばめられている印象を受けました。
 小説を書くとどうしても私小説になってしまいます(笑)。

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ありがとうございました。続編を期待しています。

※『新駿河市200X年』は静岡新聞社刊、1600円(税別) 書店にない場合には注文すれば手にはいります。

1998年12月 執筆
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