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1.経営実践研修の概要
2024年5月20日(月)~12月13日(金)において、パナソニックオペレーショナルエクセレンス社 組織・人材開発センター(以下、T2DCとする)で経営実践研修を行った。以下では、本研修の後半における学びを記す。
2.経営実践研修の成果
本研修において、私が主に担当していたのは幹部研修「レジリエンスプログラム」の運営である。「レジリエンスプログラム」では、産業医の先生が講師を務め、人間の特性を理解することで生物の能力を最大化し、逆境を自身と組織の成長に変えて統合させることを目的としていた。この経験を通じて、脳科学的な人間の特質を深く理解し、研修がどのように企業の成長に貢献しているかを感じることができた。
また、新しい研修の企画・開発にも携わらせていただいた。私が担当したのは、DEI(Diversity, Equity, Inclusion)の一環で企画された障がいのある社員向けの研修である。障がいのある社員の方がどのような苦悩を抱えており、何を望んでいるか全く無知な状態からのスタートであったが、一つ一つステップを積み重ね、何とかトライアル版の実施にこぎつけることが出来た。本研修の企画と推進に携わる中で、当事者の方々の生の声を聴くことの大切さや衆知を集めることのパワーの大きさも体感することが出来た。
さらに、組織開発の現場体験や各階層向けの研修のオブザーブ(新入社員や課長、組織長や部長など)、パナソニック草津工場の見学なども体験することができ、あらゆる角度からパナソニックに触れる充実した7か月間だった。
3.私が学んだ経営の要諦
以上が、経営実践研修の実績と成果であるが、以下では学んだことや気づいたことについて述べる。
本研修を通して、私は創業者が大切にしていた「経営の要諦」を掴むべく日々を過ごしていた。しかし、「経営の要諦」を一言で語ることはできないというのが、現時点での私の結論である。創業者の哲学において、人を大切にすることが土台にあることは間違いないが、組織の大きさと目線によって重要視する部分が異なると言える。そこで、以下では、特に重要だと思った目線をいくつか述べる。
まずは、リーダーの目線である。創業者は、想いを伝えるためにあらゆる言葉を残しており、現在のパナソニックでは、「対立と調和」「衆知経営」「社員稼業」「人間はダイヤモンドの原石」などの言葉が使われている。本研修において、上記のような創業者の哲学に触れる瞬間に数多く遭遇したが、創業者の哲学を最も深く体感することが出来たのが、直属の上司(リーダー)による部下の指導方法である。以下に、上司が行っていた指導方法を(部下の立場から)私になりにまとめる。
~部下の指導方法(人の輝かせ方)~
①誰しもに可能性があると考える
どんな人にも才能があり、成長できるという前提で接する。
②特性を見極め、上手く活かす
各社員の特性を理解し、その特性を活かせるような役割を与えることが重要である。
③それぞれがやりがいを感じていることを尊重する
社員が自分の仕事にやりがいを感じられるようにミッションを自分事化し、その意欲を尊重する。
④「任せて任せず」でいる
仕事を任せる際には方向性を示し、自由に仕事を進められるようにある程度の自由を与える。
⑤プライドを持っている部分を否定せずに受け入れる
それぞれが大事にしているものを否定せず、地雷は踏まないでおく。
以上が部下の指導方法であった。これはまさしく創業者の哲学そのものであり、上司は創業者の哲学を尊重したうえで、実践に落とし込んでいた。この方法を実践することによって、私自身もイキイキと働くことが出来たし、上司が経営する組織に活気をもたらし、売り上げも数億程度上昇させることが出来たそうだ。このように、リーダーがどのような考え方で部下を指導するかによって、部下のパフォーマンスにも、組織の活気にも大きく影響を与えることが分かった。
次に、組織の目線である。この目線は、私に最も欠けていた目線である。組織の目線の重要性を体感したのは、T2DCの「組織開発」の見学である。「組織開発」の現場では、事実や実態、本音で対話できる関係を作ること、現状を話し合うこと、そして、最終的には組織が目指す姿を共有して実現に向かっていくことを重要視していた。そんな「組織開発」の見学で驚いたのが、一般的な職場において、事実や実態を本音で話し合うことさえも非常に難しいということである。
ある人事部の「組織開発」の現場において、「会議で質問がでない」という課題についてディスカッションをしていた。なぜ、会議で質問がでないのかと話し合いを進めていく中で、「質問をすると相手を責めているみたいなるからできない」という意見があった。その一方で「むしろ質問をしてくれた方が改善につながるから有難い」というやり取りがあった。こういった本音の開示をし合い、メンバーの価値観の違いを理解することで、その後の会議の質が目に見えて向上していた。
同じ組織の中には異なる価値観の人々が必ず存在していて、それを開示し合うことは意外と難しい。だからこそ、日ごろから互いの価値観を知り、受け入れ合うカルチャーを作ることが重要であり、そんなカルチャーをもつ組織が企業の成果を生み出していくことを学んだ。
以上が、「経営の要諦」において特に重要だと感じた目線の2つである。
4. 今後の展望
経営実践研修を通じて、私は創業者流の部下の指導方法や組織カルチャーの重要性など、多くの貴重な学びを得ることが出来た。そして、本研修を通して、パナソニックに息づく創業者の経営観・人間観、物の見方が、社員の仕事に対するやりがいや幸福感を生み出すことを実感した。今後もこれらの学びを活かし、企業の経済的成長と関わる人の幸福を両立させる新しい日本的な経営を探求していきたい。
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Mizuna Kato
第44期生
かとう・みづな
Mission
経済性と幸福を両立する新日本的経営の探究及び若手企業家の育成