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「企業家殿堂企画展」開催報告

 前回の活動報告から約二か月が経過した。この二か月間は、私にとって非常に大きな決断と実行力が求められる期間であった。実践活動に入って以降、「企業家殿堂プロジェクト」について継続的に取り組んできたが、思うように進んでいないという課題を抱えていた。しかし、昭和100周年という節目にどうしても何らかの形で行動を起こしたいと考え、「企業家殿堂企画展」の開催を決断し、本格的な企画展を開催した。

 企画、デザイン、広報、集客までをすべて一人で担当し、限界まで自分を追い込む形ではあったが、結果としてやり遂げることができた。開催期間は2025年12月15日(月)から21日(日)までの7日間で、約130名の方々に来場いただいた。来場者からは「とても感動した」「鳥肌が立った」といった声を数多くいただいた。改めて、戦後の激動期を乗り越えてきた企業家たちの言葉は、今を生きる私たちに重く、深く、力強い示唆を与えてくれると感じた。以下では、企画展で展示した内容について、一部を抜粋して報告する。

1.殿堂入り企業家の選定基準について

(1)企業家殿堂の選定基準
 「企業家殿堂」は、「企業家殿堂選定委員会」により選定・公表されたものである(2018年)。委員長は日本経営史学会の由井常彦氏(明治大学名誉教授)、委員には日本経営倫理学会理念哲学研究部会会長の村山元理氏(駒澤大学教授)が名を連ねている。

 企業家殿堂入りの選定基準にて特徴的なのは、単に産業界に大きな足跡を残したかどうかではなく、明確な理念・哲学を持ち、それを実践してきた人物であるか、さらに教育者・啓蒙者としての側面も重視されている点である。利益を上げただけでは評価されず、人間性や生き方そのものが問われるため、選定基準は極めて厳しい。

~企業家殿堂 選定基準~
一. 企業家として産業界に大きな足跡を残し、夢や挑戦の心を持ち、リスクを取る創造性があること。

二. 国家・社会・世界の福利厚生の創造に寄与するなど、社会的貢献が大きいこと。

三. 地域や風土、伝統的価値観を大切にしながら、明確な理念・哲学を持ち、その実現を図ってきたこと。

四. 自己研鑽に努め、模範的人物として敬愛されていること。

五. その指導的精神やリーダーシップが学びの対象となり、社内外において教育者・啓蒙者としても優れていること。

(2)殿堂入り企業家一覧
 上記の基準により、現時点では以下の21名が殿堂入り企業家として認定されている。

1            三島海雲             カルピス創業者
2            鳥井信治郎          サントリー創業者
3            出光佐三             出光興産創業者
4            石坂泰三             第二代経団連会長
5            石橋正二郎          ブリヂストン創業者
6            早川徳次             シャープ創業者
7            豊田喜一郎          トヨタ自動車創業者
8            松下幸之助          パナソニック創業者
9            土光敏夫             東芝中興の祖 第二臨調会長
10          立石一真             オムロン創業者
11          市村清       三愛創業者
12          御手洗毅             キャノン創業者
13          本田宗一郎          本田技研工業創業者 
14          田口利八             西濃運輸創業者
15          井深大       ソニー創業者
16          吉田忠雄             YKK創業者
17          安藤百福             日清食品創業者
18          丸田芳郎             花王中興の祖
19          塚本幸一             ワコール創業者
20          小倉昌男             ヤマト運輸創始者
21          稲盛和夫             京セラ名誉会長

2.企画展で取り上げた企業家と展示内容

 本来は企画展において上記21名全員を取り上げたかったが、会場スペースの制約から、国民に馴染みの深い商品を現在も販売している企業の創業者8名に絞って展示を行った。以下では、特に来場者の反響が大きかった企業家の名言とエピソードを企画展示内容から抜粋して紹介する。(以下、会場展示と同様の順番で紹介)

①    パナソニック創業者 松下幸之助
 「人間はダイヤモンドの原石である」

 「経営の神様」と呼ばれた松下幸之助。彼の強みは、すべての出来事を肯定的に捉える発想力であった。松下は学歴もなく、お金もなく、病気がちという幼少期を過ごしたが、だからこそ「自分は運がいい」と考えていた。
 人間の可能性を信じ、天から与えられた持ち前の特性、すなわち「天分」を生かしていくことが重要であると説いた。まさに、人を生かす天才であった。


