論考

Thesis

自分の本質を開花させて生きる

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共同研究

1998/5/29

時代は「勝ち負け」の発想から「共同創造」に移りつつある田近秀敏塾員(松下政経塾第3期生)はそう考える。彼の仕事はコンサルティングと人材育成。そしてそれを通してリーダーシップを発揮する人々を生み出し続けることだ。松下幸之助塾主との出会いから人々の可能性を発見する仕事に至るまでの道のりはどんなものだったのか。

人生に偶然はないと言います。松下幸之助塾主との出会いは、私にとってまさに人生の選択のときでした。その価値は第一に「志を持って生きる」ということが身に付いたことです。志とは単なる目標や自己実現ではなく、世の中の変革に影響を与える明確な意図を言うのではないでしょうか。「世の中の変革に関わるリーダーとして生きるならば、今自分に何ができるだろうか」という自分への問いかけと共に前に進んでいくことが大切だと学びました。

 松下塾主と共有した志は、松下政経塾の塾是の中に凝縮されています。「真に国家と国民を愛し、新しい人間観に基づく政治・経営の理念を探求し、人類の繁栄幸福と世界の平和に貢献しよう」という表現です。そのような大きな理念を実現するためにはそれを共有した人々がそれぞれの天分を生かした事業を通して理念の具現に取り組む必要があります。いくつかの登山ルートから登るけれども目指す頂上は一つだということです。政経塾内外での様々な活動を通して私は、自分がコーチをする能力に長けているように思いました。そこでコンサルテーション、とりわけ人材育成分野を事業領域としました。とにかく面白い仕事です。感動のある仕事です。

 具体的な領域としては4つの柱があります。まず人材組織診断を含めた経営協力。2つめは企業向けの各種ビジネス・トレーニング。3つめは自己啓発的、能力開発的な各種公開講座。4つめはカウンセリングの分野です。人が自分の可能性を発見し、独自性を受け入れ、才能に目覚める時、目の色が変わります。使う言葉が変わり、発しているエネルギーが変わります。チェンジ(別の人になろうとする)ではなく、トランスフォーメイション(自分の本質を開花させて生きようとする)が起こる時、人は至高体験と共に人生に対するコミットメント(専念する気持ち)を手にしています。
 人生の目的が自己満足から他に貢献しようというレベルへとシフトしていくと、人は自分がリーダーであるという立場を確立し始めます。ますます当てになる人に成長していきます。そして組織の中で人材が組織の目的に一致し整列する時、組織風土がより健全な方向に動き始めます。このようにして私は人々のビジョンの実現に関わっています。

 私の会社はコォ・クリエイト・ジャパンと言います。コォ・クリエイションとは共同創造という意味です。社会のパラダイム(枠組み)の1つは「勝ち負けの競争」です。競争はそれ自体悪いものだとは言えません。ただ、行き過ぎると調和を失います。私たちは「勝ち負け」「依存か自立か」の発想から「ともに勝つ」発想にシフトし、「共同創造」「相互依存」の関係を生み出していく必要があります。現代は大競争時代だという人もいます。朝を迎える前の闇がもっとも暗く感じられるように、私たちは新しいパラダイムを迎える前の闇を体験しているのかもしれません。
 私の使命は一人でも多くのリーダーシップを発揮する人々を生み出すことです。次の時代は質の高いリーダーシップを持った普通の人々の働きによって迎えていきたいと思います。

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