Thesis
かつて「見渡す限り草原」と謳われた内モンゴル。しかし今では、人為的な自然破壊と人口増加によって同自治区総面積の60%が沙漠と化している。そこで、これ以上の沙漠化を阻止しようと、同地に植林する運動が起こっている。今年8月、その植林隊のリーダーとして運動に参加した高野靖子塾員(第17期生)から寄せられたレポートを紹介する。
私がこの問題に関わるきっかけとなったのは、昨年4月、私がオーガナイザーを務める地域研究会に、内モンゴル出身のボリジギン・セルゲレン氏(29)を招いたことによる。セルゲレン氏は、現在、満州国の歴史を研究するため東京大学に留学中である。彼に、内モンゴルの沙漠化について話してもらった。内モンゴルでは、今現在も、沙漠化が急速に進行しており、住民は砂嵐が原因で移住を命じられているという。そうした故郷の人々の哀れな姿に胸を打たれた彼は、沙漠をこれ以上広げまいと、今春、「内モンゴル沙漠化防止植林の会」を創設した。
これを知った私は、留学生活を研究だけに費やすのではなく、故郷の役に立ちたい、故郷と日本をつなぐ架け橋になりたいという彼の姿に感動し、植林隊のリーダーとなった。
プログラムは8月11日からの10日間で行われた。まず最初の3日間は、同自治区南東部ナイマン旗のホルチン沙漠で現地の人々と植林を行い、自治体や中学校と交流会を持った。その後、草原地帯の西ウジムチンに移り、ゲル生活、乗馬、さらに遊牧を営んでいるモンゴル族の家庭を訪問するなど、内モンゴルの生活・文化を体験した。
日本からの参加者は私を含め19人。20代後半から30代前半の社会人を中心に学生が数人。世相を反映してか、女性が多く14人だった。専門家の助言が必要ということで、乾燥地工学を研究中の桑畠健也塾員(第9期生)にもボランティアで参加してもらった。
本植林活動は現地住民を主体としたもので、日本からの参加者は協力者という位置づけである。しかし、現地の人の沙漠化に対する危機感は薄く、まだこの活動を自分自身の問題として受けとめていない。今後の課題は、植林事業によって発生する収益を現地に還元することで、住民の参加意識を徐々に高めていくことだろう。
【今後の活動予定】
来年4月、5月、8月に植林を予定しています。興味のある方は、ホームページにアクセスして下さい。募金も受け付けています。
「内モンゴル沙漠化防止植林の会」ホームページ http://www2.neweb.ne.jp/wd/sergelen/desert.html
Thesis
Yasuko Takano
第17期
たかの・やすこ
東京大学大学院法学政治学研究科 助手・留学生担当
Mission
留学生政策、入管政策、移民政策、 国際交流、夫婦別姓、ワークライフバランス