Activity Archives
「働き方改革」をビジネスに繋げる現場を知ること、また中小企業における「働き方改革」の取り組みに関わることを目的として京都の中小企業にてインターンを行っている。本稿ではそのインターンで私が感じたことや得た学びについて綴らせて頂く。
——————————————————————————
1.「働き方改革」をビジネスに繋げる難しさ
現場でまず感じたことは、「働き方改革」をビジネスに繋げることの難しさだ。私が伺っている企業は文具の卸売りから事業を始め、現在はオフィスの設計・デザインから、それに合わせたオフィス家具の調達などを行っている。働く人の生産性や創造性などの競争力を高めることを目的として、オフィスリニューアル、ひいては働き方改革に関する企業の意識は高まる一方であり、その熱はインターン先の企業でも強く感じた。しかし、生産性向上や働き方改革を目的としたオフィスリニューアルの効果を、ビジネスの現場で求められる具体的な数値で伝えることは難しい。働く人の動線を分析し、オフィスに関するアンケート結果を反映して造られた新しく開放的なオフィスで働くことは、生産性や創造性の向上やコミュニケーションの活性化に効果がありそうと感覚的には思えたとしても、定量的な効果は未知数のまま残る。そのためか、興味がある顧客は多いが、ビジネスとしての取引に結び付く案件はまだ少ないという話を度々耳にすることがあった。
現場で感じたビジネスの難しさは私に根本的な問いを投げかけてくれた。働き方改革とは何のために行うのだろうか。個人の幸せや企業の競争力のため、もしくはより良い社会のためとも言えるかもしれない。何より、働くことには重要な要素が二点あるとも気付かされた。企業活動と密接に結び付いている生産性と、個人の幸せに強く影響する働きがいの二点であり、両方を向上させることが働き方改革だと私は考え至った。しかし、生産性と働きがいという定量的には測りにくく、定性的には個人に依る部分が大きい、働き方改革が生み出す目に見えない価値をビジネスに繋げることの難しさを私は現場で強く感じた。
2.「働き方改革」を中小企業で行う難しさ
伺っている中小企業で長く日々一緒に過ごさせて頂く中で感じたことは、働き方を変える取り組みは多様であると同時に、本質的な目的を達成することの難しさだ。朝会や会議の運営方法や業務の割振りの見直し、社内システムの改善など、働くことに関わる点を変えることは全て働き方改革に含まれると言える。しかし、このような多様な取り組みを継続し、一つの働き方改革として一貫した目的を達成することは困難を極めると現場で感じた。なぜなら、そもそも全社的な働き方改革のビジョンや目的が共有されていなかったり、担当者が不在だったりするために部分最適の枠を超えられないからだ。結果として、様々な改善活動に日々取り組んでいるにも関わらず、本質的な目的を達成することのない働き方改革の形骸化が多く起こり得る。このような現場での課題を今回のインターンを通して私は理解することができた。
Activity Archives
Hiromu Ohisa
第36期
おおひさ・ひろむ
株式会社PHP研究所 国家経営研究本部 政策シンクタンクPHP総研
研究コーディネーター