活動報告

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塾主の伝えたかったこと

1.塾主ゆかりの地を訪ねて

 入塾以来八ヶ月、様々な方のお話や非常に多くの数が出版されている書籍から松下幸之助塾主にまつわる数々の話を聞いてきた。その一つ一つが含蓄のあるものであり、その時々で深い感銘を受け、自分自身の心に刻み込んできた。しかし残念ながら、その多くのお話の一つ一つは個々にバラバラに私の記憶の中に残っており、有機的に結びついて理解されたものではなかった。それが今回の関西研修で、塾主ゆかりの地を訪ね、その根幹となるものを現地で体感することによって私の中に体系的に入り込んできた。その意味において、これまで松下幸之助研究をしてきた集大成として非常に有益な研修であったと感じている。

 さらに私は今回の関西研修で私自身に課題を課した。
「松下幸之助塾主は、後々の時代の人々に何を残したかったのか。21世紀の日本を担う松下政経塾の塾生である我々に何を伝えたかったのか」
私は常に上記のことを念頭に置き、関西研修を過ごした。

 この課題は実は松下政経塾の入塾前に新入塾生に課せられた課題であった。五冊の本を読み、「松下幸之助塾主は我々に何を伝えたかったのか」というテーマでレポートを書かせられたのである。私はそのレポートで三つのことを書いた。一つは「人間への飽くなき探求」である。人間自身が自らの本質を正しく知ることによって、その本質を生かし発揮する道が開けるのである。塾主の「新しい人間観」はまさにこのことを述べている。二つ目が「衆知」を結集することのできる「人間性・徳・人格」である。人間の本質を発揮していくうえで「衆知」を集めることが不可欠であると塾主は語っており、「衆知」こそが最大の力であるという。その「衆知」を結集しうる人間でなければならないのである。

 そして三つ目が「日本人として世界のために貢献せよ」ということである。 塾主は、長久なる人間の使命を、人間の「本質を自覚」し「衆知を集めて」、その偉大な「天命をひろく共同生活に上に実践していく」ことであると語っている。この「天命」をひろく実践していく「共同生活」の「場」とは、自分の生まれ育った国家である「日本」、そして「日本」を取り巻く世界が存在する「地球」である。さらに政経塾をつくった一つの動機として塾主は、「21世紀の繁栄はアジアにくるから、日本はその受け皿になろう。受け皿になるには、受け皿になるような人材が必要だ。その人材をつくらなくてはいかん」、「将来はこの政経塾が一つの転機になって、日本は21世紀を背負って立つ大きな受け皿の一つになる」、「それが国家、国民のためになるのだったら、大いにやらなくてはいかん」と語っている。

 いくつかの本から読み取った塾主の伝えたかったことは、まさに京都、大阪、和歌山という地から、様々な形となって私に語りかけてきた。PHP研究所の江口副社長は塾主の側に長年おられた方であり、松下幸之助の精神を一番体現されている方であると感じた。また京都の真々庵の光景は、日本の伝統文化を「美」の観点で、塾主本人の理想が追及されており、精神的な拠り所となってきたことが強く伝わってきた。裏千家家元での茶道の研修は、まさに茶道を通じて日本人の心の豊かさと和らぎを得るための「道」の一端を垣間見させていただいた。

 そして松下本社の訪問は、塾主が残された想いが今も受け継がれている現場であり、私の中に強く印象付けられた。松下名誉会長や副会長のお話は、まさにこれからの日本の行く末を真剣に考えられたものであり、実際に最先端の現場で活躍されている真に迫る内容であった。

 歴史館の展示は、塾主が様々な書物の中で述べられてきた多くの言葉が、なぜそう感じたのか、なぜそのようなことを思うに至ったのかを類推しうる時代ごとの背景を探ることができた。またあらためて塾主がこれまでに残してきた偉大な功績をあらためて実感することができた。その後訪ねた、和歌山市内の松下公園という名の公園の隣に佇む塾主のお墓で、私は新たなる決意を誓った。

2.知事訪問で感じたこと

 京都、和歌山、三重の三人の府・県知事と懇談できたことは、大変光栄なことであり、これからの日本を具体的に、どのように変えていくのかを考えるうえで、大変参考になった。昨今では国会の野党が薩長連合などと息巻いているが、私は全国の都道府県知事こそが連携して、国政と対峙していく構造こそが薩長連合に相当するものであり、これからの日本を真に変えていくための新しいシステムになることを期待している。

 訪問した知事は三人とも、進取の気性に富んだ方たちであった。京都、和歌山の知事は自治官僚出身ではあるが、「地域主権」を標榜し、国との対峙も辞さないという構えで県政に取り組んでおり今後の活躍が期待される。さらに我々政経塾員や私自身がこうした地方からの変革を推し進めていく新たな「覚悟」を持つ必要性を痛切に感じた。

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小野貴樹の活動報告

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