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起業大国アメリカの苦悩から学んだこと

起業大国アメリカの苦悩から学んだこと

2015年8月から1年間、ワシントンDCにおいて活動しました。この間、米国連邦議会での勤務等を通じて見た米国は、産業構造の変化から取り残され、そして格差の拡大に怒りを募らせた有権者が作り出した大きな政治の「うねり」に翻弄され続けていました。トランプ氏とサンダース上院議員という代弁者を見出したその「うねり」は、トランプ氏が共和党の大統領候補に選出されたことで、少なくとも11月の本選までは米国を揺さぶり続けることになります。
 
 米国は世界最大の「起業大国」と言っても過言では無いと思います。古くは繊維や鉄鋼、より最近では家電や自動車産業、パソコンなど、それまで米国を支えた産業の競争力が衰えても、そのたびに起業家が現れ新しい事業を起こし、あるいは既存の大企業が大胆に事業領域の転換に成功するなどして、米国全体としての経済は拡大してきました。2008年の恐慌以降の経済成長も、日本やヨーロッパの先進国と比べて、米国は最も高い伸び率を維持していますが、その源泉の一つが、シリコンバレーにみられるような活発な起業活動なのです。
 
 一方で、米国社会の格差の問題は、ベンチャー集積地として経済的なブームを謳歌している都市でこそ顕著に現れます。私はワシントンDCから日本への帰路の途中、テキサス州のオースティン市や、シリコンバレーを抱えるサンフランシスコ市など、ベンチャー企業で栄える都市を訪問しましたが、ホームレスの人数の多さに驚きました。特に、サンフランシスコ市では、都市中心部でもあらゆる通りに多数の物乞いが居て、小銭を要求されることなく5分も歩くことは不可能です。
 シリコンバレーで働く人や起業家などはサンフランシスコに住宅を求め、彼らの収入の高さも相まって住宅価格が急騰し続けています。米国の大都市にはシェルターと呼ばれる公的なホームレス用の宿泊施設が多数存在し、ホームレスであってもそのような場所で寝泊まりする人が大多数ですが、子供連れの家庭が家賃の上昇で住居を失いシェルターに寝泊まりするようになり、独身男性のホームレスが路上にあふれ出す結果になっているというのです。
 
 1年間のワシントンDCでの滞在や、米国内の各都市への訪問を通じて、活発な起業活動やイノベーションを通じて、生産性を高め、地域経済を活性化し、そして国際競争力を維持する米国の経済システムの強みを多く見出しました。しかし、ホームレス問題などが示すように、今の米国の状況は、「一部の富裕層や成功した起業家がまず豊かになり、やがてそれが昔ながらの仕事に就いているような人も含めた中間層以下にも “自然と” 広がっていく」という経済モデルの限界を示しています。また同時に、ベンチャー企業などが生み出すイノベーションは、経済を成長させたとしても、雇用の喪失につながる場合が多いことも事実です(ロボットや人工知能など)。イノベーションなどを通じて競争力ある企業を増やし経済のけん引役を生み出すことは引き続き私の研究・活動の主眼ですが、健全な再分配政策の下で、「平均」ではなく、あらゆる人々が安心して生活を送れる仕組みを同時に整えていかないようでは、国民の福祉は向上しないばかりか、社会不安が起こりかねません。
 残り半年の政経塾生としての期間は、この点を肝に銘じながら、国民全体の豊かさにつながる経済政策をまとめて行きたいと思います。

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斎藤勇士アレックスの活動報告

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Alex Yushi Saito

斎藤勇士アレックス

第34期

斎藤 勇士アレックス

さいとうゆうし・あれっくす

衆議院議員

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