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かけがえのないもの~価値を知り、生かし、繋ぐ好循環を生む

かけがえのないもの~価値を知り、生かし、繋ぐ好循環を生む かけがえのないもの~価値を知り、生かし、繋ぐ好循環を生む かけがえのないもの~価値を知り、生かし、繋ぐ好循環を生む

持続可能な社会づくりとして、各地域の自然に根差した生き方が必要であると考えます。各地域の自然やその中での営みが本当に「かけがえのないもの」として、価値が置かれる取組みを、様々な地域・人を訪ねながら模索しています。
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 持続可能な社会づくりにおいて、地球規模では環境問題が、国内では地方創生が大きな課題の一つとなっています。私は、地方の各々の自然に根差した営みを取り戻す、あるいは現代なりに創ることで、地方創生と環境問題が解決していけると考えています。そのためには、まず、自然や自然に根差した人間の営みを、本当に「かけがえのないもの」として、肌で感じることが欠かせません。
 
 「こんなものしかないけど」
 「いやいや、すごく贅沢です」
 田舎で食事を御馳走になっている時の、よくある光景です。
 食事に限らず、そこに住む人の当たり前、何でもないものが、外部の人にとっては、感動するくらいに価値のあるもの・ことである場合が多いと感じます。
 
 最近、地域おこしや体験学習会などを行ったり、参加させていただいたりして、改めて感じたことは、価値づくりとは、一方的に価値を知らしめることではないということです。
 
 地域おこしや体験学習会では、当然、人が交流します。異なる地域、様々な年齢、組織の人々が交流します。趣味や嗜好も様々です。その間で、実に本当にさまざまなもの・ことについての話がなされます。そして、様々な気付きをお互いに得て、それを生かすアイデアも付け加えられていきます。さらに価値を知り得た人が、他の人に伝えたり、その場に誘ったりします。結果、また新たな気付きやアイデアが浮かび、さらに次の人に伝わり……まさに価値の共有、創造の連鎖です。
 
 只見町での地域の魅力を再発見するツアーに参加させていただいた時の、田の手植えでは、東京などから参加の方はもちろん、地元の方も「はじめて」「三十年ぶり」との声が上がりました。道行く人も珍しそうに眺め、飛び入りで参加します。休憩時間には、同じ泥の中で共有した体験に、話が弾みます。世代、地域、職種、農業経験などを超えて、次のアイデアやこういう人も連れて来よう、只見でこう、東京でこう展開などのアイデアが広がります。
 笹巻きづくりでは、各家庭の小技の交換が始まります。笹一つを洗ってから保存し、また使うまでの最適な業がその場で築かれ、伝承されていきます。その知恵に他地域からの参加者、若い世代の参加者は感心し放しながらも、自らも作ってみようという気になります。そして、笹巻きが食べられていた背景や笹採りの話から、地域の伝統的な営みや自然に関心も及んでいきます。そして、よそ者、若者なりに、笹巻きを売る方法から、笹がこれにも使えないか、笹のある自然を守るにはなどのアイデアや意見がでてきます。
 群馬県神流町での田舎暮らし体験塾では、ワラビの茹で方一つにも、自然の中で生きる知恵、自然の恵みを引き出す業を感じます。その田舎の暮らしに魅せられて、毎年、人が集います。集った人がそこでの感動した体験とおいしい土産とともに、その魅力を伝え、少しずつですが、遠く離れた地でも神流町の自然や田舎暮らしが広められていきます。そこに価値を感じた人たちがまた集まってきます。人が集まれば、自然と自らの楽しみとして、この場の生かし方や次の会でのアイデア出しなどが始まります。
 
 このような流れで、価値を知り、生かす好循環が生まれています。
 外との交流によって、地域の輝きをみるのは、まさに本来の「観光(=観国之光;国(地域)のすぐれたものを心こめて観る/誇りをもって観せること」の実践です。
 そして、この価値を知り生かす好循環が「かけがえのないもの」を、多くの人に届けているように感じます。
 
 その源流は、各地域の自然にあるはずです。各地域には、まだまだ地元の人しか知り得ないもの・ことが、そっとそのままということも多々です。もちろん、地域や小さな組織でのみ大事に繋いでいかなければならないもの・こともあると思いますが、そのもの・ことを共有してこそ、生まれる新たな価値もあります。価値が共有されるからこそ、そのもの・ことを大事に繋いでいく動きも生まれます。
 
 私は、自らが親しんできた「水」「魚」をその源流としながら、「かけがえのないもの」を肌で感じられる場を、まずは集える人で共有し、共に育てています。
 ウナギの資源が減少して、今は食べられないからと、ウナギのすみ家づくりを行っていると、参加者の目は他の生き物や、川以外にも向けられます。ウナギの生態の話になると、遠く海外の海まで話に入るので、自然や地域の繋がりについても話が及びます。また、自然学習会では、今までは、私の価値観で、“雑魚”として扱っていた魚が、子供たちから、すごく価値のあるものとして教えられることもあります。日常の生活でも、私が釣った川魚は食べなかった甥や姪が、自分で釣ったカワムツやニゴイは食べておいしいと言います。漠然と「釣りにいきたい」から、「どこどこに何を釣りにいきたい」とまで言うようになってきます。自らが触れたものに、小さい子なりの価値を見出しているように感じます。
 今日もどこかで自然と人と交流しながら、様々なもの・ことの価値を知り、生かし、繋いでいく活動を展開中です。「かけがえのないもの」を多くの人と共有して、持続可能な社会づくりに繋げていきたいです。

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塩根嗣理の活動報告

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Hidemasa Shione

塩根嗣理

第33期

塩根 嗣理

しおね・ひでまさ

百姓/地域&自然おこし団体 自然処 代表

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自然の恵みを生かした持続可能な社会づくり

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