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特定非営利活動法人Mネット様にて、個人が望む働き方を実現するためのチームの役割について講演を行った。本稿では講演の内容に加え、講演から私が得た学びや今後の展望について綴らせて頂く。
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1.「信頼から変える私たちの働き方」講演目的
組織における働き方や日々の運営などの改善に取り組むにあたり、下記二点の目的を設定した。
・良い職場や望ましい働き方はそこで働く自分たちがつくるという自覚を持つ
・理想的なチームや職場の雰囲気、働き方について理解を深める
2.日本の働き方改革の現状と問題点
講演ではまず、現在日本で取り組まれている働き方改革の現状とその問題点についてお話させて頂いた。人口減少への対応を課題として経済的観点から働き方改革を政府は推進している一方、企業は世界の市場で勝ち抜いていくための競争力や、AI時代に人間に求められる創造力の向上を働き方改革の目的としている。
では、私たち働く個人が働き方改革に望むものとは何だろうか。政府や企業と異なり、私たちは働き方改革に日々楽しく働くことや、健康に働き続けること、家族を幸せにすること、理想のキャリアを歩むことなどを求めているのではないだろうか。これらの目的達成のために、働く個人は残業時間の減少や賃金の上昇を求めていると考える。つまり、働き方改革において政府や企業が目指すゴールと私たち個人の期待にはギャップがあると言えるが、三者の働き方改革への目的と期待を統合するのが日本の労働生産性の向上だと私は考える。
3.「信頼できるチーム」の必要性
労働生産性の向上を実現し、個人や企業が望む働き方を実現するために必要になるのが「信頼できるチーム」だと私は考える。これまでの調査によれば、信頼できるチームの特徴は大きく二点挙げられる。一点目は、チームとして達成すべき目標と、それに基づく個人の責任が明確に設定されていることだ。そして二点目の信頼できるチームの特徴は、高い心理的安全性である。エイミー・エドモンドソンによる研究や、Googleによるプロジェクト・アリストテレスによって明らかになった心理的安全性は、チームメンバーがお互いの前で、リスクを取ることと弱みを見せることを安全だと感じる状態、と定義される。このような特徴を持つ信頼できるチームで働くことによって、個人は自身が望む働き方をお互いに伝え合い、チームとしての成果を犠牲にすることなくいかにそれを実現するかを話し合う土壌が生み出されると考えられる。そしてその結果として生産性の向上がもたらされるのではないだろうか。
日本における働き方改革は信頼できるチームをつくり、機能させることによって、政府も企業も私たち働く個人も満足する結果を得られるのだと確信している。
4.講演を終えて
会場の方々とのやり取りの中で、働き方改革の本質について気付かせてもらったのは私だったように思う。私が話した日本の働き方改革の背景や問題点は特別新しくもなく、その会場にいた方々にとって納得できることばかりであった。チームや職場に課題があるとはみんながわかっている。では、なぜ変わらないのか?変えられないのか?こそ誰もが疑問に思っていることであり、解決策を求めていることだと私は感じた。「課題の解決が別の問題を生み出しそう」や、「課題の解決策がそもそも見つからない」といった気持ちが、一つのチームや職場を越え日本全体にこのような閉塞的な状況を作り出しているのかもしれない。働き方の課題は解決できるし、私たちが望む働き方は実現できると前向きに信じながらも、冷静に現実の課題を捉えて解決に向かって誰もが努力することが働き方改革実現への一歩ではないだろうか。
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Hiromu Ohisa
第36期
おおひさ・ひろむ
株式会社PHP研究所 国家経営研究本部 政策シンクタンクPHP総研
研究コーディネーター