松下政経塾 The Matsushita Institute of
Goverment and Management

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製造実習・販売実習
2009年11月

研修レポート

経営観レポート
千葉修平/卒塾生

 

 昨年の製造業研修、販売店実習を通じ、経営とは一企業の営みを超えた、社会貢献の一種であり、その要諦は人間の特質を知り、その天分を生かすことであり、経営者の心構え次第で、理想的な経営の実現に近づいていくことが分かった。各人間が持つ特質を最大限に生かすための手段こそが、経営理念であることも理解出来た。経営の本質は、国家の運営にも通じるものであり、今後、研修を通じて国家経営の在り方を考える上で、大きなヒントを得ることが出来た。

 松下幸之助塾主が言うよう、人間は互いに飼い合いをしている。そして、人を動かすのは理論ではなく、感激・感動である。安岡正篤先生によれば、人間が動くのは欲と使命感だという。ただ、欲が原動力ならば、それが達成された瞬間に終わってしまうが、使命感が動機ならば、部下は永続的に、自発的に動くという。松下塾主が言う経営理念を示すことは、社員に使命感を与えることであると考える。経営理念を通じて、社員各自に社会における役割を明確にし、生きがいを与えることなのだ。塾主自身も、終戦後の困難の中で支えになったのは、生産人としての使命感であり、何のためにこの経営を行っていくのかという会社の経営理念であった、と振り返っている。

 滋賀のパナホーム工場では、ラインの一員として仕事をしたが、そこで印象に残った事は、作業されていた方々が、会社、製品、そしてお客様に対して示したロイヤリティの高さだった。「自分たちが作った家に100年後も住んでもらう。そのためには快適で丈夫でなければならない」。そんな心意気を感じた。そして、その自分たちの創作物を一種の芸術作品のように考え、その向こう側には購入客とその家族の幸せまでも見ていた。

 販売実習でも、やはり、「お客様のために何が出来るのか」を第一に考え、理想的なライフスタイルを提案する形で商品を販売していた。社員の一人は、自分の店の利益を超えて、お客様にとっての視点からの提案を行っていた。短期的視点で考えれば、自分の利益には損でも、客との信頼関係を築くという長期的視点に立てば、それは天地自然の理にかなうと思った。

 両者に共通することは、「自分たちの商売を通じて、社会に貢献しよう、人々の幸せに貢献しよう」という経営理念の存在の大きさだ。明確な経営理念があり、それが浸透することで、社員も社会の中での自分の役割を見出し、生きがいを感じて働ける。その生きがいが、店に活気・活力を与え、その心意気がお客様にも伝わり、良好な信頼関係を築くことに成功していた。

 さらに、経営者の情熱が現場に伝える力、というものにも気付いた。経営者が燃えることで、社員の士気が違ってくる。まさしく人間は理ではなく、感動で動くのだと思った。そして、この経営者の情熱自身も、やはり経営理念・大義の有無に行き着くのではないだろうか。

 翻って、自らが志す政治の世界を垣間見れば、国家理念と呼べるものは未だ確立されていない。政治家の情熱を感じない。松下塾主は、「国家に『この国をどのように進めていくか』という経営理念があれば、各界各層の国民も、それに基づいて個人として、また組織、団体としての進み方を適切に定めやすく、そこから力強い活動も生まれてくる。また他国との関係にしても、しっかりとした方針のもとに主張すべきは主張しつつ、適正な協調を生み出していきやすい」と述べる。地方分権、財政問題、普天間基地をめぐる安全保障問題など、結局、国家理念がないばかりに「この国のかたち」が見えず、国民のみならず、政治自身も右往左往しているのが現状ではないだろうか。

 松下塾主は、経営理念は正しい人生観、社会観、世界観に深く根差したものでなければならない。それは自然の摂理にかなったものでなければならない、と述べている。日々の研修を通じて、自らの人生観、社会観、世界観を磨く必要性を一層感じた。そして、そのヒントは実社会での経験にあり、経験を通じ自ら考えることこそが重要だと分かった。安岡先生が言う「知慧の学問」であり、来年度の研修は、現地現場に敢然と飛び込む心構えを持って臨む所存だ。

2009年11月 執筆
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