Thesis
バス停ベンチのデザインを住民参加によるワークショップで決めることができないだろうか。これが私の研究テーマである。
京都市内の重要な交通手段であるバスの停留所では、一人掛けの椅子が5、6個連なったブルーのベンチを見かけることができる。特に珍しくない普通のベンチである。しかし、この画一的なデザインのベンチが京都の景観にあっているとは到底思えない。改善できる余地があるのではないか。このような理由からバス停ベンチについて調べてみた。
まず、バス停ベンチの役割を考えてみると、バスを待つ人々が座るという他に、都市景観を構成する一要素としての見た目の美しさも無視できない。また、不特定多数の人々が利用するので行政が供給せざるえないこと、さらに利用者に高齢者が多いことなどから利用頻度が高いことなどが分かってきた。しかしその一方で、このベンチが狭い道路では歩行者の邪魔になっていることも判明した。
それでは、このベンチの管理はどこがやっているのだろうか。それは京都市の外郭団体、社団法人京都市交通局協力会である。ベンチを設置する場合、多くの規制がある。まず道路を管理している主体の道路占有許可が必要となる。国道なら国であり、県道なら県である。しかし、道路占有許可は歩道の幅員、ベンチの大きさなどは規制しているが、どういうデザインにするかまでは制限していない。といって勝手に決めているわけではない。設置に対し、バス停周辺の住民の同意が得られるようなデザインが選ばれている。ベンチの設置は浮浪者がそこを寝場所にするなどの理由から周辺住民が反対することが多い。そうした事態への対応策として、寝にくいように1人掛けの椅子を連ねたデザインが選ばれ、色も汚れの目立たない濃いブルーが採用されている。住民の同意を得るために行政が考えたもっとも無難な策である。
そこで、ワークショップ方式で住民がベンチのデザインを決めたらどうだろうか。普段利用する人が決めるのである。ワークショップでは当然、浮浪者の問題、デザイン、色などについて様々な意見が出てくることだろう。しかし住民が智恵を出し合い自分たちで決めることによって、行政が懸念していた住民の同意は得やすくなる。
京都市では市民参加先進都市を目指し、ワークショップによるプロジェクトを活発に行っている。嵐山の公衆トイレの建て替えは全国的に注目された成功例である。またかつて京都は、町衆による自治が活発に行われ、伝統的に自治意識が強い土地柄である。住民参加のきっかけさえ与えれば、住民は動き出すにちがいない。身近なバス停ベンチの改善がそのきっかけになるような取り組みを考えていきたい。
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