論考

Thesis

遊び、学び、育む ~よこすかプレーパークでの活動~

2020年より、横須賀市内において「プレーパーク」の活動に関わらせていただいている。本レポートではこの活動について、また活動から見る街の姿や得ている学びについて記していく。

1.プレーパークとは

 「プレーパーク」という言葉をご存じだろうか。欧州で発展してきた子どもたちの遊び場のかたちのことで、日本語では「冒険遊び場」とも訳される。特定非営利活動法人・日本冒険遊び場づくり協会は『冒険遊び場は、すべての子どもが自由に遊ぶことを保証する場所であり、子どもは遊ぶことで自ら育つという認識のもと、子どもと地域と共につくり続けていく、屋外の遊び場である』と定義している[1]

 プレーパークは公園や海辺などの広いスペースで行われることが多い。従来の公園によくあるようなジャングルジムや鉄棒などの遊具を使うことはあまりなく、何もない、あるいは自然が残っているような広い場所で、子どもたちが自分で遊びを考えていくのである。プレーパークを行う場所や特徴を最大限に使い、ボール遊びやかくれんぼはもちろんのこと、鉈で竹を切り工作する、焚き火や木登りをするといった少し危険な遊びも子どもたちの意思で行うことができる点が特徴である。大人たちがノコギリやロープなどの道具を持ちよって、それらを使って遊ぶこともある。


図1 直近のプレーパークの会場となった場所。豊かな自然が残っている
(2021年7月31日筆者撮影、横須賀市長坂の沢山池にて)

2.遊びを通じて学ぶ

 いくつか遊び方を例示したが、そもそもプレーパークには遊び方の指定やルールが極めて少ない。ルールは「ほかの人を傷つけない」「大けがになるようなことは避ける」など、最低限のものにとどまる。この自由さがプレーパークの最大の特徴であり、魅力であると言える。フィールドが山と川がある場所だった場合、川で水のかけあいをしてもいいし、ザリガニをとってもいいし、ロープをつかって木々にブランコやハンモックをつくって遊ぶことも、そこから川に飛び込むことももちろんして良いのだ。

 危ないのではないか、という見方も当然あるかと思うが、このちょっとした危なさからも学ぶことがあるというのがプレーパークをする上での一つの考え方でもある。もちろんやりたくないことや怖いことはする必要がなく、楽しむことが第一義である。こうした中でも転んで泣いてしまった子をいたわったり、「ここから先に行くのは危ないからやめよう」と判断力をつけたり、工作技術を身につけたりといった生きる力、遊び方、他者との関係の作り方を遊びながらつかんでいくことができるのである。


図2 木登りなど自由に遊ぶ
(2021年5月29日筆者撮影、横須賀市浦賀にて)

図3 ノコギリを使った工作も
(2021年7月31日筆者撮影、横須賀市長坂の沢山池にて)

図4 水のかけあいも
(2021年7月31日筆者撮影、横須賀市長坂の沢山池にて)

3.地域で育む

 私は地元であり現在の研修場所でもある神奈川県横須賀市において、昨年よりプレーパークを主催する団体「よこすかプレーパーク」の立ち上げと運営に携わらせていただいている。横須賀市には545もの公園があり、ひとつの地域資源といっても過言ではない[2]。公園も多くあり、手つかずの山や海といったフィールドが豊富にあるこの街は、まさにプレーパークをするのにもってこいの土地なのだ。この横須賀の豊かな自然や公園といった資源を活かして子どもたちにのびのびと遊んでもらうことで、子どもたちや保護者に土地の良さを知ってもらうことにつながっていく。様々な背景・年齢の子どもたちが集うことで同じ学校や同じ学年以外の友達づくり、保護者同士の関係性の構築や交流を通じた子育て不安の減少にもつながる効果も期待できる。「たかが遊び場」ではなく、地域で子どもを育てる住みやすい街をつくるきっかけにもなりうると考えている。

4.おわりに

 新型コロナウイルス感染拡大の影響により「よこすかプレーパーク」はまだ正式開催に至っていないが(2021年8月時点)、すでに市内各地でプレイベントとして人数を絞って開催している。子供たちは大人たちが想像もつかない方法で遊び、時に大人から見れば「それの何が楽しいんだろう…」と思うような小さなことでずっと大笑いしていたりする。それ自体がプレーパークの魅力であり、楽しみでもある。切り傷を負ったりすりむいたりする子もたくさんいるが、それもまた(もちろん大けがをさせない環境づくりは不可欠である)学びの機会になる。参加者の子供たちや保護者の方からの喜びの声も多くいただき、今後は月に一回程度、市内各地で定期開催を目指していく予定だ。昨今の時勢ゆえ中々大規模な開催とはいかないが、コロナ禍だからこそ思うように遊べない、ストレスが溜まってしまっている子供たちや保護者の方が多いことも事実である。それらを少しでも解消できる場を提供していくことで、私自身としても地域資源を活かした活性化の取り組みを遊びながら学び、実践してまいりたい。


図5 「よこすかプレーパーク」の運営メンバー
(2021年7月31日筆者撮影、横須賀市長坂の沢山池にて。右から2人目が筆者)

[1] https://bouken-asobiba.org/play/about.html より(2021年8月27日最終アクセス)
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