Thesis
日本において高齢化は慢性的な国家課題です。近年、介護費の抑制の観点から、「高齢者の自立した生活」や「介護予防」という言葉を耳にすることがあります。私たちの研究は、ある意味で「介護のお世話にならない」ことを示す「自立」という言葉が強調された、これらの施策への素朴な疑問からはじまりました。この「自立」という言葉によって切り取ることで、人間誰しもが経験する「老い」という性を費用換算のみで劣位と判断することにつながるのではないでしょうか。こうしたお互いをお互いの物差しで測り合う社会は、誰もが安心して過ごせる社会といえるのでしょうか。
私たち社会保障研究会は、今一度、なんのために健康であるべきなのか、自立という言葉は何を示しているのか、サービスの利用者である高齢者が本当に求めるのは何なのか、その原点に立ち返りたいと考え研究をはじめました。
全国の地域を訪ね、医療関係者、NPO、自治会、行政、ボランティアなど様々な立場で介護予防に取り組む皆様から学びを頂きました。地域の良さを活かしつつ、いかに持続可能なコミュニティをつくるか。こうした観点で自治体規模ごとに検討した「地域に根差した自立型介護予防ビジョン」を提言書にいたしました。ご一読いただければ幸いです。
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