論考

Thesis

コラム ~日米はもっと相互理解を深めよう~

米国の首都ワシントンへ日本の証券系研究機関の駐在員として赴任して約5年を経た。ホワイトハウス、財務省、連邦準備理事会(FRB)、連邦議会関係者等と日々接触し、米国の経済政策に関する最新情報を日本へ報告するのが主な仕事である。

 こうした仕事を通じて数多くの米国人と知り合いになれることは何よりの楽しみだ。とくに、米国の官僚たちの寛容さに印象づけられることが多い。実に有難いことに、日本で言えば大蔵省の局長、次長、日銀の理事、局長クラスにあたる人々が、外国人の民間エコノミストに時間を割いて会ってくれる。日本でメリル・リンチのエコノミストが大蔵省や日銀を訪問して、幹部が政策論議に応じることなどあるだろうか。
 無論、ただ先方から情報を聞き出すばかりでは相手にされなくなる。こちらも折に触れて彼らの知らない日本の政治・経済情勢を説明する。そうした中で、米国の官僚たちは意外に日本を知らないということを痛感した。

 実際、ワシントン・ポスト等の一流紙を見ても日本に関する記事はかなり少ない。そこで我が事務所では米国人の対日理解の一助になればと、日本を中心にアジア諸国の経済事情を紹介する英文月刊誌を一年半ほど前から発行し、お世話になっているワシントンの政策担当者の方々に無料で配付している(ウェブサイトにも掲載。http://www.gwjapan.org/nrca/nrca-dc.html)。

 翻って日本人のワシントン理解度を見ると、こちらもまた十分とは言い難い。近年、日本企業のアジア志向が強まっているとは言え、米国は日本にとって最も大切な外国。しかし、ワシントンから日本に向けて発信される政治・経済情報の多くは断片的、一面的で、日本の一般ビジネスマンが米国の政治機構や政策過程の全体像を理解するのに十分とはいえない。

 そこで今度は、日本の一般ビジネスマンに向けて、米国ではどんなプレーヤーたちがどのように政策を決定し、日本の政治経済に影響を与えているのかを記した「政治経済ハンドブック」を作ろうと思いたった。事務所の所員3名を中心に日常の業務の傍らで半年かけて執筆した(左欄「お知らせ」参照)。米国の大統領や連邦議員の選出方法、予算審議の仕組み、金融政策の読み方などの基礎事項から、実際にワシントンで行われているロビー活動の模様、経済政策の決定過程など生々しい情報まで盛り込み、日本のビジネスマンがレファレンスとして手軽に楽しめるよう工夫している。
 ワシントンで活動する民間エコノミストのささやかな活動だが、日米相互理解に少しでも役立てばと願っている。

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植木博士の論考

Thesis

Hiroshi Ueki

植木博士

第3期

植木 博士

うえき・ひろし

ゴールドマン・サックス証券株式会社 マネージング・ディレクター 政府関連担当部長

Mission

日米マクロ経済政策 日米政治制度 シンクタンク

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