松下政経塾 The Matsushita Institute of
Government and Management

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1998年5月

塾報

「夢のある21世紀」を
甲斐信好/卒塾生     渡部弘道/松下政経塾元副塾長

 一向に元気にならない経済を反映して、日本の将来予測はどれも暗い。きわめて悲観的な数字がならび、世界の中で孤立する日本の姿を予測する識者もいる。だが、はたしてそうなのだろうか。未来は予測するものでなく創造していくものではないか。創設者・松下幸之助塾主は「現状への小さな悲観と、将来への大きな楽観」が大切だと考えていた。現状がどんなに困難でも、夢を与えることこそがリーダーの役割である。塾主はどのような指導者像を思い描いていたのか。渡部弘道・松下政経塾副塾長に聞く。

 
 日本経済新聞社が「日経2020年委員会」をつくり、3冊の本をまとめているが、この シリーズで示された「2020年の日本」は暗い。この本ではあえて警鐘として、暗い日本を シミュレーションで示しているようにも見える。
 松下幸之助塾主が1977年に出版した『21世紀の日本』(副題『西暦2010年の日本』PH P研究所)には、当時から数えて30年後の日本がまとめられている。この本で示された「 2010年の日本」は「世界の理想の日本」である。「理想の日本」はどのような姿である べきかを建設的な視点で語り、描いている。そしてその基本には松下塾主の人間観があ る。この世の中を動かしている自然の理法を、「宇宙全体、万物ことごとく常に動いて いるが、その動きは衰退に向かっているのでなく生成発展に向かっている」と見る。そ してそこに人間の努力の意義があるとする。たとえ現状がどんなに困難であっても、す べては生成発展に向かっていると考えるならば、がんばろうという気になる。松下塾主 の思想には「大いなる楽観」を感じるし、その言葉に触れると、勇気が湧いてくる。

 塾主は、1980年4月、松下政経塾の開塾にあたって、21世紀のための人材育成につい て、その熱い思いを語っている。そして「指導者の条件」を3つ挙げている。第一は、指 導者はお互いに人間のもつ普遍的な特質を正しく把握すること。いわば正しい人間観に立 つこと。第二は、普遍的な人間観に立って、その時々刻々の変化を的確につかむこと。 つまり柔軟な時代感覚をもっていること。第三は、多くの人の上に立つことのできる人 間として、高い徳性、識見、あるいは勇気なり実行力といった、いわゆるリーダー的資 質を備えていること。この3つが松下塾主の「指導者の条件」であった。素直な心の持 ち主。私心にとらわれず、なすべきことを断固なす人。物事の実相を見て、正しい判断ができる人などもあげている。また、一国のリーダーたる人物は、いわゆる公の怒り=「公憤」を もつことが大切であると述べている。

 松下政経塾はこの4月に第19期生を新しく迎えた。1980年4月の開塾から19年目に入っ た。その中で、開塾から89年4月までは、松下塾主が直接塾生に語り、指導した。いわ ば「面授」の時期である。私はこの期間を松下政経塾の第一期と考える。現在までに160名 余りの卒塾生を送り出し、国会議員を始め39名の政治家が誕生している。また塾員は、政 治、経営、研究、マスコミなどの分野で幅広く活躍している。塾主が亡くなった89年か らを第二期と考えたい。2000年4月に開塾20周年を迎え、塾主が求めた「21世紀の人材 」が日本をよくするため、社会をよくするため、世界の平和、幸福、繁栄のために、期待され る真の働きを示す時がきていると思う。これからの時代は、松下政経塾にとっていわば 第三期であろう。塾員が各分野で活躍することと、その評価が直接的に大事になってく る。一方では、塾において指導者をめざす人材を継続的に養成する。塾員と塾生、この 両面から相乗的効果を発揮させていかなければならないと思う。塾主の思想、理念をし っかりと継承し、発展させていかなければならない。それは松下塾主から直接教えを受 けた弟子や孫弟子たち塾員、塾生、松下政経塾の使命でもある。
 強い憂国の思いのなかに、大きな夢と希望を与えることが指導者に求められていると 思う。松下塾主の求めた「指導者の条件」に思いをいたし、新たに「夢のある21世紀」 を考えてみたい。


1998年5月 執筆
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