松下政経塾 The Matsushita Institute of
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1998年11月

塾報

理性と温情の間で
岡田邦彦/卒塾生     甲斐信好/卒塾生

 19期生の米国研修に(10月号に詳細を掲載)岡田塾頭が同行した。初めての米国滞在を通じて感じた日米の違いを語ってもらった。

 
 米国は相対的に衰えたとはいえ、政治力、経済力、軍事力、文化力のいずれをとってもいまだに世界一の水準を保っており、世界中に絶大な影響力を持っている。米国は西欧文明の結晶であり、科学技術文明の最先端の「人工国家」(司馬遼太郎)である。人間の可能性を極限まで追求する一方で、自由を最大限に認めようとする。この国の将来を問うことは、人間の理性と欲望の将来を問うことでもある。
 そんなことを考えながら初めて訪れた米国の入国審査に臨んだが、遊園地の切符拝見ほどの時間もかからないあっけなさだった。税関の申告表には「2分以内で記入できるようになっている。文句があれば○○まで」と記されていた。
 テレビ番組もラジオ番組もバラエティーに富んでいた。独・仏・スペイン語だけでなく、アラビヤ語、インド系対象のものまであった。
 ブルッキングス研究所、ファニー・メイ(住宅金融会社)を訪ね、共和党の広報部の説明を聞いたが、説明は単純明快、かつ面白い。  しかし、一方で「待てよ」と思う。サービス、製品は、日本人の目から見ると雑な印象をぬぐえない。家具、住宅、電器製品、自動車など、ちょっと見はいいが、よく見ると粗っぽい。ホテルでフロントの女性がバウチャーを誤って破っても「Oh, No!」でおしまい。しかも、一流ホテルであるにもかかわらず、ドアの立てつけは悪く、枕元の灯りはつかなかった。経済が好調といっても、おそらくバブルによるもので、金融や情報関連産業など突出したものを除けば、日本的な痒いところに手が届くようなサービスにはとても及ばない。競争力を持ち続けることができるのかどうか疑問だ。いわゆる3Kの仕事を担っているのはまず間違いなく有色人種で、賃金は相当低い。ただ、領土、人口、資源からすると、この国はまだかなり余裕があり、日本人の目には多少雑でも、許せる社会になっているのだろう。

 日本の製造業の技術は確かにいまだに世界一なのかもしれないし、舐めるような仕上げは米国では無理だろう。しかし、日本が製造業で稼いだお金と、やや爛熟した社会と成功体験の上に安住して、必要な政治的、経済的、社会的改革を怠っている感じは否めない。温情を大切にし、理性を二の次にしている日本のよさもあるが、単純なルールと理性への信頼、システム性を強く持つ米国も素晴らしい。どちらのシステムがこれからの時代に適合するのかが問題である。直感的に言えることは、米国のレベルまで機能性を追求しなくとも、日本は相当理性的な社会に作り変えなくては、今後も停滞を余儀なくされるだろうということだ。日本は、米国に代表されるグローバリゼーションを受け入れながら、同時に日本文化の独自性を加味していくという帰路に立たされている。難しい道ではあるが、日本にはその力があると信じたい。


1998年11月 執筆
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