松下政経塾 The Matsushita Institute of
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関西研修
2007年5月

研修レポート

関西研修レポート 相手を慮る心と感謝、そして使命を確認した旅
熊谷大/卒塾生

 

 私にとって関西研修は、塾主松下幸之助の生きた軌跡をたどりながら、日本人の心を探り、自分とは何かを見つめなおす旅のようなものだった。自分の使命は何か、日本人として生まれ、物事を為すとき、自分は何を身に付けているのか、松下政経塾に入塾し、世界に対して自分が背負う役目とは何かを問い直す機会となった。

 たとえば、はじめに茶道のお点前を受けた。茶道は「和敬清寂」の考えのもと、掛け軸、生けた花、出される和菓子がそれぞれ、主客の思いに沿った形になるように、物語を紡ぎだしていく総合芸術だ。禅宗からの影響を色濃く受け、その所作、立ち居振る舞いを実践してみると、「相手のことを思いやる」という心が一貫していることに気が付く。お点前を出されたときには、相手を気遣い「お先に」という言葉を忘れない。茶碗を戻すときは茶碗の正面を相手側に向けて返す。箸で和菓子をつまめば、きれいにふき取り、茶道具は事前にきれいにしているにもかかわらず、相手を気遣い、再び清めの儀式を行う。常に相手の立場に立ったおもてなしが作法の基礎として成り立っている。そしてもう一つ大事な所作として、感謝の念があった。お茶を飲めることへの感謝、一杯のお茶を介して一期一会を得たことへの感謝。この見えない結びつきに感謝の意をささげる事こそ日本人として重要な鍵だと感じた。

 相手を思いやることと感謝を表す姿は、塾主松下幸之助の考えの根底に横たわっているのではないかと思う。衆知を集める、主座を保つ、そして和という松下幸之助が最も大事にし、実践した行動指針はまさに相手を尊重した結果誕生した。相手を思いやる心は究極的に「人間は偉大である」という新しい人間観を提唱するきっかけとして働く。ゆくゆくは万物一切を誕生せしめ、生かす大本の力、「根源」という考えになる。人間に与えられた天命は、万物を支配し、活かし切ること。その過程で感謝という行為で、協力を促し、お互いに持ちつ持たれつの関係を構築していく。人間は決して一人では生きていない。必ず他人がいて自分がいる。相手を尊重し、お互い様という感覚を持ちながら、他人と折り合い日々の生活を過ごす。それは日本人の有する「和」の感覚。日本人であることは和を尊び、体現すること。そしてこの和を実践するときに、注意しなければならないことは私心を挟まないことだ。私欲や私心が頭をもたげないように常に素直な心でいること。物事に捉われず素直に物事に正対したときに真実は見えてくる。

 二週間という短期間で、今日庵、真々庵、塾主墓参、松下電器本社、PHP研究所、舞鶴、宮津の田植え、大開町、光雲荘、松下電器資料館、修養団での禊、伊勢神宮と数々の研修を経験したが、そこで触れあい、出会った人々の全てが和を貴び感謝を表現して、周りとかかわり合いながら生きている。どんなに社会的地位が高くなっても偉くなったとしても、人は感謝協力なくして社会を生きていくことができない。相手を慮ること、そして感謝することで訪れる和という感覚。それを知る日本人として生を受けたからには、この和の精神でもって世界に貢献できる人物にこそなるべきで、それが、私の使命であると感じた。そういう意味では私の関西研修はいまだ終わっていない旅の途中でもある。

2007年5月 執筆
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