Thesis
松下政経塾の卒業生は政治、ビジネスの世界だけでなく、国際交流の分野でも活動している。ODA・NGO・国際機関・自治体などをつなぐ仲介役として活躍する樋口博康塾員(松下政経塾第4期生)に話を聞いた(甲斐信好)。
今年4月24日に総理府が発表した「外交に関する世論調査」では、ODA(政府開発援助)など開発途上国への経済協力について、「やめるべきだ」と「なるべく少なくすべきだ」という縮小派が22%(前回の調査に比べて6.1ポイント増)に達し、過去最高となった。8割近くの人が依然として肯定的な見方をしているとはいえ、日本の景気悪化を反映して国民が経済協力に消極的になっていると報じるマスコミもあった。NGO(非政府組識)も近年は資金集めがより難しくなっている。日本の経済状況が厳しいことは確かだが、世界との相互依存関係の中で経済大国として日本の責任は重大であり、また開発や貧困、人口、難民、環境といった地球的な問題は待ったなしだ。
私が財団法人国際協力推進協会(APIC)に勤務して12年になる。APICは日本の官民による国際協力を推進するため、外務省経済協力局所管の財団法人として1975年に設立され、主にODAなど日本の国際協力に関する情報提供や調査・研究、会議などを行って来た。ここ20数年に渡り日本の国際協力が量・質両面で充実するにつれ、最初は小規模であったAPICの仕事も急速に拡大して来た。
APICに入ったきっかけは、国際協力を志望して松下政経塾に入塾した私に、先輩塾生が松本洋氏(現在、財団法人国際文化会館専務理事)を紹介してくれたことに始まる。松本さんは人間に対する強い関心と温かさを持って国際協力に全精力をかけてこられた方で、この分野のわが国における第一人者として多くの人材を育てて来た。私も松本門下生として様々なことを教えられたが、中でも「国際協力は3つの輪の連携プレイである」という言葉が強く印象に残っている。3つの輪とは政府、企業、NGOであり、最近はこれに地方自治体や国際機関が加わり「5つの輪」の連携が大切となっている。私もAPICでこの5つの輪の情報交換や事業提携、資金協力などを円滑にするような仲介役を務めたいと思う。
国際協力について12年前には、情報が不十分であったり偏っていたりで、一般の人にはわかりにくい面も多かった。ODAやNGOという言葉もあまり知られていなかった。現在では情報公開が進み官民に渡る活発な議論もあり、この分野に興味を持つ人は多い。JICA(国際協力事業団)の募集に定員をはるかに上回る学生が応募するなど若者の関心も高い。NPO(非営利団体)法が成立し、活動の一層の活発化が期待される。より多くの人に国際協力を理解し、参加し、支援してもらうためにAPICでは港区広尾に「国際協力プラザ」を開設し、さまざまな情報を提供している。 「国際協力について知りたい、自分の出来ることを探したい」という人は是非一度訪れて欲しい。また、地方自治体と協力し、全国に「国際協力プラザ・コーナー」を展開している。日本が国際社会で重要な役割を果たせる歴史的な機会として、また私たち一人一人の自己実現の場として、今後も国際協力に真剣な目を向けていただけるよう、私も活動を続けていきたい。
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