松下政経塾 The Matsushita Institute of
Government and Management

日本語英語


塾生レポート 一覧へ戻る
1998年4月

塾生レポート

新時代の社会福祉~地域福祉の新展開
森本真治/卒塾生

 

  • はじめに
  • いよいよ、フェロー活動がスタートした。私の研究活動テーマは「これからの成熟社会における地域福祉のあり方」である。研究をすすめるにあたっては、まず始めにこのテーマに関する自分なりの理念が必要であろう。これから先、実際に現場に赴いての先進事例研究が中心となっていくであろうが、今月の月例報告では活動前に自分なりに考える社会福祉のあり方、地域福祉のめざすべき方向について述べさせてもらう。

     

    2、日本の社会福祉の流れ

    近年、日本の社会福祉の姿は、経済・社会の変動をうけて大きな変化が要求されている。戦後の高度経済成長時代において一貫して行われてきた社会福祉は、憲法25条の「生存権」、つまり「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」という理念に基づいていた。特に社会制度、資本主義制度の構造的所産により生活困窮に陥った者を対象とした「救貧」的色彩が強く、①無差別平等に、②国家責任のもと、③行政措置による一律のサービス提供が行われてきた。

    しかし日本も高度経済成長をとげ、低成長・安定の時代に入っていくなかで、社会状況も少子・高齢化の進展、核家族化や女性の社会進出による家庭機能の変化等状況は一変している。それに伴い、社会福祉制度も「弱者救済」にとどまらず「国民全体の生活の安定を支える役割」を果たす必要がある。つまりこれまでの憲法25条の理念から憲法13条の「個人の尊重・幸福追求権・公共の福祉」にある「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求権に対する国民の権利は、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」という理念への福祉の支柱の転換である。

    このような考えのもとで実際に福祉改革も行われている。具体的な改革の内容についてここでは省略させてもらうが、流れの方向としては以下の5点に整理できる。

    1. 分権化
    2. 1990年の「老人福祉法等の一部を改正する法律」いわゆる「8法改正」により国から市町村へ措置権限が委譲され、住民に身近な市町村が施設福祉と在宅福祉を一体的に運営できる体制となった。権限委譲にあわせて、老人保健福祉計画を始めとする保健福祉計画の策定が市町村に義務化され、市町村が主体となり福祉を推進していくことになった。

    3. 計画化
    4. 市町村福祉の実現とともに、地方老人保健福祉計画の策定、これに続いて地方障害者福祉計画の策定、児童福祉分野でも地方エンゼルプランの策定など、福祉分野ごとの計画策定の義務化と計画実施が求められている。計画内容も単なる施策項目にとどまらず、マンパワーや施設整備を含めた、ハード・ソフト両面にわたる福祉サービスの量的整備目標を設定することが求められる。

    5. 多元化
    6. 住民のニーズの多様化と高度化に伴い、従来の公共福祉サービスのみではこれらに充分な対応をすることが困難になり、住民参加型福祉サービスの広がりが求められる。また民間企業の福祉関連事業への参入によるシルバーサービス等の市場型福祉サービスの拡大も望まれる。

      このよに、特に在宅福祉サービス領域では、これまでの行政や社会福祉法人による公的サービスに加えて、NPOや民間企業も加えた多元化の傾向が顕著になってきた。

    7. 統合化
    8. 高齢者や障害者などの地域での生活を支えていくには、保健・医療・福祉の密接な連携、協働が図られ、一人一人に応じた援助体制が確立される必要がある。この保健・医療・福祉の連携は、処遇の面では現場のワーカーの“チームアプローチ”として、また、これを施策に結び付ける意味で、“機関・組織のネットワーク”の両面で展開される必要がある。

    9. 地域化

    「高齢者保健福祉推進10ヵ年戦略」のサービスエリアは、デイサービスなどをみると中学校区に設定されているが、最近ではこれをさらに小学校区にまで進めていこうという方向がある。

    在宅福祉サービスが主流となる中で、公的福祉サービスも従来のような市町村行政区単位から、住民の生活圏に合わせた形でシステムづくりが必要となっており、また住民活動やボランティア活動も小地域のネットワークづくり活動や、当事者の社会参加を支援する取り組みなど当事者を中心とした小地域福祉活動の必要性がいわれている。

     

    1. めざすべき地域福祉の方向

    以上のような社会福祉に関する方向の流れがあるわけであるが、この中でも特に、「福祉の地域化」に関して今後一層重要さが増してくるように思われる。まちづくりの視点からも「誰もが普通に、対等に暮らせるまち」いわゆるノーマライゼーション理念に基づく地域づくりの必要性が叫ばれ始め、そのためにも地域福祉推進システムを構築していく必要がある。

    では地域福祉を推進していくために必要な条件とはどのようなものがあるか。以下の5点が考えられる

    1. 参加…住民の福祉活動への参加と組織化

    ②支援…①に対する支援体制づくり

    ③開発・創造…実際のニーズに即したサービスの開発、創造

    ④協働…地域内の機関・団体とのネットワークづくり

    ⑤計画…各組識の役割分担を行い、総合的・体系的な事業活動が行えるよう計画的に推進

    していく。

    このシステムづくりを生活圏の中で行っていく必要がある。私はこの地域の単位を小学校区に設定し、それぞれの地域ごとにその特性にあったシステムづくりを行い自立的なまちが構築されていくことが望ましいと考える。

    そして今後のフェロー活動において、地域福祉活動に積極的に取り組んでいる先進地を見ていき、最終的に私の地元において地元の地域特性にあったシステムづくりに携わっていけるようになればと考えている。

     

    1998年4月 執筆
    1. HOME >
    2. 卒塾生一覧 >
    3. 森本真治 >
    4. 新時代の社会福祉~地域福祉の新展開