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製造実習/販売実習
2010年12月

研修レポート

製造実習・販売実習レポート ~働くとは何か、信頼とは何か~
片山清宏/卒塾生

 

 「自分はこの地道な作業を一生の仕事として続けることができるのだろうか」「働くとは何だろう」「生きがいとは何だろう」。私は、工場のラインを前に黙々と作業を続けながら自問していた。

 我々31期生は、2010年9月14日から28日までの約2週間、滋賀のパナホーム本社工場で製造実習を行った。パナホーム株式会社の経営理念から商品開発、生産管理、安全管理、モデルハウスの見学など、期間中は様々な研修をさせていただいたが、その中でもメインは工場実習だった。私は、住宅の外壁パネルへのバックアップ材挿入とマスキングテープ貼りを担当した。

 毎朝8時30分に工場の製造ラインに立ち作業開始。次から次へとラインの台車に固定された外壁パネルが流れてくる。数十秒という短い時間で担当作業を済ませ、後工程に流さなくてはならない。周りの従業員は無駄なく動き、少しでも作業のリードタイムを無くそうと競い合うように作業をこなしている。まさに息をつく暇もないほどだ。

 作業自体は単調であるが、無駄のない作業はとても難しい。外壁パネルは窓の形や数によって型が異なり、それぞれで作業内容が違ってくるからだ。慣れない環境と緊張のせいで作業が思うように進まない。私は度々、120秒の規定時間を過ぎて赤いランプを点滅させ、ラインの流れを乱してしまった。最初は後工程の従業員が補助に入って助けてくれるが、それを数回重ねると容赦なく周りから激が飛んだ。しかし、数日が経過すると少し余裕が出てきて、自分の作業をこなしながら、横目で前工程のパネルの型を見ることができるようになった。そうすると頭の中でそのパネルの作業イメージができ、実際にパネルが流れて来たらすぐに作業に取り掛かることができるようにもなった。

 しかし、ふと思った。「自分はこの地道な作業を一生の仕事として続けることができるのだろうか」「働くとは何だろう」「生きがいとは何だろう」…。なんとも言い難いこの感覚は、実際に工場で働かせていただいてみて初めて感じたものだった。世の中の全ての仕事は何らかの形で社会を豊かにすることに繋がっている。そうであるならば、全ての仕事は尊いものであり、そこには良いも悪いもない。しかし、また一方で現実には辛い仕事もある。それを誰かがやらなければならない現実もある。私は製造ラインで作業をしながら、自分に不甲斐無さを感じ、複雑な心境の中で自問し続けた。

 実際に従業員の働く姿を見て感じたのは、「品質への徹底したこだわりと、作業効率を限界まで高めようとするプロ意識」であった。そして、その意識の高さはパナホーム社員としての「誇り」と「使命感」から来ているのだと実感するに至った。人が生活する「住まい」を提供するという意義深い仕事をしていることが、従業員一人ひとりの心を支えているのだ。人間が仕事をする上で重要なこと、それは「自分の仕事がお客様ひいては社会の貢献に繋がっていることを自覚できること」である。製造実習という貴重な経験を通して、私は身をもってこれを実感することとなった。

 11月29日から12月9日までの約10日間は、パナソニックの販売店、いわゆる「街の電気屋さん」で販売実習を行った。私は店頭での商品説明以外にも、店長に同行し、商品をお客様へ納品し設置する作業の補助をさせていただいた。テレビ、エアコン、洗濯機、地デジアンテナの設置にはじまり、電球の交換、FAXやインターホン、ガスレンジの修理など様々な仕事があった。

 まず驚いたのは、店長一人がこなす仕事の幅広さだった。営業(商談)、店頭販売、商品管理、運搬・設置、工事、伝票処理、アフターフォロー、修理、クレーム処理等を全て一人でこなしている。しかも、数百に及ぶパナソニック製品の知識を有している。これは他の店員も同じだった。一人の店員が一連の仕事を担当しているからこそ、お客様の家族構成、性格、家電の設置状況・買い替え時期等を詳細に把握でき、お客様に合わせた丁寧な対応が可能となるのだ。実際にお客様のご自宅に訪問した際には、パナソニック製品以外の家電の使い方の説明を求められたり、修理を依頼されたりすることもあった。しかし、こうしたこと一つひとつに親切丁寧に対応を続けることによってお客様からの「信頼」を築くことができ、それが次の販売につながるのである。

 60歳以上の高齢者世帯のお客様が非常に多いことにも驚いた。「なぜ、量販店ではなく、うちの販売店で買ってくれたのですか」という私の質問に対し、70代の女性は、「私は機械のことは全然分からない。でも、買うときも故障のときも、お店に電話をすれば、すぐにいつもの店員さんが来てくれるから安心。しかも、親切で丁寧だから」と答えた。私はこの言葉がとても印象に残っている。

 「販売店(街の電気屋さん)は、これからどうあるべきか」。この答を見つけることが、私が販売実習に入る前に自らに課した課題の一つだった。実習を終えて初めてその答が見えてきた。販売店の強みは、その地域のお客様一人ひとりの要望に合わせて親切丁寧に質の高いサービスを提供できること。今後、高齢化はますます進み、独居老人も増える。さらに一軒あたりの家電数もますます増加する。高齢者に「家電」だけでなく「安心」を提供することによって、地域の高齢者の住みやすさ向上の支援ができる販売店の役割はますます高まるだろう。

 製造実習では「働くことの意味」を深く考える機会をいただき、また、販売実習では「信頼」を築く難しさと重要性を肌で感じることができた。国家や自治体を経営する上でも、全ての職員が働くことの意味や仕事のやりがいを認識し、国民一人ひとり、市民一人ひとりから信頼される効率的で質の高い政治・行政を実現していくことが望まれている。まさに、松下幸之助塾主が求めた「政治の生産性向上」である。今回の実習での経験を糧に、今後も自らの国家経営と自治体経営の理念を確立すべく探求を続けていきたい。

2010年12月 執筆
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