②    出光興産創業者 出光佐三
「人間尊重・大家族主義」

 出光の強みは、徹底した「人間尊重・大家族主義」にある。出光の五つの主義方針の第一条には、その思想が明確に示されている。「出光商会の主義の第一は人間尊重であり、第二も人、第三も人である。」利益を最優先とする企業ではなく、人を中心に据えた考え方が社員に深く浸透し、その一体感こそが出光の強さとなっていた。


③     本田技研工業創業者 本田宗一郎
「できるかできないか分からないが、俺はやりてえよ」

 本田宗一郎の破天荒さは、この言葉からもよく分かる。本田は、バイク製造を始めて間もない頃、世界一のバイクレースと称されるマン島TTレースへの参加を決断した。当時、日本製品は粗悪品と評価され、部品の品質も低く、エンジンの馬力は欧米諸国の三分の一程度しかなかった。
 常識的に考えれば勝てるはずがない状況であったが、それでも世界一を目指して開発を続け、わずか七年で世界一に到達したのである。


④     ソニー創業者 井深大
「ソニーは人のやらないことをやる」

 井深大は、この言葉を徹底して実践した。テープレコーダー、ラジオ、テレビ、ウォークマンなど数々の製品を世に送り出したが、他社に先を越されても決して模倣することはなかった。
 常に独自の道を貫いたからこそ、革新的な製品が生まれ、世界のソニーへと成長したのである。


⑤    カルピス創業者 三島海雲
「国利民福」

 「食が足りてこそ、世の中は平和になる」。この思想の原点は、戦後の闇市で見たラーメン屋台の光景にあった。食糧不足の時代にもかかわらず、ラーメンを求めて列をなす人々を見て、「日本人は麺類が好きなのだ」と考えた安藤は、約一年をかけて即席ラーメンを開発した。それは、世界中で愛される日本を代表する食品となった。


⑦  ブリヂストン創業者 石橋正二郎
「世の人々の楽しみと幸福のために」

 タイヤメーカーとして知られるブリヂストンの創業者、石橋正二郎は、地元・福岡県に多大な貢献を果たした。市民に良質な芸術を提供し、憩いの場を創出するなど、地域社会への貢献を重視した。そのため、福岡では石橋の存在を誇りに思う人も多い。


⑧  ワコール創業者 塚本幸一
「私は生きているように見えるが、実際には生かされているのだ」

 塚本幸一は、インパール作戦の生き残りである。小隊長として率いた部隊の中で、生き残ったのはわずか三名であった。
 なぜ自分だけが生き残ったのか。帰りの船の中で自問を重ねた末、この命は「生かされている命」であると気づき、戦友たちの思いを背負い、「世のため、人のために尽くす」人生を歩むことを決意した。その決意が、後のワコール創業へとつながっていったのだった。

3.所感

 1週間の短期開催ではあったが、18歳から87歳まで、職業を問わず多くの方々にご来場いただいた。中でも特に印象的だったのは、経営に迷いを抱えていた30代の経営者の言葉である。彼は企画展を通して「自分の軸が戻った感覚があった」と語ってくれた。さらに、次回は社員も連れて来たいと話し、展示の写真を熱心に撮影していた姿が印象に残っている。
 経営者は孤独であり、悩んだときに助言を得られる存在がいないことも少なくない。だからこそ、先人である企業家の考え方や哲学が、心の支えとなるのだと改めて感じた。
 また、一人の企業家に限定するのではなく、複数の企業家の哲学に触れることで、それぞれが自分に合った企業家や名言を持ち帰ることができる点も、これまでにない価値であると感じた。
 そして本企画展を通じて、小規模であっても実際に形にすることが、新たな発見や次の展開につながることを実感した。今後は、企業家の哲学を現代の企業経営や社会課題にどのように生かしていくかという視点から、さらなる研究と発信を進めていきたい。

4.註

「企業家殿堂」プロジェクト

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