活動報告

Activity Archives

日本を守る産業(1) ~日油株式会社~

日本を守る産業(1) ~日油株式会社~

“バイオから宇宙まで”をキャッチフレーズに多くの事業を手掛ける日油株式会社本社及び武豊工場を訪問させて頂きました。同社は、H-ⅡAなどの宇宙開発用ロケットの固体推進薬を生産・開発出来る国内唯一の企業です。この度の訪問について報告致したいと思います。
——————————————————————————
 
GPS、インターネット、スマートフォン…
現在の生活で、これらを使用しない日はおそらく無いでしょう。これらは衛星通信という“宇宙技術”を活用している点で共通しています。通常あまり触れることのない宇宙技術ですが、我々の生活に深く根差しています。
それに加え、宇宙技術は日常生活のみならず国防上も重要な意味を持ちます。
例えば、
 ・中国公船等の領海侵入を人工衛星により宇宙から監視すること(宇宙海洋監視)
 ・北朝鮮等からのミサイル攻撃を宇宙空間で迎撃すること(弾道ミサイル防衛)
は宇宙技術に基礎に置く、重要な国防上の任務です。
 
この様に、宇宙技術は『国民の生活』、『国家の安全』を支えており、宇宙に関わる産業・技術をどの様に維持・発展させて行くかは、国家として最も重要な意志(=国家戦略)の1つであると私は考えます。そうした宇宙に関わる現場を垣間見るため、愛知県武豊町(たけとよ)に所在する日油株式会社武豊工場を訪問致しました。今回は訪問にて見聞した事項、考えた事について述べたいと思います。
 
日油株式会社の創業は古く明治に遡ります。今回訪問した武豊工場においては、1920年代初めの工場完成から砲弾・ロケットなどに関わる発射薬事業に携わっており、武豊工場の歴史も間もなく1世紀となります。同社は現在、ロケット推進薬などに関わる化薬事業から、医薬原料に関わるライフサイエンス、プラズマテレビのディスプレイ材料、さらには食品まで手掛けており、“バイオから宇宙まで”というキャッチフレーズが体現されている総合化学メーカーです。
今回については、ロケット用推進薬製造に関わる工程などを拝見致しました。
製造工程では、“精密性”と“安全性”が特に追求されていると思われます。
いわゆる固体燃料であるロケットなどの推進薬は、一度着火すると、燃料全体が燃え尽きるまで燃焼します。従って、燃焼する時間や、エネルギー出力を制御することに高度な技術が要求されます。
その例を挙げてみますと、
 ・燃料そのものの素材
 ・撹拌(かくはん:均一な濃度にするため掻き混ぜること)
 ・形状(燃焼時間を制御するため特徴的な形に仕上げること)
 ・真空技術(燃料に気泡などが入らない様に超高真空下で凝固させること)
などがあり、それぞれの技術が企業機密・職人技的なノウハウであることは言うまでもありません。
推進薬は火薬類取扱法の適用範囲内であり、製造に関わる工程は法律により所定の安全策を取る事になります。例えば、工程により建屋を分ける事や、防護壁(土塁:どるい)を設置することなどが挙げられます。自動車や電化製品など、巨大な工場内にて、ベルトコンベヤーなどで製品が流れている様な工場風景とは大きく異なります。
 
宇宙ロケット・砲弾などに関わる推進薬は、この様な特殊な技術・設備を有することによって、はじめて製造出来ることになります。こうした推進薬に関わる技術は、宇宙開発や国防において最も中核的な部分であると私は思います。何故ならば、ロケット自体を製作しても宇宙に行けなければ宇宙開発は不可能であり、頑強な戦車があったとしても砲弾が無ければ鉄の塊に過ぎません。これらロケット・戦車などを、本来の役目を果たすための“力”を与えるのが推進薬だと考えるからです。
 
宇宙開発用ロケット用推進薬を生産する事が出来る唯一の企業が日油株式会社と述べましたが、我々はその“唯一”という意味を深く考える必要があります。
国民の生活、国家の安全に不可欠な宇宙技術ですが、これを研究開発するためにも、今後も宇宙に行き続ける必要があります。そのための手段を、日本が自国の産業・技術で確保する事は、独立国として不可欠です。現状では、その推進薬を生産出来る産業が日本に“一つしかない”という事です。ここが断たれては、日本が独自に宇宙開発する手段が断たれることを意味しており、最終的には、日本が自前で国民の生活を維持し、国家の安全を守る事が出来なくなる事を暗示していると私は考えています。産業に関わる政策は、雇用促進・経済発展のみに留まることではなく、分野によって、全ての国民の生活・安全に関わってくるものであると、この度の日油株式会社への訪問で強く感じました。
 
今後においては、そうした産業政策や産業活動に貢献出来るように引き続き、現地現場での活動を継続して参りたいと思います。
末筆でありますが、この度は日油株式会社本社及び武豊工場の皆様に大変お世話になりました。深く御礼申し上げ、報告とさせて頂きます。

Back

小甲顕史の活動報告

Activity Archives

Akifumi Kokabu

小甲顕史

第37期

小甲 顕史

こかぶ・あきふみ

弁理士

プロフィールを見る
松下政経塾とは
About
松下政経塾とは、松下幸之助が設立した、
未来のリーダーを育成する公益財団法人です。
View More
塾生募集
Application
松下政経塾は、志を持つ未来のリーダーに
広く門戸を開いています。
View More
門