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私は5月末から7か月間の期間を予定して、パソナグループ(以下パソナとする)での研修を開始した。[1]パソナの企業理念は「社会の問題点を解決する」であり、以下に続く使命・Pasona way私たちの行動指針・Pasona Group Sustainability 等もそれに準じるものとなっている。
パソナは2008年以降、働く人々の「真に豊かな生き方・働き方」の実現と夢のある新事業の創造、グループ全体のBCP対策の一環として、本社機能業務の一部を淡路島への移転を推進している。私が配属され、当面の業務を行っているパソナ農援隊はその中心事業の一つである農業を担うグループ会社である。[2]パソナ農援隊の理念は「地域の未来につながる持続可能な農業を目指す」である。単に農業を行うだけでなく、担い手の育成や耕作放棄地の利用等を通して、地域(この場合は特に淡路島)の課題を解決していくことを目指す。
パソナ農援隊での業務は以下の二つに大別される。①野菜の出荷に関わる業務。②パソナのイベントや会社に関わる業務。
①について述べる。パソナ農援隊の畑では約50種類の野菜を育て、収穫し、出荷している。50種類を育てることは非効率的であり、同一品種を多作することが一般的である今日の日本においては特殊なことであるらしい。これにより、淡路島内にあるフレンチ、イタリアン、鉄板焼きなどの様々に異なる種類のレストランへの多様な野菜の供給が可能になっている。また、後述するイベントを絶え間なく行うために収穫時期の異なる野菜を多く育てることが必要になる。
②について述べる。パソナ及びパソナ農援隊は農業体験を通して農業に触れる人口を増やし、だれもが何らかの生産を行う「総生産者計画」を実施している。その一環としてパソナ農援隊は田植え体験・収穫体験・植樹式・デジタルファーム等のイベントを断続的に行っている。対象はパソナ社員・学校(島内の小中学校・高校・専門学校・大学・大学院)・企業の研修等様々である。また、パソナの宿泊施設等に備え付けられている小さな畑の手入れ等も併せて担っている。
ここでは研修中の経験を踏まえ、経営と農業についての考えを述べる。
私が関わりを持った農業に携わる人の多くは野菜を商品として捉えている。そのため野菜と向き合いながら経営にも向き合っているように感じられた。ニンジンの例を挙げる。ニンジンの収穫の際には300キロ(これは多い場合の一週間の収穫量)に50キロほどは形が悪いことやひび割れを理由に通常の価格では販売することができない状態で収穫される。そのようなニンジンのうちいくつかは比較的状態が良好であり、割引で販売することができるものや、調理用として販売することができるものがある。これらをうまくピックアップして、どこ(どのレストラン、どの販売店)にいくらで提供することができるかが必ず検討される。その結果、廃棄されてしまうニンジンは300キロのうち20キロほどに抑えることができる。このように野菜の状態に応じて、販売先や価格を検討するといった創意工夫を凝らす行為は、とても経営的であると感じた。
野菜への接し方からも経営に関する示唆が得られた。私がトマトやズッキーニ、ワイン用のブドウなどに水をあげていると、しばしば「愛情を持ってよく育つように水をあげてください。おいしくなるようにかわいがってください」と指導される。出荷される野菜を袋に入れてシールを貼る時にも同様に愛情を込めることが求められる。このような姿勢で毎日に野菜に向き合っているうちにある人物が思い出された。松下幸之助塾主(以下塾主とする)である。塾主は松下電器が販売した家電は自分の娘であるとし、販売した後も定期的に様子をうかがったという。このことを通して愛情を込めると共に、自分が生産して販売した商品に責任を持って、経営にあたっていた。このことを踏まえると、野菜に愛情を込めることも同様に商品に責任を負うことを意味するのではないだろうか。ただ何となく野菜を育てていると単なる商品に過ぎないが、愛情を込め自分の責任を意識して野菜を育てた場合、その野菜が消費者にわたって消費される場面にまで想いが至る。そうすると、少しでも丁寧な作業を心がけようと気にしたり、同じ作業でも他によりよい方法はないかと模索するような態度が生まれてくる。仮にその気持ちや行為が少しでも野菜の味や品質に影響を与えているのであるとすれば、良い野菜ができて、次の購買につながるかもしれない。実習中には野菜の販売価格や販売量、人件費についても様々な方から考えを聞かせていただき、農業をする上では、まず野菜が売れることが大切だと実感させられた。そのことを念頭に置くと、野菜に愛情を込めることは、野菜を生産して販売し、農業や経営を続けていくうえで大切な要素の一つだと感じた。
実習中はパソナ、パソナ農援隊の企業理念の下に、農業を通して社会に貢献している皆さんと共に農業に携わることで、日々の業務への向き合い方や、野菜に対する想いについて、たくさんのことを学ばせていただきました。心から感謝申し上げます。ありがとうございました。
[1] パソナグループ企業理念
https://www.pasonagroup.co.jp/company/philosophy.html
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Hiroki Deguchi
第43期生
でぐち・ひろき
Mission
家族を支える地域社会の実現