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スウェーデンと聞くと『高福祉』や『ノーベル賞』などがイメージされ、平和かつ安全な国家を連想することが多いと思います。一方で、スウェーデンは戦闘機や潜水艦といった強力な武器を自国の産業のみで生産出来る、軍事的にも発達した国です。今回、そのスウェーデン現地から考えた国の平和について報告させて頂きます。
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スウェーデンは、北欧に位置する人口約1000万人の立憲君主国であり、本年2018年に日本との国交樹立150周年を迎えます。
同国の政策は様々な分野で特徴がありますが、外交・安全保障政策について、以下の2点に特に関心が持たれます。
•軍事面ではNATOに非加盟でありながら北欧諸国による安全保障協力体制 (NORDEFCO : Nordic Defense Cooperation)を構築しています。
•米国との2国間の防衛関係の促進を模索するほか、徴兵制を復活させています。
この様な特徴ある軍事政策を講じるに至った要因は、ソ連やナチス・ドイツからの侵略の危機を経ていることや、戦訓の研究(原子爆弾が持つ戦略的、戦術的な意味など。事実、第2次世界大戦後にスウェーデンは核武装を企図した開発をしていた時期があります)を怠らないことにあると思われます。軍事大国が多く存在するヨーロッパにおいて、自国の平和と独立を保つための努力の形跡が、今回のスウェーデンの訪問にて多く垣間見られました。
例えば、スウェーデンの国土は非常に地盤が堅いため、それらを活用すれば天然の要塞を築けるといえます。実際には、岩盤を掘り抜いた防空壕が高速道路沿いなどに多く見られました。また、テロや戦争が発生したときの対処要領などについての小冊子が全ての家庭に配布されているそうです。これらは、いざという時にスウェーデンの地の利を活用することや、国民全体で国防に当たる意志の現れといえます。
また、今回の研修期間の9月9日においてスウェーデン国政選挙が行われ、その候補者へのヒアリングの機会がありました。その中で、安全保障面に関しては、与野党ともに国防費を増加させる点で一致しているとの話を伺いました。このことは、国会内においても、国防に関する基本方針は一貫して自国防衛の重要性を認識していることの証左でもあります。
勿論、強力な武器を保有していることや、諸外国との強固な同盟保持していることは国防にあたり重要な意味を持ちます。スウェーデン政府はその事を認識して、戦闘機などの自国生産主義を採用したと言われています。彼らはそれに加え、国民の国防意識を向上させることの重要性をも深く考え、テロ対処に関する小冊子の配布など、各種の取組に邁進していると考えられます。
以上の事を実地に見聞して、スウェーデンの外交安保政策は、我が国も学ぶことが多いと思いました。一方で地理的、国の規模を考えて日本流の政策にアレンジして行く必要もあります。例えば、緊急時(テロなどの発生時)における対応ですが、人口(年齢構成、世帯数なども含む)や地域の事情(地形、交通状況、予算規模など)が自治体によって大きく異なることが多く、国が対処方針を示したとしても、自治体レベルでの具体的な対処要領を策定しておく必要があります。
地域によって大きく異なる人口や面積など、日本の国家規模を考えると、国家の任務である安全保障に関わる各種施策についても、政府と基礎自治体の連携も不可欠と考えられます。さらに言えば基礎自治体に関しても、今後の我が国の安全保障政策の一翼を担うことが、より強固な国防体制を作ることの要訣と考えます。
複雑化・高度化する日本周辺の安全保障環境を考えると、都道府県・市町村自治体の議会・執行部においても、国防の任務に当たる局面が発生することは否定し得ません。
今後の研修においては、国防を考える場合に地域の視点を持ちつつ、しっかりと現場に入り実現性と実効性のある活動・提言を目指して参りたいと思います。
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Akifumi Kokabu
第37期
こかぶ・あきふみ
弁理士