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地方再生とエコ立国日本の実現~魚と水、人と自然との繋がりから

地方再生とエコ立国日本の実現~魚と水、人と自然との繋がりから

皆さん、最近、疲れていませんか?地域社会、地方自治体、国、地球環境、何だか疲労の色がみえませんか。今後も、カネと利便性を「もっと、もっと」と追及し続けられますか?人はどうすれば、幸せになれるのか。幸せを感じられるのか。“魚の繁栄によって、人類の繁栄、平和、幸福を”なんて考えています。
 
 
 日本全国で目にしてきた、疲弊する多くの地方の姿。地球の医者を目指して、民間の技術者として取り組んでいく中で体験した社会の矛盾。生じた数々の疑問と憤りから、「この国ばどぎゃんかせんといかん」との想いで入塾し、早2年2ヶ月が過ぎました。
 
 塾で過ごす中、根源的な問題に取り組む必要を感じ、持続可能な社会の実現、人類が繁栄を続けるためには何が大事かを、自分なりの視点で探求してきました。現段階での答えは、ごく単純ですが、「健全な水の循環と、そこに息衝く人の営みを重ねていくこと」です。
 
 人間は、自然の恩恵が無くては、生きていけません。自然も、人間の無茶な活動の上には存続できません。そして、それぞれの基盤として、共通するのは水ではないでしょうか。それぞれが生きられる水が存在するためには、森川里海の繋がり、良好な水の循環を保っていくことが必要です。食べるという人が生きる根源を支えている農林水産業は、水なくしては成り立ちません。また、自然と調和した持続可能な形での農林水産業は、健全な水の循環を保つことにも繋がっていました。水の循環のサイクルの中で、人は自然と繋がって生きてきたと言えるのではないでしょうか。
 
 水や食料をはじめ、自然からの有限な恵み、限りあるものを脈々と繰り返し得続けてきたのが日本人の営みです。それは、人が自然と対立したり、自然を一方的に支配したりという考え方ではなく、自然と一体の存在、生態系のいち構成員として、その営みを存続させてきたものです。
 そして、その中には、長い歳月をかけて、かたちづくられてきた伝統的な文化や精神、知恵といったものがあります。水田や里山、里川、里海というものは、人が自然に手を入れながらも、自然と調和した環境を維持し、自然の恩恵を受け続けて来た場です。そこには、常に良好な水の循環が保たれていました。見えないものとの繋がりを感じながら、自然そのもの、あるいはそこに存在する神様に祈りと感謝を捧げ、厳しい自然環境の中に楽しみを見出して、謙虚に生きてきたのが日本人ではないでしょうか。
 今一度、こういった我々日本人の継続してきた営みの根底にあるものを見直す必要があると私は考えます。この受け継がれてきたもの中にこそ、人類の英知、大衆知といえるものがあり、その根源を辿れば、自ずと人類共通の基盤がみえてくると思うのです。
 
 このような考えから、良好な水の循環を維持する森川里海づくり、地域の人々の営みの中で、脈々と受け継がれてきた知恵や伝統的な文化・精神を受け継ぐ人づくりに取り組んでいきたいと考えています。つまり、健全な水の循環を保つシステムを組織やシステムを考えるのではなく、それを担う考え方や価値観を社会に浸透させていくということです。
 里山はじめ、自然に手を入れることで、人は自然と共存してこられた部分があります。しかし、近代では手を入れ過ぎた。それも人間以外も含めた共有の場としてではなく、人間の生活のため、さらには個人のカネやモノ、利便性という利己的欲求のみを追求して、手を入れてきた。全てはカネで代替可能なものとして、消費してきた。私の考える良好な水の循環を維持する取り組みは、こういった人間が余りにも利己的になり過ぎた資本主義社会への手入れという面を担いたいとも考えています。目に見えるお金や利便性、効率性といったもの以外への価値に再び気付くこと、これが手入れ作業の始まりであると考えます。
 そして、その取り組みを通じ、その地域、国民、さらには世界の人類共有の基盤あるいは根として、多様な人々が共有できる価値づくりにまで発展させていきたいと思っています。
 
 ただし、「良好な水の循環」と言われても、なかなか自然と切り離された普段の生活で感じるもの難しいでしょう。
 
 そこで、縄文文化からの日本の伝統性、現代社会における世界的な需要性、様々な接点から享受され易さなど鑑みて、「魚」を指標、軸にして取組みを展開していこうと計画を立てています。
 川や湖沼、海を見ていても、水の汚れくらいは感じられるかもしれませんが、なかなか水の循環が良好かは判断し難いと思います。ただ、多種多様な魚が泳いでいたり、減ったと言われる種類の魚が多くいたりすれば、魚を通じて、それを感じ取ることは可能ではないでしょうか。目にした魚の裏側に、水の循環の良好さや人の自然や見えない繋がりを大事にする心が感じられるのではないでしょうか。また、天然の魚を食べた時、味や臭い、脂ののり具合から、その魚の生息環境を窺い知ることもできるでしょう。
 このように、魚を通じて、自然との繋がりや世界との繋がりを感じることは、「食」をはじめ、川辺の散歩、水族館やダイビングを通じて「見る」、学校や家で「飼う」、趣味として「釣る・捕る」、季節の情報などを「知る・読む」など、機会はまだ多くあると考えます。
 
 と、大義名分を述べましたが、理屈ではなく、今まで私を心身ともに育ててくれた魚への愛情、魚を通じた人生における何にもかえ難い経験、直感から来るものが大きいです。
 
 持続可能な社会、共存共栄の世界へ向け、「健全な水の循環と、そこに息衝く人の営みを重ねていくための人づくり」と、「魚を軸として、世界において共感できる価値観をつくる」――ちょっとそんな大きなことも考えつつ、現在は、全国を周りながら、人と自然との繋がりある営み、現代においてそれを伝える先進的な取組みを学びながら、自らが行う川づくりや自然学習会の準備を進めている段階です。
 様々な地域をまわっていると、各地には素晴らしい資源があり、熱心な活動をされている方、面白いアイデアをお持ちの方がおられるのを感じます。その土地で、大事に残されてきた心や精神性も感じることができます。地方はもっと活かせる、元気になれると確信できます。日本の地方に残る知恵や思想が、世界を救うとまで感じることがあります。
 
 とはいえ、まずは小さな一歩から…
 子どもが手ごろに魚と遊べる川づくりを、魚介類の生息場の再生として、一つ一つ川に石を積むことから行っています。そこで魚を見たり、捕ったり、触ったり、食べたりする中で、何かを感じ、「持続的に自然と親しみ、楽しむ場」、「様々な背景を持つ人々の交流の場」にできないかとの挑戦です。
 
 まだまだ遠い道のり。是非、皆さんの身の回りのこれらに関係していそう、役立ちそうな情報、知恵などをお教えいただき、ご指導いただければ幸いです。また、あなたの地域の“推し魚”情報もお待ちしています。
 
※写真:地域の方々との意見交換
 この日は沖縄県東村で、農業や民泊、体験学習、伝統の遊び、パイン料理…etc.
 話は尽きなく、実際の体験や経験に基づく話には多くの学びが…

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塩根嗣理の活動報告

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Hidemasa Shione

塩根嗣理

第33期

塩根 嗣理

しおね・ひでまさ

百姓/地域&自然おこし団体 自然処 代表

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自然の恵みを生かした持続可能な社会づくり

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