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実践活動報告(2) 自治体財政シミュレーションゲーム「SIM信州2030」開催

実践活動報告(2) 自治体財政シミュレーションゲーム「SIM信州2030」開催 実践活動報告(2) 自治体財政シミュレーションゲーム「SIM信州2030」開催 実践活動報告(2) 自治体財政シミュレーションゲーム「SIM信州2030」開催

実践活動3年目の活動として、県民にとって楽しく自治体財政を学べる自治体財政シミュレーションゲーム「SIM2030」を開催している。
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「SIM2030」とは
 
 実践活動3年目として、県民に自治体財政運営をリアルに体験してもらいたいと思い、自治体財政シミュレーションゲーム「SIM2030」の長野県バージョンを今年の8月から開催している。「SIM2030」とは、社会保障費の増大と税収減に直面する仮想の自治体を舞台に、5人1組で新規・既存事業の取捨選択を制限時間内に判断する「財政シミュレーションゲーム(対話型ワークショップ)」であり、熊本県庁の有志の職員のグループが開発した。現在は福岡や千葉、石川をはじめ全国各地でご当地版が作成され、今、静かなブームになっている。「SIM2030」は、2030年という13年後の長期的なまちの展望を考えることはもちろんのこと、人口減少・少子高齢化による財政のひっ迫をリアルに体験できることが特徴的である。また自治体職員だけでなく、若者や県民が参加することによって、自治体財政運営を「自分事化」して考えられる点も「SIM2030」の魅力である。このような特徴を生かすことができれば、人口減少しても県民が幸せに暮らせるまちを自ら作っていけると思い、県内の市町村で小学生・大学生・自治体職員向けに「SIM信州2030」を開催している。
 
「SIM2030」を行うきっかけ
 
 この取り組みをはじめようと思ったのは、私の生まれ育った長野市の市政運営に問題意識を持ったことがきっかけであった。長野市は県都として発展し、1998年には長野オリンピックが開催された。また7年に1度善光寺の御開帳が行われ、全国から訪れる観光客のおもてなしに力を入れている。長野市では公共投資に力を入れており、近年では1,800億円かけて庁舎建て替えや芸術会館建設など10大プロジェクトを行ってきた。
 しかし、これらの取り組みは一過性のものであると私は考える。長野市でも、人口減少が進んでおり、2005年から2015年の10年間で15,000人減少しており、歯止めがかかっていない。公共施設の延べ床面積は、全国平均を大きく上回っており、人口同規模クラスの中核市の中では、最も公共施設が多い都市でもある。10大プロジェクトを行ったことにより、市債残高も増加している。人口減少が進む中で、従来通りの地方財政運営でいいのであろうか。また第五次長野市総合計画のアンケート集計結果によると、市民の意見が市政に反映していると感じている割合が19.2%と非常に低くなっており、市民の意見をより市政に反映できるしくみをつくりたいと考えていた。その中、地方財政を知るきっかけとして、関心をもったものが「SIM2030」であった。
 
県内で開催してみて思ったこと
 
 現在私は「SIM2030」を長野県版・長野市版・塩尻市版・信濃町版・小布施町版といったように、県内の市町村版にアレンジをかけて実施している。対象者も多岐にわたっており参加者の層によっての考え方の違いから学びを得ることがあった。特にその違いが出たのは、長野県版を公務員向けに行った回と、信州大学1年生を対象に行った回の比較である。公務員向けに行った際に、最も削減しにくい事業が「橋梁補修事業」であった。それに対して信州大学学生は、最も削減しにくい事業として「橋梁補修事業」を選んだ学生は1人もおらず、「中小企業支援」を選ぶ学生は多かった。大学生の政策ニーズが分かったことに加え、橋梁補修事業の重要性が学生には伝わっていなかった。公共施設やインフラメンテナンスの重要性が増す中、県民へのさらなる周知・広報の必要性を感じた。
 また学生向けに行ったことにより、「高齢者のための社会保障費がこんなにもかさばることが苦痛なんだと実感した。そりゃあ、投票しない若者向けの事業が削られるわけだと妙に納得した」「今まで国や県の政策や方針を批判的な目で見ることも多かったが、それも何かを犠牲にしなければならない苦渋の決断だったことを身にしみて感じました」といった感想が寄せられた。詰込みの教育ではなく、実社会を知り、自ら考えて行動する若者を育てるという意味においても、「SIM2030」の効果があると感じている。今後は、大学生だけではなく、高校生向けにも行い、主権者意識の醸成も図ってきたい。さらにSIMをより実用化し、県民が政策判断能力を身に着けられるような市民講座を開催していきたい。

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Tatsuya Kobayashi

小林達矢

第36期

小林 達矢

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NPO法人シナノソイル理事

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