論考

Thesis

コストに対応できる政治を

松下政経塾ロゴマーク

松下政経塾

1996/6/28

今月から3回にわたり各党派で活躍する塾出身の衆議院議員のインタビューを掲載する。第一回は1期生の逢沢一郎さん(自由民主党・当選3回、新岡山1区)に話を聞いた。

 「この国を取りまくコストにどんな認識と、何をもって取り組むかです」と、逢沢さんはまず自身の政治への取り組み姿勢を「コスト」という言葉で括った。「高コスト」は、日本経済の国際競争力を弱め、また国家財政悪化の原因となっている。

 ここ数年、彼はスイスの世界経済フォーラムの報告に注目している。昨年は特に衝撃を受けた。そこには「日本の競争力は世界4位。政治、国民、社会基盤ともに自信喪失」とあった。今年は13位。「世界はコスト安を求める環境へと動いています。大競争時代という言葉そのままに」。一方国内はその対局にある。「日本は成熟高齢社会、コスト高の構造へ向かっている」。この国は相反する環境を同時に抱えているというのだ。「思い切って大きく舵を取る時代です」と逢沢さん。その対策として二つの方法を考えている。

 一つは技術開発。グローバルなコスト安に対する手段である。近年、かつては日本でなければ作れないと言われたVTRの製造などがアジアへ移っている。そうしたなか、「日本の活力を決めるのは先端技術開発」と逢沢さんは読んでいる。それゆえ科学技術基本法成立の際には提案者の一人となった。しかしそれでも研究者1人当たりの研究費は米国の半分。目指す「投資したくなる国、世界から研究者が集まってくる環境」には程遠い。そこに到達するにはどうすればいいのか。「鍵は規制緩和。なかでも特に情報公開」と考える。通産政務次官時代、産業や投資上の情報が官庁に押さえ込まれ、民間に仕事をさせない構図のあることを認識させられた。「もともと情報は民からのもの。それを公開することは官の信頼回復にも有効なはず」とみる。

 二つ目は膨らみすぎた国家財政への処方箋。400兆円の財政赤字は扱いを間違えば大幅増税という世界でも類のない超高コスト社会を招く。「日本版財政均衡法が求められます。それも大蔵省ではなく国民の支持と政治の主導で」。同じ課題を抱える欧州各国は、EU通貨統合が圧力となって財政再建が行われている。「日本にはEUのような存在がないから自ら律するしかない。主体は政治以外にありません。それには様々な既得権の中にいる国民をどう説得するか」。クリントン大統領は政治は説得の技術だと言った。説得には相応の論理が必要である。

Back

関連性の高い論考

Thesis

松下政経塾とは
About
松下政経塾とは、松下幸之助が設立した、
未来のリーダーを育成する公益財団法人です。
View More
塾生募集
Application
松下政経塾は、志を持つ未来のリーダーに
広く門戸を開いています。
View More
門