活動報告

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関西研修レポート

 今回の関西研修で、私は塾主・松下幸之助がまるで生きているかのように感じた。皆が塾主を慕い、昔話を楽しそうに話されている姿は、塾主があたかも傍におられるような感覚を覚えた。

 塾主・松下幸之助を「創業者」や、中には「おやじ」、「松下さん」と呼ぶ人がいた。皆がそろって口にするのは、「彼は素晴らしい。」という言葉であった。人間は2度死ぬという。一度は、体が滅びる時、そして2度目は人が語り継がなくなった時である。つまり、多くの人に愛されていた塾主は死んではいない。今も様々な人の心の中で生き続けている。

 我々30期生は1週間の関西研修で、塾主の生きた軌跡を辿るために、幼少時代を過ごした和歌山の千旦、創業の地の大開町、門真の本社、そしてPHPの地である真々庵を廻った。各地を廻りながらなぜ巨万の富を築いた塾主が、なぜ生誕の地に墓を造ることにこだわったのか、なぜ最後まで戸籍を大開町から移さなかったのか、と考えていた。和歌山の塾主の墓の周りには、今は生家もない。あるのは、墓そのものと落雷によって被害を受けた松だけである。しかし、塾主がこの地を選んだ事と常に本質(原点)をとても大切にされていた塾主の生き様とが重なってくる。塾主は、「物の本質」や「人間の根源」を探究していた。物づくりには「製品の本質」を理解するために、何度も従業員には常に「なぜ」ということを問いかけて現地現場を自分の足で回ったという。だからこそ最終的に自分の最後の地を本質(原点)である和歌山に選んだのではないかと思う。

 各地を廻る中で同時に塾主の影響を受けた様々な人に出会った。特に印象的な人は、松下電器OB会の松愛会にて副会長をされている佐藤氏である。佐藤氏は、松下電器退職後、地域の活性化に取り組んでおられる。そして、塾主の教えを信奉して、現地現場主義を大切にし、地域の方との対話から地域が活性化できない問題の本質を見つけるために献身していた。

 また、西成地区でリサイクル自転車業を営む中小企業の社長の言葉に心を打たれた。それは「私は幸之助さんの“青春とは心の若さである。”という言葉が好きなんだよね。」という何気ない一言だった。塾主のその言葉に感銘し、今を大切にいつまでも夢を忘れない気持ちで地域活動に取り組んでいた。その心の若さを持つ社長から我々に対し「世の中を変えてほしい」という熱いメッセージを頂いた。

 塾主をめぐる旅を振り返ると、時間を超えた塾主の影響力の凄さと、塾主が伝えてきた現地現場の大切さや衆知を集めることの大切さを垣間見ることができた。塾主は、大企業のトップに立った時も、社長室に居座るわけではなく、様々な現場に自ら足を運び、そして、様々な人との出会いを通して本質を探り続けた。塾主の本質へのこだわりが相手の心を突き動かし、亡くなってから20年もの月日が経つ今も、塾主を慕い、語り続け、その考え方を実践する人がいるのだと思う。

 政経塾設立後30年経つが、塾主が思い描いた日本とはほど遠いのが現状である。終身雇用制度が日本と特徴といわれた日本においても、多くの企業でリストラが行われ、その結果失業者が増え、社会は混迷を来している。塾主は、あの時日本の未来を憂いて政経塾を作った。しかし、今日の日本は良くなるどころかむしろ悪化しているといえる。塾主の思う日本とは、繁栄幸福と世界の平和に貢献できる日本であり、そのためには、政経塾の使命とは何か、そして塾生として私ができることは何かをもう一度考えてみたい。

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石井真人の活動報告

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Masato Ishii

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