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インドネシアで自国の魅力を伝える世界の国々

インドネシアで自国の魅力を伝える世界の国々

民主化が進み、人口増加を続ける世界最大のイスラム国家インドネシアで、各国が自国のイメージ向上のため、積極的な広報文化活動を行っています。
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 私は、松下政経塾において、日本の広報外交をテーマに研究を行っています。今年の1月から3月まで、対ASEAN諸国の広報外交に関する情報収集のため、ジャカルタを拠点に、東南アジア地域で研修活動を行ってきました。
 
 インドネシアは人口2億5900万人の地域大国で、世界最大のイスラム国家でもあります。民主化が進み、人口増加を続けるこの国に、世界の注目が集まっています。その首都のジャカルタは、世界屈指のメガシティで、ASEAN事務局をはじめ、各国政府代表部、国際機関、多国籍企業などが集まっています。
 世界の多くの主要国は、自国の情報文化発信施設をジャカルタに置いています。私が見学・インタビューのために訪れた中から、3つをご紹介したいと思います。いずれの施設も、その国ごとの特色が顕著に出ており、日本が学ぶことのできる点が多くありました。
 
 米国の広報文化施設”@America”は、中心部の巨大ショッピングモール”Pacific Mall Place”の中に置かれており、“買い物のついでに”感覚で行くことができます。モール社会であるインドネシアの特性をよく分析した上での立地で、交通の不便なジャカルタにおいて“行きやすさ”はとても大切な基準だと思いました。中の大きなホールでは米国の有識者や著名人の講演が頻繁に行われており、米国の大学に留学したいと思わせるような仕組みになっています。
 “@America”の入っているモールのすぐ向かいのビルには、韓国文化院があります。日本では下火になっている韓流文化の人気も、東南アジアでは依然として高いものがあります。サムスン製の大きなテレビからは、韓国を紹介する魅力的な映像が流れており、韓国文化を体験できるコーナーもありました。
 一番スタイリッシュなのは、フランスの”IFI”でしょうか。大使館に併設しているため、警備が厳重で外観も無機質ですが、一歩敷地内に入ると、ビストロがあり、オシャレなオブジェがあり、美的センスはやはり抜群です。ジャカルタにいながらパリ気分が味わえるといった感じでした。
 
 インドネシアにいると、多くのインドネシア人が日本に親近感を持っていることを感じます。しかし、昨年のジャカルタ・バンドン高速鉄道の受注競争で中国に負けたことが象徴しているように、新興諸国の台頭によって、戦後日本が築いてきた信用・信頼だけでは国際競争に太刀打ちできない時代になってきました。この現象はインドネシアのみならず、東南アジア全体、世界全体に広がっていくのだと思います。各国は、自国のイメージ向上のため、積極的な広報活動をしています。刻々と変わる国際情勢の中で、日本の良さをより積極的・より効果的にアピールするために何をするべきなのかを常に考え続けなければならないと強く感じました。
 一方で、競争的側面のみではなく、多国間で協力して広報外交をしていくこともこれからの時代には必要になってくると思いました。例えば、韓国文化院の職員の方へのインタビューの中で、日本の国際交流基金との間で情報交換などの交流も行っているとの話を聞きました。広報外交の世界において、日本と韓国とはライバル関係になることが多いですが、今後は共通の利益に基づいて協力できることもあるかもしれません。また、米国の研究者の中には、“@America”を他の東南アジア諸国も含めた多国間交流のためにも活用するべきだとの声もあります。既存の価値観にとらわれない形での広報外交を考えていくべきではないでしょうか。
 
 現場で得た学びを生かしながら、卒塾まで残り1年を切った松下政経塾での研修を進めていきたいと思っています。

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佐野裕太の活動報告

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Yuta Sano

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第34期

佐野 裕太

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日本の広報文化外交、アジア太平洋地域の国際関係

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