論考

Thesis

中国は今変化中

松下政経塾ロゴマーク

松下政経塾

1995/4/28

中国は今変化中

                                   劉敏鎬

 5月20日中国の北京に着いた。中国は今、周知のように政治的には社会主義を、経済的には市場競争原則を採択、社会主義市場経済という前代未聞の実験を行なっている。

 高い物価引上にもかかわRたず中国経済は毎年10%経済成長を記録している。このような中国の状況を説明するいい例としては1993年春IMFによって発表されたレポートであり、21世紀初めになると中国は世界一の経済大国になるという予測であった。

しかし、中国に関する希望的な展望と合わせて否定的な予測もあちこちで言われている。

 否定的な予測としては、まず、貧困地方と沿海開発地域との経済水準差による内紛の可能性、とう小平死後野解放制作と天安門事件の再評価をめぐる強穏派間の権力闘争可能性、そして、55諸民族間の圧力と違和感による分離独立運動の可能性が考えられる。このような成長中の不安という中国社会政治の不調和は微視的には中国の内部の問題であり、大きく見るとアジア全般の問題である。そういう意味で中国の問題は日本、韓国、東南アジア自身の問題でもある。

 今、欧米の対ロシア政策が、このままロシアの政治、経済、社会の不安が続くと、治安不在により、核兵器の対外流出が起こり、国際的な大混乱が起こりかねないという予測に立ったものであるように、中国と日本、韓国の接近方法も経済的な目的だけでなく、アジアの共同体意識に基づいて、考えなければならないのではないだろうか。

 私が主題で取った衛星放送を利用したアジア共同体結成ということもそういう意味で、もうひとつの協力方法になると思う。特に放送というものは中国政府が今、中国内国論統合という面で、何よりも力を入れている開発部門である。

 今回、私が中国に行って調べたことは、中国の一般放送状況であり、北京を中心とするテレビ放送現状調査が一番大事な目的であった。

 しかし、北京は今、6、4天安門事件6周年にあたり、戒厳状況であり、特に外国人の場合は、天安門事件の国際連帯可能性防止調査という大義名分で、観光以外のことはいろいろな制約があり、具体的な放送現状調査は考えたより難しかった。

 北京ではテレビ放送局が7局あり、中国中央放送局が4チャンネル、北京放送教区が3チャンネルである。その他に、河北省放送局の放送も視聴できるので、全部で8チャンネルである。最近の放送番組の内容は報道の場合には、以前の重要政治家の動静ニュースから、ちょっと離れて、経済関連ニュースが重要視されている。

 特に北京内の大学の外語学習熱に合わせて、国際関連のニュース英語で放送番組も出てきた。特に北京での2チャンネルは去年からTVと視聴者という視聴率調査番組を果敢に採択。社会主義にはない番組競争を試行している。しかし、北京の放送番組の水準はまだまだであり、外信の場合は中国の社会主義体制安定に反するニュースは全く放送されなかった。再放送の比率も日本の10%。韓国の15%を越える30%程度であり、放送製作能力は低かった。番組の中で面白かったことは、抗日戦争ドラマが全チャンネルで毎日朝から夜まで放送されており、反日感情が思ったよりも高かったことである。

 しかし抗日ドラマが終るとすぐに日本の経済発展を誉める番組が続き、日本に関しては政治と経済の分離という複雑な感情が見られた。また、日本の歌と連続ドラマも日本語そのままで放送されており、比較的北京市民の間では、日本の現況をよく知っているような印象をもった。韓国の場合には日本文化侵略という名目で、公式的な文化交流は低い水準に留まっているが、まだまだ閉鎖的な中国が韓国よりも日本の放送番組を受け入れていることは、様々な意味でよい結果をもたらすように思われる。

 中国は、今静かに、しかし正確に行進している。

Back

関連性の高い論考

Thesis

松下政経塾とは
About
松下政経塾とは、松下幸之助が設立した、
未来のリーダーを育成する公益財団法人です。
View More
塾生募集
Application
松下政経塾は、志を持つ未来のリーダーに
広く門戸を開いています。
View More
門