松下政経塾 The Matsushita Institute of
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製造実習
2008年7月

研修レポート

製造実習レポート(経営観)
大谷明/卒塾生

 

 夏本番を迎えた7月7日~31日の約4週間、滋賀県東近江市にあるパナホーム株式会社西部HRセンターにて、製造実習を行ってきた。その間、10日間を実際に工場のラインに入れていただき、現場作業を体験させていただいた。我々が体験した第三工場は、家の外壁を作っている工場だ。10日間を3日、3日、4日に分け、壁の断熱材を挿入するNEST組立てライン、外壁の仕上げ工程のひとつ、コーキングを塗布するNESTシーリングライン、コーキング前のマスキングテープを張るNESTタッチアップラインの3箇所を体験することが出来た。慣れない肉体労働で大変だったが、工場という職場を実感できる良い体験であった。なかでも断熱材挿入の体験は工場現場実習初めてでもあり、特に印象深いものだった。

 現場実習のスタートは、壁の断熱材挿入作業。この初日が私にとっては非常に厳しく大変な1日であり、「これはシンドイ。あと9日間もつかな」と不安になるものだった。仕事内容は、内壁と外壁の間に断熱効果の高いロックウールを木枠の規格に合わせて詰め込んでいく作業だ。このロックウールが曲者で、細かい粉がもんもんと飛び散る。これが顔や服の間から肌に付着して痒い。7月夏、職場は蒸し風呂のような暑さ。ロックウール粉対策もあり、長袖長ズボンの作業着に、帽子とマスクといういでたちがたまらなく暑い。また、汗をかいた皮膚にロックウールの粉はくっつきやすく、汗を拭くたびに、その粉を皮膚にすり込むことになる。それで肌が赤くかぶれる。断熱材挿入の他にも、様々な作業が同時に行われ、ハードに動き回る。たまたま初日、急に休まれた方がいて、人数が少ない中での作業だったので、より一層動きもハードなものだった。夕方の終業時間までに、作業服は汗で色が変わっていた。

 「こんな中で毎日働く人達ってモチベーションは低いんじゃないか」という疑問が浮かぶ。しかし、一緒に働く方と話しをしていると、むしろ楽しんでいるようでもある。「この仕事、どんなことが楽しいですか」という私のぶしつけな質問に、派遣社員のTさんからこんな答えが返ってきた。「ここでは1棟、1棟順番に生産しているから、パネルの枚数が多ければ大きな家なのかなとか、1階と2階の壁枚数が違うとどんな間取り、デザインなのかなとか、想像するのが楽しい。また、どの地域のお客さんからの注文かを見て、どんな暮らしをしているのか想像するのも楽しい。お客さんにとって、高価な買い物だから、作る僕達もしっかりやらなくちゃと思う」と話していた。さらに、「建築部材の勉強しているんです。好きなんですよ。この教科書で勉強しているんだけど見る?」と建築部材の教科書を見せてくれた。本にはしっかり勉強のあとが見られた。

 この7月は生産量が多く、非常に忙しい時期ということもあり、毎日残業の日々。日曜日以外は土曜日、祝日も出勤となっていた。彼の生活も、朝は7時過ぎには出勤して作業を始め、夜は22時近くまで働く。その合間を縫って建築部材の勉強とは、頭が下がる。34歳派遣社員である彼の給料は、残業無しだと月給約19万円、フルに残業して約36万円だという。休めば給料は無く、昇進、ボーナスも無い。社員に比べ、雇用の安定度も低い。決して条件が良いわけではないだろう。彼のようにモチベーションが高い人が、なりたい状態に向かってチャレンジできる機会が確保される世の中でありたいと思う。

 工場全体を通して感じたことだが、〔1〕社員、派遣社員の方々のモチベーションが高いということだ。これは、工場成績や現状の「見える化」によって目標の明確化と注意の喚起を促すことで、共通認識と目標に向かって結束することが出来るということであろう。いかに速く、正確に生産できるかの記録達成意識を盛り上げるのにも役立っているようだ。それから、〔2〕品質管理の意識の高さがあげられる。一人ひとりが、お客様への商品お届けイメージを持っている。部分を担当していても、完成後の部分位置づけを理解しているということだ。また、〔3〕時間パーコストの意識も高い。やるときはやる、休むときは休む、という意識の切り替えとメリハリが利いている。作業の中でも、「こうしておくと後が楽でしょ」という後工程への思いやりの言葉も多く聞くことがあった。

 今、地域経済の活性化は、多くの地方、地域が抱える課題である。様々な手法やアイディアが試みられ、一定の成果をあげている地域もある。しかし、多くの地域ではなかなか成果が得られていないのも現実であろう。工場誘致も、地域経済の活性化、雇用の創出にはよく出てくる手法である。ひとつの大規模工場の誘致が決まれば、一度に多くの雇用が創出され、経済の活性化に貢献するということは見方としてはあると思う。そういう意味では、経済活性化の即効薬とも言えるのかもしれない。では、工場という職場とはどのようなものなのだろうか。私にとって、今まで工場という職場での労働体験はなかった。今回の体験で全てを理解、実感出来たわけではないが、そこに思いを馳せる一助になったことは間違いない。工場という共同体で働く人々の職場環境、生活スタイル、不安や価値観、また、社員と派遣社員の格差、そういった生の実態状況にふれ、彼らに寄り添える政治を考える機会となった。

2008年7月 執筆
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