Thesis
4月の月例報告でも述べさせてもらったが、近年の社会福祉の流れとして急速な「分権化」というものがある。そしてサービス供給システムも住民の生活圏に合わせた形でつくられ、福祉サービスも在宅において行うのが主流となってきている。
しかしながら在宅サービスを行う上で問題になってくるのが、居住環境である。「日本人はウサギ小屋に住んでいる」と言われ、また段差の多い構造など日本の居住環境は在宅サービスを受ける上でかなり不便が多い。最近福祉サービス利用者の居住環境整備についての関心が高まり、建設・厚生両省から施策が展開されつつある。介護保険法では、居住環境整備は「住宅改修費の支給」として位置づけられることとなった。今月の月例報告では先日広島で行われた第12回日本地域福祉学会において報告された内容を元にして居住環境整備の論点について述べる。
1、 介護保険法における居住環境整備
介護保険法第45条1において居住環境整備は「市町村は、居宅要介護被保険者が、手すりの取り付けその他の厚生大臣が定める種類の住宅の改修を行ったときは、当該居宅要介護被保険者に対し、居宅介護住宅改修費を支給する。」と位置づけられた。
2,介護保険法と居住環境整備をめぐる諸課題
介護保険法制定の一連論議のなかで、居住環境整備に関する検討は少なかった。介護基盤の整備についての議論はさかんであり、特別養護老人ホーム、ホームヘルパーの数等について多くの危惧が唱えられたが、そこに「居住環境」や「住宅」は含まれていなかった。在宅福祉を志向する介護保険法において、その介護基盤として「在宅」の「宅」の部分にはほとんど注意が払われなかった。簡単な改修のみをその範囲とする介護保険法での居住環境整備の内容は、必ずしも十分とは言えないが、高齢者への一定の居住環境(整備)の保障という意味においては、評価できる。さらに、介護保険法導入により居住環境整備と社会福祉政策の関わり方について議論が起きてくることが望まれる。
Thesis
Shinji Morimoto
第18期
もりもと・しんじ
参議院議員/広島選挙区/立憲民主党